studygiftの炎上騒動が長期化したのは、善意と誤解の炎上ループにはまってしまったからではないか

 さて、昨日肝心なところで燃え尽きてしまったstudygift炎上騒動の振り返りですが、続きを書いてみたいと思います。
 なお、昨日の記事はこちらです。
studygiftの派手な炎上騒動から、私たちは何を学ぶべきなのか
(それにしても、やはりブログ記事って予告とか約束とかして書くものじゃないですね、飲んだ後に書いたので乱文乱筆ご容赦下さい。)
 私が今回の炎上騒動が長期化してしまった要因と考えているのは下記の5つです。
■1.批判されている背景について誤解してしまった
■2.批判に対する対応が後手にまわってしまった
■3.釈明や謝罪を行うべき手段や場所を間違えてしまった
■4.関係者が失言を重ねて火に油を注いでしまった
■5.論点が整理されないまま擁護者が増えたことにより対立構造になってしまった
 順番に一つずつ詳しく見てみましょう。
■1.批判されている背景について誤解してしまった
 個人的に、今回のstudygift騒動がここまでもつれてしまった背景として一番大きいと考えているのは、この批判の背景に対する誤解です。
 これは想像でしかありませんが、studygiftの運営チームであるlivertyのメンバーは、当然今回のstudygiftを「良いことをしている」と信じてやっていたはずです。
 陰謀説やフィクサー説などいろいろ出てきてしまっていますが、そうは言ってもあれだけの大勢が一人の女子学生の学費の100万円の寄付を集めるために、そんなおおげさな詐欺を打って出るわけないですし持ち出しで徹夜でサービス開発するわけありません。もし、百歩譲ってサービス運営側が悪意でstudygiftを始めていたとしたら、最初の炎上の時点で怖くなってサービスを停止したはずです。
 「僕らは良いことを新しい形でやろうとしているのに、なんでこんなに罵倒されなければいけないんだ」という思いが、炎上の過程の対応の全てににじみ出ています。
 実際問題として、何か新しいことを始めたら何か批判されるのは当たり前ですから、ある意味炎上慣れしている家入さんたちが、行動もせずに批判だけする人達に対して怒りを感じる気持ちはわからないでもありません。
 ただ、実はやまもとさんのブログ記事に見られるように、今回の立て付けは明らかに何かの一線を越えており、家入さんたちの味方からも建設的な批判がされていたわけですが、そこに気づくのにかなりの時間がかかってしまったように感じられます。


 このケースと似たような構造と呼べるのが、プリウスがアクセルのトラブルに陥った時のトヨタさんの対応です。 
 米国を中心に盛り上がったアクセルのトラブル問題に対して、日本で経緯説明の記者発表会をする際に、技術的な背景を説明するのに終始してしまったことにより、かえって批判を増してしまいました。
トヨタ、昨秋からプリウスに苦情 自主改修検討、クレーム隠し否定
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 伝え聞く話によると、この横山常務は人格者で非常に人望のある方らしいのですが、それでもその発言は、一部を切り取られて物議をかもし、その後の豊田社長の謝罪会見までもつれこむことになります。
 このときも、本来はアクセルのトラブル問題に対して不安を持っているプリウスオーナーの方々のケアを一番に置くべきだったのに、米国政府に対する防衛に意識が行き過ぎてしまったという分析をされている記事を良く見ました。
 実は今回のstudygiftのケースでも、本来は、支援を表明してくれている方々が不安に感じている点を解消することにまず集中すべきだったのに、罵倒してくる批判者に対する防衛に意識が行き過ぎて、建設的な批判に耳を傾けることができなくなっていた、と言う構造だったのではないかと想像しています。
 建設的な批判に耳を傾けることができていれば、事態の深刻さに早めに気づき、もう少し適切な対応を早めに取れたのではないか?というのが1点目の仮説です。
■2.批判に対する対応が後手にまわってしまった
 1番の精神構造の問題もあり、今回の炎上騒動ではstudygift側の反応はことごとく状況に対して後手に回ってしまっています。
 サービス開始当初に指摘されていたのは、あくまで「坂口さんが勉強頑張ってないから奨学金打ち切られたんだろ?」とか「Google+とかに打ち込んでたから成績下がったんだろ」というような自業自得論が中心で、「可哀想な学生を救おう」というstudygiftの理念と、最初のシンボルとしての坂口さんの実態とのギャップに対する突っ込みがほとんどでした。
 昨日のブログを読んで、「studygiftが最初からインチキだっただけじゃん」というコメントも頂きましたが、この初期の段階であれば、この理想とギャップに対する説明を明確に行い、「今回はあくまで最初のスタートなので、シンボルとしてアピールしやすいプロジェクトメンバーの坂口さんを起用した」と説明すれば済んでいた可能性もあります。
 あくまでシンボルプロジェクトなので、理想とは「乖離」してますが、それでも良い人だけ支援して下さい、と情報を全て開示して仕切り直せば、11日間も炎上することにはならなかったと思われます。
 ただ、現実的にはそういった情報開示や説明はサイト上ではほとんどされず、淡々とお金だけが集まっていくという状況に、批判者のストレスが募っていきます。それがあっという間に、寄付や支援の表現、退学における記載の間違いや、坂口さん自身がプロジェクトメンバーであることなど、部外者からすると「疑惑」とみられるポイントが次々に浮上することになり、ネガティブスパイラルにつながっていくわけです。
 ツイッター上では家入さんを中心に、いろいろとコミュニケーションはされていたようですが、疑惑に対するサイト上での説明は、常にそのタイミングでの疑惑のボリュームを下回る内容しか行われず、帰って疑惑の存在だけを大勢に知らしめ、結論が不明の状況で何が真実か分からないような怪情報まで飛び交う事態になります。
 このネガティブスパイラルを断ち切る手段は一つ。
 「批判や疑惑よりも大きな対応一発で済ます。」というものです。
 このケースの良い事例として紹介したいのは、UCCさんのTwitter炎上事例です。
見事な”鎮火”はなぜ可能だったのか UCCの事例から考えるTwitterマーケティングス
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 こちらも2010年2月に発生したケースですが、UCCがツイッターを活用したスパム的なキャンペーンに手を出してしまい、ツイッター初の炎上事例として注目された事例です。
 この際のUCCの見事だったのは、10時に開始したキャンペーンを12時には停止し、その日の15時に謝罪のプレスリリースを出していること。
 
 詳細は上記の記事を読んで頂ければと思いますが、この事例の実被害というのは実はスパム的なメッセージが、たった「536件」送付されただけです。
 正直、たかがツイッターでスパムメッセージを536通出しただけで謝罪のプレスリリースはやり過ぎ、というのが一般の人の印象だと思いますが、担当者の方によるとこのまま放置すると週末を超えて炎上が拡がってしまうのを懸念されて、思い切ってリリースを実施することに決めたのだとか。
 これが功を奏し、このリリースを境に、ツイッターコミュニティのUCCに対する反応は、ポジティブなものへと変化します。
 今回のstudygiftのケースにおいては、残念ながら釈明の記事や謝罪の記事は、それぞれの時点での疑惑を内包しきれていない中途半端なものでした。
 炎上初期に何に謝罪すべきか分からないという発言を家入さんがされていたのを見ましたが、UCCの事例を考えると、少なくとも支援をしてくれた人に誤解をさせたことや、不安をかけたこと自体は初期の段階でしっかり謝罪するべきだったのではないかと思います。
 studygiftは始まったばかりのサービスで、謝って損することなんてそんなになかったわけですから。
 サービス開始直後に、サービスのスタンスが曖昧な点を謝罪して仕切り直すなり、週明けの疑惑の範囲が拡大し始めた段階で、全ての説明を早急に実施してサービス停止をするなりという、早め早めに疑惑の規模よりも大きな対応を実施していれば、さすが対応が早い、と雰囲気が変わる余地は十分あったのではないかと感じています。
■3.釈明や謝罪を行うべき手段や場所を間違えてしまった
 さらに対応の中途半端さを加速させる結果になっていたのが、関係者がツイッターに頼りすぎていた点だと考えています。
 実は、関係各所に対する経緯説明は、studygiftのツイッターアカウントを中心に繰り返し発信されています。
 それでも繰り返し押し寄せる批判の波に、これ以上どう説明すれば良いのかと、混乱する発言も見られたように記憶しています。
 ただ、こういう状況の中で関係者のツイッターだけで説明するというのは、根本的にツールの使い方を間違えています。
 確かに炎上に注目している人は、関係者のツイッターの発言にも目を通しているかもしれませんが、ほとんどの人はそんなところは目を通しません。
 ツイッターはあくまでフローの場であり、一人一人に個別に説明するのには向いていても、全員に対する謝罪メッセージとしては不十分です。
 昨日のブログに書いた時系列のデータを見て頂ければ分かるように、残念ながらstudygiftの公式サイト上では23日に至るまで明確な謝罪の言葉はありません。
 システムトラブルに対しては、申し訳ありませんと書かれていますが、それ以外の釈明記事は釈明がされているだけで謝罪の言葉は見られません。
 関係者はツイッターで説明しているだけに、理解を得ているつもりがあるのかもしれませんが、サイトしか見ていない大勢の人には、まだ背景の説明も謝罪もされていない現在進行形の疑惑に見えてしまうわけです。
 先ほどご紹介したUCCさんのツイッター炎上事例では、謝罪のプレスリリースが出ている関係で、炎上をいち早く取り上げた記事は下記のように、謝罪がされているため騒動としては終了で、今後に向けたエールという形で記事が終わっています。
[ニュース解説]Twitterマーケティングで炎上、UCC上島珈琲が謝罪へ
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 一方で、studygiftの今回のケースでは、公式サイトに謝罪が明確にないまま、インタビュー対応などを個別に繰り返しているため、メディアの記事では疑惑の追及が終わっていないという問題が継続中というトーンのまま記事が書かれ続けていくわけです。
 しかも、studygift側の釈明記事が、商品であったはずの坂口さんや「studygiftスタッフ」名でしかされていないように見えると言うのは、どうひいき目に見ても中途半端です。
 海賊スタイルを標榜しているlivertyのことなので、あくまで連帯責任として釈明記事も謝罪記事もスタッフ一同で書かれているのかもしれません。
 海賊スタイルというのであれば、やはりここはどう見ても海賊の船長である家入さんの名前で坂口さんを守る形での謝罪をサイト上でするべきだったのではないかと思いますし、ツイッター上で展開されたお詫びの言葉は、サイトに今からでも載せておくべきだと思います。
 このあたりの責任者の曖昧さや、謝罪の場所の乱立が、28日のサイト閉鎖後も一部で延焼が続いてしまった一因になっていると思います。
■4.関係者が失言を重ねて火に油を注いでしまった
 さらに多くの人が指摘しているように、家入さんのツイッター上での不用意な発言が、無駄に炎上を長続きさせてしまったのは間違いありません。
 家入さん自身が、持ち出しで良いことをしようとしているのに、なぜこんなに批判されなければいけないのか、と当惑していることは一連の発言を見てみれば良くわかりますが、それにしても今回の発言の数々は褒められたものではありませんでした。
studygiftを立ち上げた家入一真氏のTweetまとめ – Togetter
 18日の炎上初期における「絶対やめないよ馬鹿野郎」発言から
 20日の目標達成後における「ごめんこれだけは言わせて…ざまーみろ!」
 25日の終盤における「インターネット界隈の方々は裏でみんな繋がってる」や「要するに一言で言うと「嘘を嘘と(ry」」まで、
 この発言は炎上するだろ・・・と周りから見ると眉をひそめる発言が今回はあまりに目につきました。
 本人からすると、多くの罵倒をツイッター上で受けた過程から、ついつい言い返したくなってしまったんだと思いますが、ツイッターというのは等しくフラットにメッセージを届けるプラットフォームであり、罵倒してきた人に対する意趣返しを行うには実は向いていません。
 ツイッターの構造上、誰かにあてたメッセージであっても、読んだ人は自分のことを言っているのかな?とつい受け取りやすい構造です。
 最後のみんな繋がってる発言が、余計な憶測をよんで、けんすうさんをはじめとしたプロジェクトへの賛同者まで巻き込んでしまったのが分かりやすいケースですが、海賊スタイルを標榜するlivertyにおいて船長を務めていたであろう家入さんがまずやるべきは、仲間を傷つけた批判者に対してつばを吐きかけたり復讐したりすることではなく、ビジョンに共感してくれた賛同者の方々に対して言葉を尽くすことだったと強く思います。
 周囲が謝罪すべきと一様に思っている状況で、論理的に自分より悪いやつを指摘する、というのは実は炎上時に良く陥る精神構造です。
 ユッケ騒動におけるフーズ・フォーラスの社長が逆ギレして、翌日には土下座を刷る羽目に追い込まれていたのが記憶に新しいところだと思います。

 大量の罵詈雑言を投げかけられ続けた結果、ついついキレてしまったというのは良く理解できますが、その発言をツイッターというブロードキャストの場で発するというのは、実はテレビで放映中に失言をするのと構造は変わりません。
 しかも、ツイッターでは批判の声は、批判をしている人のフォロワーと、@を入れられた本人にしか見えない構造になっているため、実は本人がスルーすれば本人のフォロワーには知らせないで済みます。
 なのに、暴言を吐いてきた批判者に対して暴言を返すと、本人のフォロワーに批判者の存在をわざわざ知らせることになってしまいます。
 
 おまけに批判者は本人が気にしていることを確認できて、さらに自信を深めて再度批判を継続することになることも多々あります。
 実はツイッター上で、批判者に対して暴言を返すというのは、批判されている側にとっては、たいしてメリットのない行為なわけです。
 家入さんは、何度も序盤の失言で、その構造を理解できたはずなのに、最後までその失言行為が繰り返されてしまったのは本当に残念です。
■5.論点が整理されないまま擁護者が増えたことにより対立構造になってしまった
 さらに今回の炎上騒動が長続きしてしまった背景には、実はstudygiftの支援者や応援者の存在が作用しています。
 そもそもstudygiftは炎上のさなかでも順調に資金を集め55時間という短期間で100万円近い資金を集めることに成功しました。
 この事実だけを見れば、studygiftには明確に支援者がいるわけで、スタッフ側からすると、資金を出してくれる支援者がいるのに、ネット上では行動もしない人達が批判を繰り返している、という対立構造と思うはずです。
 一部の人に批判されても、一部の人に支援されるなら、このままで良い、そう思ってしまったとしても仕方がない構造でしょう。
 
 さらに昨日の記事でご紹介したstartupdatingの平野さんの記事に加えて、21日にstudygiftへの全面的支援を表明された山田さんの「学費支援プラットフォーム「studygift」をムーブメントにするために」というブログ記事や、26日には佐々木さんが「studygift問題の論考をTwitterとFacebook上で展開するなど、今回の騒動では様々なネット上の有名人が、studygiftをフォローするコメントを表明しています。
 それぞれの人が宣言しているのは、新しいチャレンジを頭ごなしにダメだと決めてかかる保守的な意見に対する問題提起だと思うのですが、残念ながらそれぞれの時点で、studygiftの疑惑は、そういう次元を超えた嘘や詐欺の存在を問うレベルに到達してしまっていたため、これらの賛同表明は炎上騒動を鎮火させる役割を果たせませんでした。
 そもそも、炎上騒動というのは炎上の根源が上述したような鎮火の努力をしない限り、部外者が横から口出しして鎮火したケースはほとんどありません。
 結果的には、家入さんと面識のあるメンバーがstudygiftを擁護しているという印象を批判者に与えてしまい、かえって擁護派と批判派の対立という構図を生み出してしまいます。
 対立構造になってしまった炎上騒動が長期化するのは、昨年のフジテレビ嫌韓騒動を思い出して頂ければ簡単にイメージできるはずです。
2011年のフジテレビ騒動 – Wikipedia
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 平行線の議論が始まってしまうと、双方どちらかのエネルギーが消えるまで火種はくすぶり続けます。
 通常の企業側のミスによる炎上や、ステマの炎上はこうなるケースはほとんどありませんが、政治的なもの、宗教的なものというのは、この平行線の対立構造の象徴と言えます。
 今回のstudygiftの炎上騒動では、社会起業やノマドブームに対する賛成派と批判派の戦いや、スタートアップのあり方に対する議論のようなものも重なって、いろんな人達の平行線の議論が始まってしまいました。
 こうなってしまうと、実は影響力のある山田さんや佐々木さんによる擁護記事は、単純にstudygiftがトラブっているらしいと言う事実だけをより多くの人に拡散する結果を生んでしまい、かえって炎上を拡散する結果になってしまっていたと感じています。
 当然、それぞれ家入さんをはじめとしたstudygiftのメンバーを少しでも勇気づけたくてフォローされていたんだと思いますから、実に悲しい結果と言えます。
 ただ、これらの擁護意見があることによって、studygiftのメンバーが、擁護してくれる人もいるんだから、批判者の意見は極端だ、と思ってしまい、批判に対して耳を貸さなくなってしまった可能性も否定できません。
 ひょっとしたら、studygiftのメンバーの心情を本当に心配するのであれば、やまもとさんがされていたように、問題点を冷静に指摘してあげることの方が、炎上の早期鎮火につながったかもしれないわけです。
 まぁ、こんなもの後出しジャンケンの結果論なので、あの炎上の渦中で自分がそういう判断ができるかというと、全く自信はないわけですが。
 さて、だらだらと長文で書いてきましたが、まとめると要するにこういうことです。
■1.自分達は良いことをしてるのに、悪意による批判がされてると誤解してしまった
 ↓
 批判者の批判は当然おさまらない
 ↓
■2.仕方なく最低限の釈明だけを行う形で、対応が後手にまわってしまった
 ↓
 釈明したはずなのに、批判者の批判が収まらず困惑
 ↓
■3.細かい釈明や謝罪をツイッターで展開したが、一部にしか伝わらない
 ↓
 細かく説明しているつもりなのに、批判者の批判が収まらずストレスがたまる
 ↓
■4.ストレスが溜まりに溜まって、勢いでツイッター上で失言
 ↓
 燃料を投下されて、批判者はますます収まらない
 ↓
■5.擁護者がでてきて、議論が紛糾
 ↓
 批判だけでなく応援してくれる人もいるので誤解が解消されない
 ↓
 1に戻る。
 善意の誤解に始まり、善意に支援されているという誤解につながる無限に続く炎上ループとでも言うべきでしょうか。
 
 通常の炎上騒動では、上述したトヨタやUCC、ユッケ騒動に見られるように、企業側に非がある構造であることが明確なため、どこかのポイントで失敗したために炎上が拡大しても、その後は謝罪するしかないことが明確になるため、明確な謝罪によって炎上のピークは終了します。
 ただ、今回のstudygiftにおいては、そもそもが「可哀想な学費を払えない学生を支援する」という善意からスタートしていて、その総論としての善意には賛同者の声も多かったため、いつまでたってもstudygift側が問題が手に負えないレベルになってしまっていることを認識できずに問題が長期化し、個人の人間関係や人格攻撃に展開する結果になってしまったのではないか、というのが外から見ていた私の感想です。
 多くの人がstudygiftに対してしている、サービスを始める前に法律をもっと調べるべきだったとか、嘘をつくべきではなかったという指摘はもちろん尤もなのですが、実はそこは今回の騒動が長期化した本質ではないと思います。
 まぁ、すべて横から見ていた私の想像による仮説でしかありませんので、間違っていたらごめんなさい。 
 ただ、一つ一つのパーツを見て頂ければ分かるように、それぞれの炎上要因って、ごくごく普通の良くある誤解とか勘違いから始まるんですよね。
 今回の騒動も壮大な陰謀論が一部で書かれていたようですが、学生の学費100万円のために大の大人が10人も集まって、そんな面倒なことしないでしょ?というのが率直な感想です。
 そもそも、別に今回のstudygiftの騒動で、支援を表明した人でサービス当初の説明不足の事実に本気で怒っている人はほとんどいませんでした。
 ほとんどの支援者は、坂口さん個人が可哀想と思ったから支援しようと思っただけではなく、studygiftのような活動自体を支援したいと思ったり、livertyのような活動に可能性を感じて支援を表明したわけで、説明を尽くしてスキームを組み直せば、喜んで再度また支援を表明してくれたのではないかと思います。
 冒頭に書いたように、炎上が見えてきた段階で、「最初は象徴的なキャラとして坂口さんで始めてみるのが面白いと思ったんですが、いろいろと問題があるのが分かったので、方式を変えます。支援金は全額返金しますが、もし返金が面倒であればしかるべき機関に寄付します」等の方針転換を明確にしていれば、UCCの炎上事例のようにその素早い対応に称賛の声が上がる結果になっていたかもしれないのです。
 これほどの話題になるサービスを数日で開発したlivertyの活動には可能性を感じますし、海賊スタイルというその柔軟な新しいワークスタイルをアピールするのであれば、実はサービス開発のスピードだけでなく、炎上後の素早いサービスの方針変更にこそ、その柔軟さを活かすことができたはずで。
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 「良いことをしているのに何故みんな批判するんだ」という思いに捕らわれてしまって、あれだけ多くの人が疑問の声を上げている状況で、方針変更に時間がかかってしまい、多くの人が傷つけあい、関係のない人まで巻き込まれて傷つく結果になってしまったのは本当に残念なことだと思います。
 今回の騒動からメンバーが立ち直るには時間がかかると思いますし、逆にしっかり時間をかけて何が問題だったのかを冷静に把握して欲しいと思いますが、今回の騒動の問題の本質を顔の見えない悪意の批判者たちのせいにしては絶対にダメだと思います。
 僕が好きな「こんな僕でも社長になれた」を書いた家入さんは、本当にインターネットを愛している人だと思いますし、インターネットが可能にしてくれた新しいワークスタイルや、クラウドファンディングなどの新しい可能性に今回泥を塗ってしまう結果になってしまったことを、きっと本気で悔しく思っていると信じています。
 きっと、studygiftの関係者の方々は、今は、僕のブログ記事も含めて、全てが敵に見えてしまって仕方がないタイミングなのではないかと思いますが、是非今回の騒動の本当の原因を正面から受け止めて、再度インターネットの可能性を証明してくれる取り組みを真剣に始めてくれるのを楽しみにお待ちしております。
 もちろん、他人事のように言ってるだけじゃなく、私自身も頑張ります・・・
※若干の二日酔いの中で推敲しましたので、誤字や間違いの指摘は大歓迎です。