P2P とビジネスの関係:中心の無い組織って?(上)

7月から続いたこの「P2P とビジネスの関係」というテーマも、今回で一段落です。

これまでは「企業」やその企業で働く「ビジネスマン」を中心にコメントをしてきましたが、今回はその視点をさらに幅広い組織に広げてみましょう。


実は企業という考え方を中心にしている時点で、私たちは既存の常識にとらわれているのかもしれないのです。

■中心の存在しない組織

皆さんは、『踊る大捜査線 THE MOVIE 2』をご覧になったでしょうか。この映画で象徴的なシーンの一つとなっているのが、主人公の青島巡査部長が「レインボーブリッジ、封鎖できません!」と叫ぶシーンです。

レインボーブリッジを封鎖するのに複数の官公庁がからんでいて、いつまでたっても結論がでない。映画の一つのテーマともなっていたのが、硬直的な縦割り組織では、必要に応じてリーダーが変わる柔軟なグループに太刀打ちできないというメッセージでした。

実際にどちらの組織が優秀かという議論は、あまり意味が無いのでここでは避けたいと思いますが、このメッセージに代表されるように、最近は多くの企業が、これまでの縦割り方の官公庁的モデルから、クロスファンクショナルチームのような柔軟な組織を目指そうとしています。  

これまでこのコラムのあちこちで触れてきたように、究極的には中央集権思考に進むか、分散型の思考に進むかの違いです。

分散型の仕組みと P2P 型の関係は、中央集権的組織にいた人々にはイメージしづらいかもしれません。

「指揮命令系統は明確に決まっていなくて良いのか?」
「各メンバーは何をすれば良いのか分からなくなるのではないか?」
「管理ができなくなって混乱がひどくなるのではないか?」

これまでの組織が中央集権的なものが中心だったのですから、様々な疑問が生じてくるのも当然でしょう。 でも、はたして中央集権的な組織が、本当にビジネスを行う基本形態と呼べるのでしょうか?

■ナレッジ ワーカー

実は人類の歴史の中では、いわゆる「ナレッジワーカー(知識労働者)」と呼ばれる、「知識」を資本として働く人々が世の中の中心になるビジネススタイルは、ここ数十年発展してきたにすぎません。それまでは、いわゆる肉体労働や職人的な技術に対しての賃金を支払うという形が通常であり、当初の中央集権的な組織は、そういった労働を管理するのには比較的向いていたと言えます。

ただ、IT 技術の進化や競争の激化により、変化のスピードはこれまでと比べものにならないほど速くなり、ナレッジワーカーはますます重要な地位をしめるようになってきています。しかし、このナレッジワーカーの重要性も、ピータードラッカーが指摘したのが1960年代で、まだ、ここ数十年の話でしかないのです。 

つまり、本当にどのような組織が正解なのか、まだまだ誰にもわからないというのが現状です。(永遠に続く正解というものはないというのが、実は正解かもしれ ません。)

例えばコンサルティングファームのような組織は、すでにかなり分散型の仕組みを取り込んでいます。一人一人のコンサルタントは、「企業」に雇われて仕事をしているというよりも、それぞれのプロジェクト単位に雇われるイメージです。

各コンサルタントは全社的な方向性を意識するよりは、各プロジェクトの目的を意識してプロジェクトを進めており、このような仕組みは、各個人の責任や役割が明確になる組織で、徐々に取り入れられつつあります。

 そのような中で、新たな組織体として注目されているのが NPO(Nonprofit Organization)です。次回は NPO の話をしましょう。(次回に続く)