先月、JIAAのネイティブアド研究会のガイドラインが発表されて、各所で話題になっていましたが、昨日それに関連してCNETにネイティブアド研究会の長澤さんと長崎さんの長文インタビューが公開されました。
■「ネイティブ広告」定義の真意–JIAAが語るこれからのメディアの在り方
長文のインタビュー記事ですが、ポイントが良くまとまっており、ネイティブアドの関係者の方はもちろん、メディアの記者やブロガーなど情報発信に携わられている方やネット広告に関係する方にとっては必読のインタビューだと思います。
個人的には長澤さんとはadtechのパネルディスカッションや書籍の対談など、何度もご一緒させて頂いているので、長澤さんがネット広告を本当に心の底から愛していて、一方でステマややらせがなかなか無くならない実態から、ネット広告の未来を心の底から憂いている方だというのは良く知っているので、以前からネイティブアド研究会の活動についてもお聞きしておりずっと影ながら応援しているのですが。
ネイティブアド研究会のガイドラインが発表されたタイミングでは、いろいろと曲解していたり、勘違いして反発している人達も多かったように見ています。
ネイティブアドについては以前に「「騙された気分」にさせないネイティブアドのポイントとは」というコラムを宣伝会議に寄稿したこともあるのですが、Facebookのスレッドにいろいろコメントをもらったこともあり、自分なりの考え方をまとめてみることにします。
そもそも「ネイティブアド」という概念自体が、元々は「コンテンツ」と「アド」は全く別のモノとして明確に分離されているべきであるという編集と広告の分離の常識に対して、コンテンツ部分にアドを出す、つまり編集部分に広告を混じらせてしまうという構造になっているので、当然、読者や視聴者からすると文脈的にステマややらせに近い構造の印象になるわけです。
だって、今まで広告が入るわけがない、と思っていた場所に広告を入れようという話なわけですから、ユーザ目線ですると精神的に気持ちが良いはずな話なわけはないですよね。
インターネット広告推進協議会という名称の組織であるJIAAが、ネイティブアドのガイドラインを作る、と聞くと、ネット広告業界の人たちが自分達に都合の良いネイティブアドをもっと売りやすくしようとしてるんでしょ、と誤解する人達が出てきても仕方が無い構造にある気はします。
でも、実はこれ違うんですよね。
ネイティブアドを推進したい一番のプレイヤーは実はメディア側。
何しろネット広告の代表であるバナー枠がその地位を確実に失いつつあるわけです。
そもそもバナー広告のクリック率って年々低下していて平均で0.2%以下とからしく
■参考:第2回:今の『ディスプレイ広告』の枠ってクズだよね!ワイルドな広告枠開発の提案だぜぇ~?!
そもそも多くの人がバナー広告を無視する技術を体得してきているという話もあり。
■参考: 「バナー広告には誰も関心を払わない」という科学的証明
■参考:調査報告:インターネット広告は63%の人に無視されている
さらにはアドネットワークの台頭でメディアが獲得できるアドの単価は下落する一方。
アドテクノロジーの進化やリターゲティングの普及で、バナー広告が「誰に見せるか」を重視するようになったこともあり、メディアの質の重要性が薄くなっていることも影響は結構大きいようです。
もはや企業メディアが、バナー広告枠の収入では生きていけなくなってきているわけです。
そんな中、ネイティブアドが流行る前から日本のメディアで重宝されるよになっていたのが「記事広告」や「タイアップ」と呼ばれる手法。
記事広告であれば、媒体の読者がどういう人かというメディアの質が改めて重要になりますし、記事広告を各媒体側の編集力で差別化できます。
自社にしかできないユニークな広告メニューと言うことで、バナー広告に比べるとある程度金額も維持できますし、コンテンツ価値も踏まえてCTRやCPAだけ重視する料金設定の罠から抜け出せる可能性もあります。
従来は記事広告は編集記事とは全く別の場所に掲載されることが多く、今でも大手メディアサイトはその方式ですが、Gizmodoのようなブログ系の媒体では普通に記事一覧の中に記事広告を混ぜるのが普通になってきて、だんだんと編集記事と記事広告の見分けがつきにくいパターンが増えてくるようになってきました。
で、ここに、「記事広告と明示しないで欲しい」という圧力がかかってくるケースが多いのが問題になるわけです。
続きを読む ネイティブアドのガイドラインが機能してくれないと、間違いなくネットの記事を一つも信じられなくなる未来が来てしまう件について