スタートアップのニュースサイトである「Startup Dating」に不定期で記事を投稿させて頂いています。
こちらのブログとStartup Datingに同じ記事をダブルポストする形になりますので、お好きな方でご覧下さい。
先日投稿したStartup Datingの記事はこちらです。
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現在、インドネシアのジャカルタで STARTUP ASIA JAKARTA というイベントに参加中です。
イベントの詳細については池田さんの記事を見て頂ければと思いますが、セッションを聞いていて感じたことをメモしておきたいと思います。
初日のオープニングを飾ったのは、Google Indonesiaの代表者とのディスカッションと、Tencentのアジア市場の責任者のディスカッション。 Googleは言わずと知れたインターネットのトップ企業ですが、Tencentも中国がメインとはいえ実は世界で5本の指に入る巨大ネット企業。
Google Indonesiaの人が、モデレーターのWillis Weeに何度もこれからGoogleはインドネシアで何に注力するのかと聞かれて答えをはぐらかすのに比べて、Tencentの人がやたらと7月から開始する自社サービスをアピールしまくるという姿勢が対照的だったのですが。
なるほどなぁ、と思ったのはインドネシア市場に対峙する姿勢。
Googleは、どちらかというと淡々とインドネシアでも世界でやっていることと同じ事をやっていく、という実務的なコメントに終始した印象があります。単純にこういう場なので言葉を濁していたのかもしれませんが、再三インドネシアにおける戦略を聞かれても、やるべきことをやると繰り返すのみで、インドネシア市場向けの独自の戦略を考えているようには受け取れませんでした。
一方でTencentは、逆に既存のインドネシアの貧富の差によるコミュニケーションプラットフォームの違いを例に上げ、Tencent自体はその壁を壊して誰でも使える無料のコミュニケーションプラットフォームを確立し、そこからコンテンツでビジネスにするという持論を展開。 中国における成功体験を元にしつつも、インドネシア市場に対してやり方を変えようとしているというメッセージを明確に打ち出していました。
インドネシアの市場というのは、iPhoneやAndroidのシェアはそれほど高くないそうで、ブラックベリーが人気という独特な市場。Facebookの利用率が高いのも実はブラックベリー経由のメッセージのやり取りが無料になるからという背景があるそうです。一方で所得水準の高くない人はまだまだいわゆるフィーチャーフォンを使っているケースも多いんだとか。
当然そんな市場で、通常のスマートフォンアプリに頼った展開だけで成功する確立は低くなります。そこでTencentの人は、使っている端末によりコミュニケーションプラットフォームが異なるのは問題だという指摘から、自分たちは全ての人が無料で使えるプラットフォームを作るんだというビジョンを提示。それに合わせて中国のアプリをそのままインドネシアに持ってくるのではなく、インドネシア向けにサービスをアレンジしているようでした。 特に印象的だったのは、Tencentはインドネシアではスタートアップなので、スタートアップのように行動していると強調していて、インドネシアで自分でスタートアップをやろうとしている人は是非Tencentで一緒にやらないかと会場でアピールしていたことです。
現段階の二人の話の印象だけで言うと、インドネシアで成功するのはGoogleではなくTencentではないかという印象を持ちます。当然Googleはグローバルの認知度が高いですから、このアプローチで良いのかもしれませんが、日本企業がどちらを参考にするべきかといえば間違い無くTencentのアプローチでしょう。
iTunes Storeのおかげで、日本のスタートアップが開発したアプリが東南アジアの国々で流行るという現象は珍しくなくなりましたが、その流行が定着するかどうかには、また地道な国ごとのアプローチが必要になるのだと思います。
実際、米国で圧倒的な存在であるオークションサイトのeBayは日本で散々な結果になりましたし、米国ではもはやYahooをライバルとしてみなしていないGoogleも、日本ではヤフージャパンの圧倒的な地位を崩す存在にはなれていません。 世界で圧倒的な存在であるFacebookも、単純に日本語化だけを発表した2008年頃から数年は日本で鳴かず飛ばずでしたし、要は、日本で成功したからといって、そのままのサービスを多言語化すれば、そのまま他の国でも上手くいくだろうという考えは、大きな間違いということです。
日本における歴史を振り返ると、ヤフージャパンやAmazonのような米国の成功企業が日本においてもキングとして君臨しているのは、早期にそれぞれの日本担当者が日本人向けのローカライズやオペレーションの確立、日本におけるマーケティングやPRに注力したからですし、Facebookが日本で存在感を急速に増したのはFacebookの日本チームの確立が貢献していると感じています。
ネットのおかげで国境を超えてウェブサービスやアプリが伝播することは珍しくなくなりましたし、日本のサービスをちゃんと各国の言語に対応することで、利用者が気がついたら増えるというケースは今後も増えてくると思います。ただ、単純にアンテナの高いそういう海外のユーザーに使ってもらっていることを喜ぶだけでなく、その国で本当に重要なサービスに進化するためには、ひとつひとつの国に対して細かく戦略を変えていくことが、今後の日本のウェブサービスやアプリの海外展開において、非常に重要になってくるのではないかな。
そんなことを考えながらインドネシアでの時間を過ごしています。
Startup Asia Jakartaの詳細については、Tech in Asiaのこちらの記事をどうぞ。