もはや、ソーシャルメディアとマスメディアを分けてマーケティングを考えること自体が間違っている、ということをad:tech Tokyoで考える。

 今年もad:tech Tokyoの怒濤の二日間が終わりました。
 私自身、4度目のad:techの登壇で慣れてきた面はあるのですが、今年は改めていろいろ思うところのある二日間だったので、ブログにまとめておこうと思います。
 まず振り返っておきたいのは私が担当した「マスメディア×ソーシャルメディア:「マス」「ソーシャル」から生まれる最適キャンペーンとは」のセッションです。
121030adtech.pngPhoto by Kamijo-san
 先日ブログでご紹介したように、非常に豪華なパネリストに恵まれ、モデレータとしては非常に楽をさせて頂いたセッションでした。
マスメディア×ソーシャルメディアのad:techセッションでは、テレビとソーシャルの組み合わせの可能性を議論したいと思います。
 セッションが終わって改めて感じているのは、もはやソーシャルメディアとマスメディアを分けて考えることに、意味がなくなりつつあるという点です。
 今回のセッションではあえてバラバラの業種、バラバラの職種の方にパネリストとして参加頂きました。
 誤解を避けずにあえて簡単に登壇者を分類すると
121030adtechkawaraduka2.jpgPhoto by Kawarazuka-san
 写真右から順番に
・エステーの鹿毛さんは、マスの象徴であるテレビCMを作っているマスの人
・日テレの原さんは、テレビ局の中でソーシャルメディア連携を模索しているマスの人
・CCIの長澤さんは、マスも経験しソーシャルメディア活用支援にも携わっている中間の人
・サントリーの坂井さんは、ソーシャルメディアの運営に携わっているソーシャルの人
・で、私は、ソーシャルメディアの活用支援をしているソーシャルの人 です。
 ただ、一歩引いた視点で見ると4人とも、顧客や視聴者に対して企業やブランドのメッセージを伝えたり、コミュニケーションを行うのが仕事なわけで。
 ユーザーがマスやソーシャルを使い分けて生活している以上、実は二つの間に明確な境界線は存在しません。
 セッションの中でも、日テレの原さんからサマーウォーズの放送の際に、ソーシャルメディア連携施策をアピールしたところ視聴率が山場に向けて上がっていくのが確認できたという話や、CM中の視聴率の減少幅が小さくなったという話があった他、エステーの鹿毛さんからもソーシャルメディア上の告知の結果テレビCMの視聴率を1%押し上げたという話が紹介されました。
 これはつまり、テレビの盛り上がりがソーシャルメディアに反映されているだけでなく、ユーザーがテレビを見ながらソーシャルメディアを利用することにより、視聴率にも影響を与える可能性があることを示唆しており、二つが双方向につながってる関係であることを示しています。


 そういう意味で、サントリーの坂井さんが紹介されていたような、テレビCMのキャンペーンに連動して、サントリーとソフトバンクのFacebookページ同士がコラボする、というのは、連携の形の一つとして非常に自然なモノであると言えるでしょう。
121030adtech2.png
 ただ一方で、マスとソーシャルがつながっているのであれば、何も企業は両方を同時に使わなければならないということでもありません。
 
 CCIの長澤さんは、マスやネットの広告施策で若年層の会員獲得を苦労していたワタシプラスが、LINEであっさり200万人の会員を獲得したことを例にあげ、マスの広告枠だけを販売することに安住する古いタイプの広告代理店的姿勢に警鐘をならしていましたし。
 逆にエステーの鹿毛さんは、テレビCMを完璧な作品として完成させてしまうのではなく、ソーシャルメディア時代にあわせて、突っ込みどころがある未完成な状態で出すというスタイルに変えることで、企業の公式アカウントを作らずとも、テレビCMを起点にソーシャルメディア上に話題を巻き起こし維持することができることを証明しています。
 その象徴と言えるのが、エステーの鹿毛さんがミゲルのテレビCMを作った際にホワイトボードに書いたというこのイメージ図でしょう。
121030adtechoikawa.pngPhoto by Oikawa-san
 写真だと何が何だか見えないと思いますが、伝えたいアイデアや思いが明確になっていれば、それがどのようにテレビCMからユーザーに伝わり、ソーシャルメディアを媒介としてまたぐるぐると回ってくるのか。
 そういうコミュニケーションの全体設計こそが最も重要なのであり、その手段としてマスメディアを使うのかソーシャルメディアを使うのか、どう組み合わせるか、は二の次の話というのが、今回の議論の結論だったように思います。
 当たり前の話ですが、企業のマーケティングやコミュニケーションは、多くの人に製品やサービスのファンになってもらい、また製品やサービスを買ってもらい、業績を上げていくことを目的に実施されるわけで、そのために企業が利用できる最善の選択肢の組み合わせで実施されるものです。
 先にマスメディアやソーシャルメディアを使うべきかどうかから議論したり、マスとソーシャルを両方使わなければいけないとか、絶対組み合わせなければいけないという前提から企画を考えるというのは、やっぱり本末転倒なわけです。
121030adtech4.pngPhoto by Masui-san
 最後にサントリーの坂井さんが言っていたように、即効性のあるマスメディアに比べて、ソーシャルメディアは年金積み立て的な感覚で、ある程度事前に我慢して投資することが必要なため、どうしても短期のキャンペーンで必要性の是非を議論すると分が悪いのが問題を難しくしている面はあるのですが。
 既に公式アカウントを持っているなら上手く使えば良いし、無ければないで他のやり方があるし、今から公式アカウントを作るべきかどうかは、今から積み立てを始めた方が良いと信じているかどうかで決まる。
 そういう当たり前の話なのかなと改めて感じます。
 改めて短い時間の中で、様々な気づきを提示して頂いたパネリストの皆さん、また当日会場にお越し頂き暖かく見守って頂いた皆さんに深く御礼を申し上げます。
追伸
 なお、このエントリーに掲載されている写真は、私が写真撮影をスタッフに依頼し忘れたため、ツイッターやFacebookから呼びかけたのに答えて頂いた方々の写真です
 身勝手なお願いに快くご対応頂いた皆さん、本当に有り難うございました。