ネットで毒を吐いている人たちにツイッターで反撃するのは、リスクばかりで、ほとんど何のメリットも無いという話。

 ブログに書くべきかどうか悩みましたが、ここ最近思うところがあるので敢えてメモしておきます。
 18日の深夜にNHK PRのアカウントで投稿された投稿が物議をかもしていたという記事がRBB TODAYに上がっていました。
「ネット弁慶は東北へ行ってボランティアしてきな」NHK広報Twitterのツイートが物議
 話題になっていた投稿はこちら。
 実際この投稿のリツイート数は5000を超えており、大量のコメントのやり取りがされているのも見て取れます。


 まぁ、正直、ぱっと見この発言がNHK_PRでなければ、普通にスルーされてそうな発言ですよね。
 この後、上記の発言に対する反響を踏まえ、NHK_PRさんが下記のように言い直されているのを見る限り


 おそらく、ツイッターか何かで東北について毒を吐いている人の発言を目にしたため、我慢できなくなって、上記の発言につながったということでしょう。
 最初の投稿も相当語尾の使い方等、苦慮した後が見られますし、悩んだ末に投稿されたと言うことだと思いますが、それでもこうやって話題になると、メディアにいかにも炎上したかのように取り上げられるのが、NHKという大組織のブランドをしょっている公式アカウントの大変なところだなぁと改めて思います。
 私自身はNHK_PRさんが先日出された「中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい?」という書籍に感動した人間でもありますし、そういう意味ではこの記事はNHK_PRさんへの応援メッセージになるわけですが。
 ただ、個人的にはやっぱり今回のような騒動を見ていると、ツイッター上で今回のように、ネット上で毒を吐いている人たちを批判したり反撃したりという行為には、改めて何のメリットも無いなぁと思うわけです。
 昨日の飲み会でたまたま、「ツイッターの有名人って、なんだか常に怒ってる人が多いイメージがありますけど、徳力さんって怒ってませんよね。」と言われて笑ってしまいましたが。
 正直なところを言うと、私の場合は怖くてネット上では怒れないというのが正直なところです。


 ツイッターというのはそもそも140文字制限という性質上、前後の文脈を見てない人に一カ所だけの発言が伝播するという性質を持っています。
 さらに難しいのは、今回のようなネガティブな要素がある発言も、その言葉を投げかけたい人以外にも等しく届いてしまうと言うこと。
 今回のNHK_PRさんの発言は、あくまで「東北についてのヘイトスピーチをまき散らしている人たち」に向けてのものなわけですが、メッセージはツイッターのフォロワーに等しく表示されるため、後半部分のネット弁慶やボランティア関連の発言を誤読して批判が戻ってきているケースも少なくないように見えます。
 電車の中で、ある人が隣の人に「お前はバカか」と怒りを込めて叫んだら、車内中の人たちが一気に不快な気分になるのと同様で、その言葉がたとえ特定の一部の人に向けられていたとしても、今回のように独り言として投稿されてしまうと、関係ない人たちにまで届いてしまうと言うのがツイッターのメリットでありデメリットでしょう。
 ブログで誰かを批判するようなことは書かない、というのは私のブログの師匠の一人であるネタフルのコグレさんや橋本大也さんが良くインタビューで書かれていたことですが、不特定多数に届く可能性があるメディアにおいて、批判を書き込むことの難しさは、文字数制限のあるツイッターにおいては、さらに増している印象があります。
 
 同様の騒動は、著名人がネットの匿名の批判書き込みに対して、「匿名は卑怯」と反撃した際に、関係ない匿名アカウントの人たちが一斉に攻撃してきたり、宗教的・政治的な発言をした際などに良く見られるわけですが、残念ながらたいていこの手の反撃は、対象となる匿名の批判者の人は既に毒を吐いて満足して去ってしまっているため、案外反論に気づかれないケースが置くあります。で、反撃のメッセージの毒の部分が関係ない人たちだけに届いてしまって、関係ない人を怒らせるというケースになりがち。
 ごくまれに、佐々木俊尚さんを罵倒した人が、佐々木俊尚さんの反撃にあって実名をさらされ謝罪する、みたいな反撃した側の勝利とみられる事例がありますが。
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 こんなの、佐々木俊尚さんが特殊なんであって、普通の人が真似できる技ではありません。
 普通の人は絶対に真似しちゃダメです。


 実際問題、ツイッター上で切った張ったの議論をしている人ってほとんどがフリーランスだったり、ベンチャーのワンマン社長だったりするわけで。
 私も正直そういう人を見ていて、かっこいいなぁとか、たまには自分もガチで切れて議論してみたいなとか思ったりすることも無くはありませんが。
 組織に所属している人が、ここまでガチで公開バトルをするなんて、どう考えてもリスクしかありません。
 
 そもそも、日本中の人が自分と同じ考えなんてことはありえません。
 ネット上で意見を表明するかぎり、全員が賛成してくれるなんてことはありえず、別の人が代わりに批判してくるだけです。
 
 そのあたりは以前にも「批判されるのが嫌なんだったら、ツイッターやブログはやめて、Facebookに閉じた方が良い、という話。」という記事を書いたことがあるように、ある程度批判というものは情報発信に伴うリターンのお釣りみたいなものと考える必要があると思っています。
 イケダハヤトさんが罵倒者を武装解除したいみたいな記事を書いていて、私も批判されている側として気持ちは分からなくはないんですが、まぁ残念ながら無理でしょう。
 有名になればなるほど賛同者は増えても批判も増えるでしょうし、私も皆がお互いにちゃんと分かり合えばもっと建設的な議論が増えると信じてやってますが、そうは言っても分かってくれる人が増える分、分かってくれない人も増えるでしょう。真剣に議論すればするほど、真剣な罵倒者も増える可能性が高くなります。
 そういう意味で、一部の人の暴言とか誹謗中傷が気になったからと言って、それに対してツイッター上で勘違いの生まれやすい140文字で反撃するというのは、つくづくメリットが無い行為だなぁと思うわけです。
 もし、それでも、どうしても誰かの発言が許せないのなら、せめて発言相手を特定して書くべきです。
 例えば
 「@tokuriki お前はバカか」
 「お前はバカか」
 という二つの発言はツイッター上においては全く違う性質を持ちます。
 前者は、明らかに @tokuriki に対して怒りを投げかけてますが。
 後者は、タイムライン上では、ツイッターユーザーは自分に対して言われているように見える可能性があるわけです。
 おまけにツイッターでは @で始まる発言は、自分のフォロワーの中でもそのアカウントをフォローしている人にしか表示されませんから、より少数にしか喧嘩していることは見えなくなります。
 でも、まぁ最終的には特定の人に言ってるとしても、やっぱり人前で喧嘩している事実には変わりないんですよね。
 ZOZOTOWNの前澤さんの炎上騒動も、非公式RTで自らのフォロワー全員に対して自らが切れている姿を見せつけるという形になってしまって発生してしまいましたし、やはり一般的には組織に所属している人間は、人前で切れないこと、失言をしないことが求められている空気があることを、必要以上に意識する必要があるんだろうなと思います。
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 まぁ、そんなことはNHK_PRさんは百も承知で投稿したんでしょうから、覚悟の上の発言だったと思いますし。
 正直、上記で紹介した佐々木俊尚さんの騒動とかに比べると、NHK_PRさんの発言は冷静に読めばたいして問題の無い発言に読めますし。
 普段からネット上で毒を吐いている人たちが同じことを書いても、今回のような記事には絶対にならなかったと思うと、優等生的発言をするべきと思い込まれている企業アカウントや上場企業の社長アカウントは、こういう時本当に難しいなぁと思います。
 ということで、引き続きNHK_PRさんが今回の騒動ごときにぶれずに、良い話題を振りまくためのチャレンジを続けてくれることを祈って、この記事を捧げます。