これまでのコラムでは、 P2P にはファイル交換だけではなく様々な可能性がある、ということを紹介いたしました。
ただ、まだこのレベルだと事例が技術中心のため、多くのユーザーは「自分には関係ない」ことと思われるかもしれません。
そこで、今回からは前回のコラムで紹介した P2P コラボレーションソフトの具体的な機能を例に、 P2P がいかにビジネスの世界にも影響するか、ということを紹介していきたいと思います。
今回は、前回のコラムでも紹介した「Person to Person」という概念について触れてみたいと思います。
ホストコンピューターに代表される企業の基幹システムは、大抵はスター型と呼ばれる一極集中型のシステム構成になります。一番上にホストコンピューターがあって、そこから放射状に各端末に線が延びているような絵を、皆さんもご覧になったことがあるでしょう。
この絵は、実はビジネスの世界でもよくお目にかかりますね。そう、「中央集権型の組織」です。
つまり一極集中型のシステムは、中央集権型の組織に非常に適したシステム構成といえるわけです。一極集中であればデータの管理も容易ですし、情報にアクセスする権限をコントロールするのも簡単にできます。情報はホストコンピューターやサーバーにのみ存在すれば良いわけで、利用者の端末には一切残す必要はありません。権限は全て中央のシステムを管理する人間が握り、あとの人間は単なる利用者となります。
この中央集権型の組織やシステムの代表としては、やはり銀行などの金融機関の基幹システムや、政府の組織があげられるでしょう。
では、japan.internet.com の読者の皆さんの業務やシステムについてはどうでしょうか? 自分の情報がサーバーだけに保存されていて、いざというときに自分のパソコンで確認できなくて良いのでしょうか? 変更が出るたびに、システム担当に依頼してシステム変更をしなければならないのでしょうか?
インターネットの普及は、 IT 産業だけでなく多くの組織のスタイルを大きく変えようとしています。情報共有も自分の部署内だけという硬直した形態だけではなく、他部署や他企業などとの共有という複雑な形態がありうるはずです。
現在では、そのような組織やシステムには「分散型のシステム」がより適しているのではないかと言われています。その一つとして注目されているのが P2P 技術による個人を中心とした情報共有の仕組みです。
P2P 型の分散型のシステムでは、ホストコンピュータのような中心は存在せず、必要な人が必要な相手と直接情報共有を行います。まさにインターネット社会のビジネススタイルと同じ仕組みでの情報共有を実現するのです。
つまり P2P 技術により端末(Peer)同士がつながる Peer to Peer という環境を構築することにより、組織に依存しすぎることなく個人(Person)同士の Person to Person のつながりを実現できるのです。