2005年6月 7日

テレビCMは広告手法の王道の座を奪われることになるのか?

テレビCMの価値が奈落の底--ネットとHDDレコーダーで加速 - CNET Japanを読んで。

 先週野村総研が公表した「企業の広告・宣伝手法は、マスメディアから個別対応のITメディアへ」という調査レポートが話題を呼んでいるようですね。

 何しろ、HDDレコーダーの利用者のほとんどがCMスキップをしていることから「2005年のテレビCM市場の約2.6%、金額にして約540億円の価値が失われると試算した」そうで、すでに540億円の損失という部分が一人歩きし始めた感もあります。

 さらに野村総研は、つづいて「デジタル機器と家庭内LANの普及がコンテンツ流通産業の業態を変える」というレポートを立て続けに発表する力の入れようで、何かのキャンペーンが始まったかのような印象もあります。

 
 ただ、個人的には、はたしてCNETの記事のタイトルにあるような、テレビCMの価値が「奈落の底」に下がってくるのかという点については、どうも実感がありません。

 もちろん、これだけネットの利用時間が増えてくれば、ネットの広告媒体に利用者が触れる機会も増えるわけですから、相対的にネット広告の価値が上がるのは分かります。
 媒体としての接触時間が減っているラジオ広告市場がネット広告に抜かれたように、現在最強を誇っているテレビCMの割合が相対的に下がってくるという事態は当然あるでしょう。 

 自分も実際にHDDレコーダーを購入してから、録画した番組についてはほとんどCMをスキップするようになりました。
 おそらくHDDレコーダーが更に普及すれば、スポットCMの効果が下がってくるのは間違いありません。
 現在のスポットCMの料金水準がそれによって是正されるぐらいのことは今後起こってくると思います。
 

 ただ、テレビ番組の視聴行動には、録画してまで見たいというものだけでなく、その放送にたまたまめぐり合ったから見た、というのも継続的に存続するはずです。
 効率は悪くなったとはいうものの、広告代理店のかたがたは相変わらずテレビCMに対してかなり強気のようですし、ネット企業の中からもテレビCMは使い方によっては非常に効果が高いという声が聞かれます。

 HDDレコーダーでCMを飛ばせるとはいえ、これまでもそういう視聴者はCM中にチャンネルザッピングを繰り返していたような気もしますし、消費者金融のように大量のスポットCMを投下し続ける企業がいる限り、それほどスポットCMの価値が下がってくるような感じもしないのは私だけでしょうか。
 まぁ、こういう風に思ってしまう時点で、すでに感覚が古い時代の人間なのかもしれませんが・・・・


※ ちなみに、現在のスポットCMに依存しているマス広告手法が、さまざまな手法に分散するだろうという点については、個人的にも議論の余地は無いだろうと思ってます。
 その点についてはAd Innovatorの織田さん広告主協会のセミナーでプレゼンされた資料が非常に参考になります。(PDFへの直リンクはこちら

2005年6月 2日

ゲームを「勉強のため」と胸を張ってやれるようになる?

ITmedia Games:ボクらは「桃鉄」で日本地理を、「信長の野望」や「三国志」で歴史を学んだ (1/2)を読んで。

 「エンターテインメント以外の目的で作られたゲーム」を「シリアスゲーム」と呼ぶそうです。

 なんでも東京大学の研究テーマにもなっているようで、記事に出ている馬場さんは「プラスの側面や利用の仕方、娯楽以外の効果があるということを、はっきりと科学的に証明することが必要」と発言されてます。

 実は個人的には、ずっとゲームの教育分野への活用(たしかエンターテイメントとエデュケーションでエデュテイメントという造語があったと思います。)の可能性はずっとテーマとして持ってましたが、こういう研究を権威のある方がやっているのは変に興味深いものがあります。


 馬場さんがインタビュー中に主張しているゲームの効果は4つ。

■「モチベーションを作る」効果

■「知識が増える」効果

■「歴史に対する認識を深める」効果

■「人間の行動様式に対する」効果

 まぁ、自分が「超」がつくほどのゲーマーだったので、どうしてもこうやって書くと自分がゲームをやっていたことの擁護論みたいになってしまうんですが、「楽しみながら学ぶ」という基本的な要素の効果は明白ですよね。

 例えば、三国志にはまったことのある人なら、どこの国に誰がいただのやれ関羽の武力は98だの、普通の人にはどうでもいいデータが頭に残っているはずです。
 世界史の登場人物や都市の名前がカタカナで覚えられないという人は多くても、案外その人はドラクエのキャラの名前や街の名前(まぁ想定しやすいのもあるんですが)を細かく覚えていたりします。
 
 実際、海外産のゲームには教育的な要素の強いゲームも結構あり、MBAの基礎が分かるというLAUNCHとか、金持ち父さんの基礎が分かるキャッシュフローゲームとかが、結構売れてると聞いてます。
 
 でも、そう考えると確かに日本では教育要素を売りにしたゲームって少ないし、あまり売れたという話は聞きませんよね。
 実際、「教育ゲームは面白くない」というイメージがあるのも事実で、あんまり売れて儲かったという話も聞かないので、ゲームメーカーも事業として取り組んでもうまみが少ないというが大きいのかもしれません。


 ただ、ゲーム≒子供に悪影響みたいな図式になっちゃうと、ゲーム産業自体に良い影響は無いと思うので、この分野はもう少し力が入れられても良いように思います。

 まぁ、そうはいっても教育効果の高いゲームもはまりすぎると悪影響があるとは思いますし、子供が「これは勉強のためだ!」とか親に主張しても説得力ないでしょうけどね・・・
(実際、英語の勉強のためと自分に言い訳して、海外のオンラインゲームをはじめたら、はまって廃人になりかけた経験があったり。)

2005年6月 1日

テクノラティジャパンのトップ100で、自分の偏りを知る

テクノラティジャパン、ブログ検索サービスのベータ版をオープン - CNET Japanを読んで。

 テクノラティジャパンがいよいよオープンされましたね。
 
 まぁ3月にはアルファ版が公開されていて、今回ベータ版とのことなので、規定路線ということなのでしょうけど、今ブログを書いている人の間で話題になっているニュースや本が分かるトップニュースやトップブックスなど、面白い機能が公開されてます。

 誤解を恐れずに例えると、トップニュースはGoogleニュースとかはてなブックマークの注目ブックマークをブログ記事で作った感じで、トップブックスはAmazonのランキングと書評をブログ記事で作った感じでしょうか。
 本当にテクノラティが面白いのは、このリストだけでなく、ランク外のニュースや本に関しても、リンクしているブログ記事を簡単に検索できるところですね。


 ちなみに、個人的に一番興味深かったのは、最も多くのブログからリンクされている影響力の強いブログの上位100件を表示している「トップ100」という機能。

 ブログのランキングとしては、最近、個人的にはfeed meterが定番になっている感じがありますが、このfeed meterは(たぶん)RSSフィードの数を中心にした読者数ベースのランキング。

 それに対してテクノラティのトップ100は、シンプルにブログからリンクされている数をベースにしたランキングですから、ブログ界での話題度ベースのランキングといえばいいでしょうか。
 
 二つのランキングをぼんやり比較していて思ったんですが。
 やっぱり、結構違うもんですね。


 feed meterのように、RSSフィードをベースとすると、RSSリーダーの利用者の属性に引っ張られるので、自然とテクノロジーに先進的な人たちのランキングという側面が強くなると思います。
(当然、私のような人間にとっては非常に意味のあるランキングになるわけですが。)

 それに対してテクノラティジャパンのトップ100は、おそらくはもう少し普通の人によるランキング。
 もちろんブログを書いている人から、リンクをされているランキングなので、一般人からするとテクノロジーなのはあるでしょうし、リンクを誘発するのが上手いという点で、かなり意味も異なるとは思いますが、やっぱり相当面子の入れ替わりは激しいですね。
 
 正直、知らないブログが多くて、自分が知っているブログが、かなり偏っていたことを改めて認識した次第です。
(もちろん、偏っていることがが良いとか悪いとかでは無いんですが)


 そういえば、ちょうど先日ブログランキングドットネットというユニークユーザーベースのランキングサイトも教えてもらいましたが、これは完全に閲覧数ベースのランキングですから、さらに普通の人がよく読んでいるランキングということになるでしょうか?
(まぁ、これもスクリプトをブログに貼り付けなければいけないので、まだまだ面倒なんですが) 

 なんにしても、こうやっていろんなランキングサイトができてくると、いろんな角度でブログの位置づけや自分の立ち位置が確認できて面白いですね。

2005年5月31日

ブログ関連ビジネスの何がブームで終わりそうなのか

先週開催されたBlog Hackers Conference 2005に参加してきました。

正直なところ、Hackとは縁遠いところにいる自分なのですが、おそろしく刺激になるイベントでした。
なんといっても、プレゼンターの皆さんがすごい。
モダシンさんも書かれてますが、皆さんプレゼンの技術すごすぎます。

ちなみに、当日の詳細は、たつをのChange Logで丁寧にまとめられているのでそちらをご覧いただくとして。
個人的に印象に残ったのは、はてなの伊藤直也さんのプレゼンのタイトルが「ブログの終焉の終焉」だったこと。


直也さんがプレゼンされていたように、ブログがいまやプラットフォームとなりつつあり、ブログの終焉という議論にはあまり意味が無いことは、会場の熱気からも伝わってくるというものですが。
伊藤さんがここで終焉の終焉をアピールするほど、ブログの終焉ネタは盛り上がっていたんだなぁと改めて思ってしまいました。

R30さんの「ブログブームの終わり」のときにも思いましたが、この手のタイトルは、やはりある種の「強さ」とか「刺激」を持っているんでしょうね。
さぞかし書いたガ島通信さんも驚いていることでしょう。


個人的には哲学論は苦手なので、ビジネスの面から何がブログ「ブーム」だったのかちょっと考えてみました。

【ISPやポータル事業者の場合】
■とりあえずブログサービスを始めればサービスの利用者が増える?
 競争の差別化要因にすべく、多くのISPとかポータルがこぞってブログサービスを始めましたが、なんとなくあって当たり前のサービスになってしまったような感じがします。
 あまり意味の無い容量勝負とかになってますが、はたして中堅以下のブログサービス事業者は今後どうするんでしょう・・・?


【芸能プロダクションの場合】
■とりあえず芸能人がブログを始めると話題を呼ぶ?
 まぁ、スマップとかがブログを始めれば、またまったく別の話になるんですが、普通の芸能人がブログを始めればそれだけで話題を呼ぶというのはもうそろそろ終わりですよね。
 もちろん、ファンとのコミュニケーションのために、多くの芸能人がブログを上手く活用する時代にはなってくると思いますが、ブログサービス事業者がお金を払って書いてもらうというのは減っていきそうな気もします。


【出版会社の場合】
■とりあえずブログを本にすれば売れる?
 もちろん、これからもブログの書き手が出版のチャンスを得るというサイクルは増えてくると思いますが。
 とりあえずブログをそのまま本にして出せば話題を呼んで売れるという時期は終わりつつある気がします。


【ブログで金儲けの場合】
■とりあえずブログを始めてアフィリエイトをやれば儲かる?
 ブログならSEOも強いし、アフィリエイトや広告を上手く組み合わせれば結構儲かる、というのもこれだけブログが増えた今となっては難しい気がします。
 もちろん、プランをたてて本格的にやれば今でも儲かる道はあると思いますが、かなりプロの世界になっている印象があります。


【ブログでメディア進出の場合】
■とりあえずブログを書いていたら、自然と有名になり既存メディアに進出できる?
 2年ぐらい前であれば、毎日ブログを書いていれば、おそらくブログコミュニティでそれなりに認識されたんだと思いますが。
(この辺の経緯についてはcatfrogさんのところが面白い考察を展開されています)
 これだけブログの書き手が増えてくると、先行している人に追いつくのは相当難しいように思いますし、そうなると自然とメディアの人の目につくのも難しくなるような気がします。 
 もちろん、出版と同じで、ブログの書き手が既存メディアで書くチャンスが増えるという流れは変わらないと思いますが、今後は相当敷居が高くなりそうな感じもあります。


 なんだか思いつくままに適当に並べてしまいましたが、こうやって書いてみると、ブログで儲かる会社っていうと、あそことあそことあそこぐらいなのか・・・とか思えてきてしまいますが。
 どうなんでしょう?

2005年5月27日

ぼったくろうとしないのがSkypeの強みなのだろうか

堀江社長がSkypeをアピール「みんな携帯電話会社にぼったくられている」を読んで。

 先週のビジネスショウのセミナーで、堀江さんがSkypeを活用した携帯電話事業についてコメントしていたようですね。

 最もインパクトがあるのは、やはり記事のタイトルにもなっているこの部分
「携帯電話利用者はみんなぼったくられている。経営不振といわれるボーダフォンでさえ実はものすごいもうかっている。だからソフトバンクの孫社長は総務省とけんかをしてまで参入したがっている」
携帯の利用者がぼったくられていると感じているかどうかは別として、そもそもSkypeは基本的には無料で利用できますから、利用者からすると「ぼったくろう」としていないのは確か。比較論としてはこう言えるかもしれませんね。
 
 実際、Skypeのパートナーの人に言わせると、「Skypeはもっと儲けようと思えば儲けられるのに、どうも金儲けするつもりが無いみたいで困る」と言われるぐらい。
 普通にビジネスをやっている人たちからすると、ヨーロッパのオタク集団がいまだにノリでやっているような印象を受けるようです。

 ここで、個人的にひっかかるのが、果たして「ぼったくろうとしない」ビジネスは強いのか弱いのか。

 例えば、トーンの比較として面白いのが、日経コミュニケーションズの「Skypeには無料ソフトの限界も感じる」と言う記事。
ただし不満もある。Skypeからは何も収入を得られない点だ。当社がSkypeの宣伝に費用をかけているにもかかわらず,Skypeの開発会社であるスカイプ・テクノロジーズからは直接の利益は獲得できない。これはSkypeが無料のビジネスモデルであることに起因しているためで,結局我々は周辺機器やプリペイドカードの販売で稼ぐしかない。

 実際、Skypeが利用者から得る収入自体が、しょせんSkypeOut等の相互接続料収入のあがりと、Voicemailのような有料サービスだけ。周りの事業者がいくらSkypeから分け前が欲しいと思ったところで、無い袖は振れないという言い方もできるでしょう。

 それに対して、ぼったくっているかどうかは別にして、携帯電話事業者のように儲かっている事業者は、その収益を設備投資だとか販売のインセンティブにすることで、パートナーとWin-Winの関係を築くことが比較的容易。
 確かに「無料ソフトの限界も感じる」と言われても分からないでもありません。


 もちろんSkypeの強みは、無料で魅力的なサービスを提供したところにあるわけで、それこそが、Skypeが急速に広がった理由なわけです。ただ先日発表した、「スカイプ、アフィリエイトプログラムを開始」の記事にもあるように最近はカスタマーサービスに対する投資などが課題になっているようで、アフィリエイトを使って収入拡大など、売上拡大に対する姿勢に変化が見られる気もします。

 これまでは、「あれだけのサービスを無料で提供して、どうやって儲けてるの?」と聞かれることの多かったSkypeですが、これからは徐々に普通の会社になるのでしょうか。

2005年5月19日

スラッシュドットに見る日本人の匿名コメント気質

 昨日、GLOCOMで開催されたスラッシュドットのセミナーに参加してきました。

 Slashdot本家を解説したRob Maldaさんとスラッシュドットジャパンの編集長であるOliver Bolzerさんのダブル講演。
 こんな機会はめったにないと期待して参加したのですが、期待を上回る刺激を受けることができました。

 なんといっても印象に残ったのは二人が実に楽しんでスラッシュドットを運営していると言うことだったのですが。
 もっとも驚いたのは米国のSlashdot本家と日本サイトの匿名コメント率のあまりの違いの大きさ。


 匿名でコメントする人の割合は、本家が20~30%なのに対して、日本の匿名率はなんと60~80%。
 日本のほうが多いとかそういうレベルの話ではなくって、多数派と少数派の割合がまったく逆なんですね。

 maoneko blogさんでも書かれていますが、その違いについてOliverさんは結構はっきりと残念なことだといってたのが印象的でした。
 
 Robさんはその状況に対して、「まだ開設して4年で、みんなアカウント登録するのを面倒がっているのではないか」とコメントしていましたが、Oliverさんはかなり日本の文化や普及時期の違いなんかを細かく指摘していて、個人的にはOliverさんに賛成。


 なんでも、そもそも匿名コメントはセンシティブな情報の提供者を守る為のものだったそうで、欧米では比較的それ以外の目的で匿名を使うと比較的恥ずかしい行為と認識されるそうですが。
 日本では逆に記名の人のほうが匿名の人に「売名行為」とか非難されやすいんだとか。
 そういわれると思い当たる節がいろいろあります。

 さらにOliverさん曰く「別にスラッシュドットにユーザー登録をしても「個」の識別ができるようになるだけで、実質的には匿名なのに。」

 そう、そういわれればそうなんですよね。
 まったく自分に関係ないニックネームでも取ってコメントすれば匿名なのに、それでも自分を特定されるリスクを嫌うのが日本的というところなのでしょうか。
 最近の個人情報保護法の流れを見ても、「個」が特定されるリスクに対する感覚が、やはり欧米と日本ではかなり違うような気がします。


 ちなみに、先日「ブログは実名で書くべきか、匿名で書くべきか」という記事を書きましたが、小林Scrap Bookさんから「ブログはコテハンで書くべきか、捨てハンで書くべきか」というトラックバックをもらって、自分の匿名の使い方が間違っていたことに気づきました。
あちこちを見るに、実名=本名/匿名=別名という定義とは限らないらしい。ペンネームでもハンドルネームでも、自分はこの名前で活動していくゼ、という看板として決まった名前を掲げていれば、「実名」の範疇と捉えていいようだ。
 
 そういえば匿名コメントの「匿名」と、いわゆる本名を出していないブログは違いますね。そっちはペンネームブログとかニックネームブログとでも呼ぶべきでしょうか。
 
 結局、ブログのように自分の場所を決めて書き続けるものの場合は、スラッシュドットと同様アカウントによってある程度は「個」が特定されますから、掲示板やコメント欄の匿名コメントとは本質的に違うんでしょうね。
 

 そういう意味では、ブログを書く人というのは本名・仮名・ニックネーム問わず、ある程度は個を特定されるリスクを取っているわけで、それに対してスラッシュドットや2ちゃんねるのような掲示板で完全匿名でコメントしているのとは立ち位置がかなり違うようです。
 ちょうど、大西さんのブログで「匿名のマナー」というタイトルで匿名コメントを批判する趣旨の記事が書かれていて、コメント欄にもさまざまな意見が書かれていたのですが、このブログを書いている人とコメントがメインの人の立ち位置の違いが、この辺りの議論を複雑にしているような気がしてきました。

 別にどちらが正しいかというのケースバイケースの話だと思いますし、自分としても上手く結論が出せていないのですが。
 スラッシュドットの日米で、匿名コメント率がまったく逆の位置関係にあるという事実自体は、ブログを書く上でも理解しておいたほうが良いような気がします。

2005年5月18日

フルブラウザ搭載携帯は、サービス無料化への入り口?

フルブラウザ搭載FOMAが登場--NTTドコモ、901iSシリーズを発表 - CNET Japanを読んで。

 いよいよ、FOMAにもフルブラウザが標準搭載される時代がやってきましたね。
 電話にメール、デジカメにゲーム、音楽配信からテレビ電話までと、その適用範囲を急速に広げ続ける携帯電話ですが、もうここに至っては携帯「電話」と呼ぶよりは携帯「PC」と呼んだ方が正しいのかもしれません。

 ただ個人的には、フルブラウザ搭載が携帯電話業界にとって良いことなのかどうかは良く分かりません。


 日本の移動通信事業者は、世界的に見ても非常に強い権力を持っていると言われています。
 その権力の源泉の一つとなっているのが、プラットフォームとしての閉鎖性。
 
 例えば、ドコモのiモード利用を例にすると。

 携帯電話   メーカー(とはいえドコモ専用)
 通信インフラ もちろんドコモ
 ISP    これもドコモ
 ブラウザ   これまたドコモ
 ポータル   またまたドコモ
 サービス   やっと各事業者(とはいえドコモ専用)   
 
 という具合で、見事なまでに閉鎖的。
 顧客が携帯でサービスを利用しようと思ったら、ほとんど通信事業者であるドコモが握っているものを利用しないといけないというのが現状です。

 これが固定通信の場合には、例えばNTTを利用したとしても。

 端末(PC) 何でもOK
 通信インフラ NTT
 ISP    別に何でもOK
 ブラウザ   何でもOK
 ポータル   何でもOK
 サービス   何でもOK

 と、通信事業者は何の権力も持たないのが普通。
 改めて書いてみると、この差の大きさには驚きますね。

 
 ただ、これがフルブラウザが普通になってくると、携帯電話の閉鎖モデルにはブラウザから下に穴が開くはずです。

 これまで多くの利用者はサービス検索にドコモのポータルに頼るしかなかったのが、普通のPCで利用しているポータルを利用することができるようになります。
 さらに、月額数百円の利用料を課している携帯電話向けサービスサイトは、無料の通常のインターネットサイトとの競合を迫られることになるでしょう。

 例えばニュースサイトや地図検索、電車の時刻検索など、情報を有料で提供している場合は、よっぽど携帯電話向けの使い勝手で勝負しないと厳しくなるでしょうし、将来的には待ち受け画像、着メロ、ゲームなどの携帯専用コンテンツも、通常のインターネット上の無料の世界に引きずられる可能性は高いと想像されます。
 
 利用者がお金を払うのが当然だったモバイルサービスの世界も、これまでの利用者がお金を払わないのが当然のインターネットの世界と同化するのでしょうか?


 もちろん事業者は、そうならない道を模索するでしょう。
 実際、auにしてもドコモにしても、正規のフルブラウザでの利用においてはパケット定額制の適用をしていません。
 なんとか固定インターネットとの同化を避けようと言う意思は感じられます。

 ただ、リリースから4ヶ月で有料顧客1万人を集めたと言われるjigブラウザや、エキサイトとの提携を発表したScopeなど、ダウンロード型フルブラウザの場合には、実質パケット定額の範囲内で利用できてしまうのが現状。
 もちろん、まだフルブラウザとはいえ、PCなみの使い勝手には程遠いですし、わざわざブラウザをダウンロードして利用する人の割合と言うのはまだまだ低いでしょうが、もし利用者が携帯に標準搭載のフルブラウザで、フルブラウザのメリットを知ってしまうと・・・

 なんだか、有料サービス提供事業者にとって終わりの始まりのような気がしてしまうのは私だけでしょうか。
 

2005年5月17日

ブログは実名で書くべきか、匿名で書くべきか

[☆] ネットで公私を分ける需要を読んで。

 naoyaさんのはてなダイアリー経由で気がついたのですが、StarChartLogさんに、先日書いたブログ論にこんなコメントを頂いてしまいました。

そういう状況下で、まだブログをはじめてない皆さん、特に大企業の中の皆さん、是非ブログを始めてみてください。と言われてもね。「実は大企業の中の人だけど趣味でネット人格作ってブログやってます。会社の人などのリアル知り合いには教えてません」と言う人は多そうです。


 すいません。
 実は、その点については私も賛成です。

 書き方が悪かったんですが、大企業の中の方にブログを書いてくださいといっているのは、別に実名で書けと言っているわけではなく。
 当然、匿名ブログで始めるしかないだろうなぁと思ってます。
 (実際、自分がまだ最初の会社に勤めていたら、間違いなくブログに名前なんて出してないでしょうし)


 実名でブログを書いている自分が言うのも変な話ですが、正直なところ実名でブログを書いたところで、匿名ブログとメリットはそれほど変わらないような気がしています。

 たとえば、ブログを書くことによって得られるものを思いつくまま並べてみると、こんな感じでしょうか。

1・日々書くことで文章力が上達する(かもしれない)
2・書くことによって自分の思考を整理できる(かもしれない)
3・他のブロガーとディスカッションできる(かもしれない)
4・広告とかで若干のお金儲けができる(かもしれない)
5・他のブロガーと実際に会うことができる(かもしれない)
6・メディアでの執筆や本の出版のチャンスがもらえる(かもしれない)
7・本業に役立てることができる(かもしれない)

 前半の1~3は、どちらかというと自己啓発に近い位置づけなので、人によって差はあれど大抵の人は実現できるメリットでしょう。
 この部分は、実名ブログであろうが匿名ブログであろうが得られるメリットにほとんど差はありません。


 4のお金のあたりから、徐々にかなり努力しないと実現できないものになってはきます。
 ただ、これは別に実名ブログにしたって同じことで、匿名ブログでもがんばれば十分に実現可能。
 
 たとえば、匿名ブログでも他のブロガーと実際に交流するにはそれほど苦労しません
 イベントなんかで他のブロガーとであったとしても、ブログを通じてそれまでに交流があれば、実際に出会ったときには相手に自分の名前とブログを教えれば話が通じます。
 まったくの初対面よりはよっぽど話が早いというものです。
 
 執筆や出版にしても、実際にはブログが有名になれば出版会社から問い合わせが来るようです。(まぁ、そもそもビジネス系のブログなんて本にするのが難しいですが)
 まぁ、唯一「本業に役立つ」というのが、匿名ブログだとちょっと難しいかなぁと言う感じでしょうか。


 実際問題、今、思い立ってブログをはじめたところで、リストの後半のほうの「お金」とか「出版」を目指すには相当の努力をしないと難しいでしょうから、自己啓発の延長ぐらいの感覚でブログをやるのであれば、匿名ブログでまったく問題ないと思ったりするわけです。

 naoyaさんが書いているように「実名がどうとかいうことは本質じゃない、たとえ実名だったとしても名前はただのラベルでしかない。」というのが、非常に良い表現だと思います。
 実名を出していようがいなかろうが、面白いブログ、役に立つブログというのには自然と人が集まります。

 実際、R30さん、極東ブログのfinalventさんをはじめ、多くの有名ブロガーが匿名でブログをつづられていますし、ガ島通信の藤代さんにみられるように開設当初は匿名ブログで、その後実名ブログに、というパターンもありますよね。


 ですので、ヒンシュク覚悟で、あえてもう一度。

 まだブログをはじめてない皆さん、特に大企業の中の皆さん、是非ブログを始めてみてください。匿名で構いませんから。

 とはいえ、masahikoさんのデータによると、そもそもブログを続けると言うのは相当難しいというのが実情のようですが・・・

2005年5月13日

いまさらながら、自分なりにブログ論を振り返ってみる

My Life Between Silicon Valley and Japan - Blog論2005年バージョン(7・これで完結)を読んで。

 GW前にちょっとした盛り上がりを見せたブログ論ですが、火付け役の梅田さんのBlog論2005年が7回の連載を経て完結したのもあり、もう主なブロガーの間での議論は終了し、先に進まれてしまったようですね。

 私がGW前に書いたブログブームの記事についても、いろんな人からいろんな反応をもらいました。
(ブログタイプは、ココリコミラクルと同じスタッフが作っているという話も教えてもらえたり)

 やっぱり、ブログを書いている人間にとって、ブログ論というのはある種の人生哲学のようなものなんでしょうね。
 自分は何のためにブログを書いているのか、ブログを書くことにどういう意味があるのか、定期的に確認したくなる。そんな感じをうけてしまいます。

 GW中にいろいろあってブログが書けず、すっかりタイミングを逸してしまった間がありますが、自分のまとめをメモするためにも、いまさらながらに自分なりのブログ論を振り返ってみたいと思います。


 日本のブログの現状に対する感覚は、デジモノに埋もれる日々でまとめられている記事が個人的にもしっくりきます。
 やはり読み物としては「面白い情報が最強」というのは、痛感してます。
 
 自分自身も、面白ブログを読むのは好きだし、それらがランキングでトップを占めるのは当たり前。
 ブログタイプが番組としてどうかは別として、ブログタイプに影響されてブログを始める人が増えることも、実は良い事だと思ってます。
(実はうちの嫁さんもブログタイプを見てから、ようやくブログを書いてくれるようになりましたし(笑))
 
 実際、アカデメディア(当日の詳細はLacrimeさんのログ参照)で講演された水野さんだとか、さきっちょ・はあちゅうコンビのように、個人情報発信の成功事例が出ていることは非常に良いことだと思ってますし、俺のターンでほのめかされているように、たぶんもっとそういう成功事例は隠れているはず。


 ただ、正直な話、自分はそういう面白い文章を書く能力がないですし、自分がITベンチャーにいることもあり、やっぱり自分の仕事に対するヒントになってくれるビジネス系のブログに興味があるんですよね。
 そういう意味では、デジモノさんの例えで行くなら、極上のチャーハンも好きだけど、極上のラーメンも食べてみたいという感じでしょうか。


 まぁ、ブログといっても、所詮簡単ウェブサイト作成ツールなわけで、面白いブログを書こうがビジネス系のブログを書こうが自由。
 自然と面白いブログが主流になるのは当然の流れといえるでしょうね。 


 そういう意味では、「ブログは米国で濃い議論に使われてるから日本でも使ってくれ」というのは、そもそも無理というのは何となく分かってはいるんですが、どうしても個人的にはそういうビジネス系のブログに増えてきてほしいんですよね。

 そのあたりの矛盾については、McDMasrerさんwebdogさんにかなり厳しく突っ込まれてしまってますが。


 それでも、やっぱり個人的にブログに期待するものは、こういう濃い人と手軽にネットで議論できる点だったりします。

 自分の言葉でうまく表現できないのですが、感覚として印象に残っているのがITmediaの田口さんのインタビュー記事の「究極のインターネットは、みんながちょっとずつ頭がよくなる世界」という言葉。


 実際に自分がブログを続けるエネルギーになっているのが、ビジネス系のブログを書いている人たちとインタラクションを取れる点にあります。
 それこそインターネット前であれば、濃い人たちと議論するには、そういう勉強会に参加しに行くとか会いに行くしかなかったものが、今ならこうしてテキストベースでだれかれ遠慮なくディスカッションを仕掛けられるわけです。

 一人で沈思黙考して思いつく未来なんて、自分レベルでは所詮しれているんですが。
 それがこうやって大勢の人と一緒に議論しながら考えられるってのは、まさに脳のシナプスがプツプツとつながる錯覚を味わえるわけです。
 今回のブログ論をめぐる議論なんて、まさにそれですよね。


 そういう意味では、自分にとってのブログは、パーソナルメディアというよりはあくまでコミュニケーションのツール。

 コミュニケーションの相手が増えてほしいという思いがどうしても強いので、McDMasterさんがいうような「閉鎖的な日本の企業組織社会で発言を制限されてきたプロフェッショナルたちが blog というツールの良さに気付くまでにはさらなる時間が必要だと思う」というのは大企業出身者として痛感していながらも、やっぱり期待してしまったりするんですよね。


 実際、finalventさんが書かれていたように、専門家にとってはネットに降りてくるメリットが薄いというのは事実ですし。
 ただ、個人的にブログに出てきてほしいのは、リアルで専門化扱いされているほどレベルの高い人でなくても良くて、大企業の若手で自分と同じぐらいの意識で議論してくれる相手が増えてくれれば、それで良かったりします。

  
 なので、難しいのを承知であえてまた書きます。
 まだブログをはじめてない皆さん、特に大企業の中の皆さん、是非ブログを始めてみてください。
(って、自分のブログに書いた程度じゃ、そういう人は読んでくれてないか・・・)

2005年4月28日

ブログタイプに見る日本のブログブームと言うもの

My Life Between Silicon Valley and Japan - Blog論2005年バージョン(2)を読んで。

 梅田さんのブログでBlog論2005年が展開されて各所で話題を呼んでいますね。
 昨日参加したアカデメディアでも、田口さんが梅田さんの記事を引用して、日本のビジネス系ブログの不足を嘆いていましたし、R30さんなんかは「ブログブームの終わり」と題した記事を書かれています。

 アカデメディアで田口さんが引用していて、私個人も特に共感した部分がここ。
確かに堀江さんや藤田さんをはじめとして、日本のネット系ベンチャーの社長がBlogを開設するようにはなったが、ライフスタイルの開示やベンチャー起業・精神論みたいな「面白さの追及」に終始して、中身のある話は少ない。大組織に属する超一流の技術者や経営者が本気でBlogを書くということも、どうも日本では起こりそうもない。磯崎さんのBlogのような質の高いものが、ありとあらゆる分野で、これでもかこれでもかと溢れるようになればいいのだが、そういう方向を目指すBlogは相変わらずほんのわずか。日本のBlogは、そちらに向かっては進化していないように思える。残念ながら今のところ、僕の期待は裏切られたのだな、というのが正直な感想なのである。
 実は、昨年末に私個人が漠然と感じていた不安とか不満のようなものがこの文章と重なります。

 個人的なブログの意義と言うのは、梅田さんがいうところの恐ろしいほどの「知的生産性向上」でしたが、年末辺りにブログ自体の数はうなぎのぼりに増えていくのだけれど、実はビジネスに役立つブログの数があまり増えていないように感じられる状態が続き。
 一無名ブロガーにも関わらず、アルファブロガー投票企画などという恐れ多い企画をしてたのは、そういうビジネス系ブログが注目されたり、そういうブログを目指す人が増えるのに少しでも貢献できればと、思ったのが経緯だったりします。

 
 ただ、最近になって「これはもう勝負あったな」と思う象徴的なものとなったのがフジテレビで放送されている「ブログタイプ」。
 ブログタイプをご覧になった方は感じていると思いますが、あの番組で取り上げているブログはもちろん「面白い日記」。
 うちの嫁さんも「ココリコミラクルみたい」と評してましたが、まさにそんな感じ。

 もちろん、ブログを読者投稿の代わりに使って、そのネタをもとにテレビ番組を作ると言う取り組みは興味深いですし、別に批判するものではないのですが。
 とりあえず、日本におけるブログと言う言葉が、普通の人にとっては「面白い日記」として定義されてしまったことを感じてしまうのです。


 もう、こうなってしまうと、しばらくは大企業の社員が実名で「ブログ」を書きやすい状況になるということはないでしょう。

 実名で情報発信していたときに、もしその人の企業名が補足されてしまうと、上司に理解があればというレベルでは多分済まず。
 広報部だとか役員レベルがブログのメリットを理解していないと、誰かが「あいつはネットで日記なんか書いてけしからん」とかなってしまいそうです。

 未来のいつかの吉岡さんと、梅田さんが掛け合いをしているように、日本における守秘義務の定義は限りなくグレー。
 日本の「仕事」の定義は、その会社における人格が、私生活の人格ともオーバーラップしているようなところもありますから、この守秘義務のグレーな定義が、自動的にネットでの情報発信に対する後ろめたさにつながっている印象もあります。
(座談会で梅田さんと議論したときには、「日本人は仕事や飲み会で忙しすぎてブログなんか書いているヒマないでしょ」と言われたのも印象的でしたが)


 まぁ、だからと言って個人が情報発信することの価値は明らか。
 大企業の中の人が躊躇している間にも、梅田さんが言うところの「新しい日本」の中から、濃いブログを書く人もどんどん増えてくるんだとは思います。

 ただ、個人的には大企業に属していた人間なので、大企業の人にも是非個人情報発信の価値を分かってほしいなぁ、などと思ってしまうわけですが、果たしてこの流れを支援するにはどうすれば良いのでしょうか?
 やっぱり難しいのかな・・・
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