有料メルマガと、無料のブログやソーシャルメディアの情報発信は、根本的に必要な才能が違うんじゃなかろうか

 ここしばらく、有料メルマガのブームが終わったというブログ記事を目にすることが多いので、昔から一度まとめようと思っていた自分の考えを書いておこうと思います。
 主な論点は下記の記事にまとまっているので、そちらを見ていただくとして。
「休刊・廃刊メルマガ特集」を自分で紹介する:渡辺文重の有料メルマガ批評
2014年メルマガ「ブーム衰退」を振り返る – 乱れなよ、そして召されなよ
 象徴的な出来事としてわかりやすいのは、グリーの有料メルマガサービスMagarlyが1年で終了した点でしょうか。
グリーの有料メルマガ「Magalry」終了 開始から1年余り
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 まぁ、この辺は本業のソーシャルゲームの動向との兼ね合いもあると思うので、一概に連動した出来事とはいえないかもしれませんが。
 何となく2012年頃のブームを考えると、一時期のセカンドライフほどではないものの、ピークと実態の乖離が非常に幅のある結果になってしまった印象はあります。
 有料メルマガ自体は、そもそもインターネットの黎明期から存在するビジネスモデルで、目新しいものではありません。
 それが2012年の頃にブーム的に注目されたのは、津田さんや堀江さん、やまもといちろうさんなどネット系の著名人による有料メルマガの成功事例が明確に見えてきたからだったと記憶しています。
 特に津田さんは、ツイッターのフォロワーが日本トップクラスで注目されていたものの、ブログのGoogle Adsenseのような書き手への収益還元の仕組みがツイッターには存在せず、「ツイッターだけで生きていければ良いのに」と飲み会かどこかでこぼしていたのをぼんやりと覚えています。
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 それが2010年から2011年頃の有料メルマガの進化により、ツイッターのフォロワーが多い人が収益を得る仕組みができたという成功事例が出てきたわけで、これはこれで非常に画期的な出来事だったと思います。
 従来の有料メルマガは主に株の投資情報とかぐらいしか機能していなかったと聞いていますが、ネットの知名度が換金できる可能性が見えてきたことにより、2012年頃に一気に多様な有料メルマガが増えたように記憶しています。
 AMNにも、有名ブログを運営されているパートナーブロガーの方が多数いますから、なぜ有料メルマガ事業に展開しないのかという質問を複数の方にされた記憶がありますが、当時個人的に感じていたのは、タイトルに書いたように「有料メルマガと、無料のブログやソーシャルメディアの情報発信は、根本的に必要な才能が違うんじゃなかろうか」ということでした。
 しのさんが書かれているように津田さんや堀江さん、やまもとさんなどの成功事例においては、三人がネット有名人の中でも群を抜いてファンが多い人であるという事実に加え、「無料情報や他メディアへの露出がある中で有料メルマガの役割がきちんと存在する」というのは非常に大きいと思うんですよね。
 逆に言うと、有料メルマガの役割を設定して、それを運営するスキルを持っているということでもあります。
 いわゆる仕事でライター業をするのに対し、ブログの良いところって、自分の好きなときに好きなことを自由にかけることだと、メディア関係者の方々がよく話されていたのを記憶していますが。
 有料メルマガって、実はこのブログの良さの対極にあるんですよね。
 お金を払ってもらっている以上、通常の雑誌や新聞などの有料メディア同様、
・約束したサイクルで配信しなければならない
・読者の期待を上回る(せめて下回らない)内容を維持しなければならない
・他の無料・有料の様々なメディアと異なる価値を生まなければならない
 という様々な義務を負うわけです。
 さらに有料メルマガという形態上、情報がクローズ前提になるというのも、基本的に情報がオープンになるブログと異なる大きな違いです。
 ブログを長く続けている人なら誰しも自分のブログが予想もしない人に読まれて、予想もしない出会いを生んだという経験を大なり小なり持たれていると思うんですが、有料メルマガって、多数のハードルを越えてお金を払ってくれる人なのでどうしても蛸壺的な狭い相手しか読んでもらえなくなってしまうんですよね。
 当然、金融情報みたいにクローズドだからこそ価値があって、そういうクローズドなコミュニケーションを好む人も世の中にはたくさんいるとは思うんですが。
 ブログのオープンなコミュニケーションが好きな人にとっては、実は限られた読者に対して情報を配信し続けるというのは、苦行に感じられる行為じゃないのかなと思ったりして。
 そういう意味では自由人の象徴のような家入さんの有料メルマガが未配騒動になってしまうのは象徴的な出来事だったと思うわけです。
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 ツイッターのフォロワーが10万人の人が有料メルマガで1000人集められるなら、フォロワーが5000人いる自分は50人は集められるだろうとか、月間100万PVのブログを書いてる人が有料メルマガで1000人集められるなら、月間10万PVの自分は100人は集められるだろうとか、つい単純に考えてしまいがちなわけですが。
 有料メルマガを続けるとか、有料メルマガの読者を満足させるとか考えると、それ以外の様々な要素が存在するわけで、実はそれはおもしろいブログを書くとか、ツイッターの投稿が面白いという要素よりも、有料メルマガの成功において重要なのではないかなと思ったりします。
 そういう意味では、今回のネット有名人メルマガブームは、これで収束を迎えるんだと思いますが。
 次のサイクルの有料メルマガブームの主役になるべきは、アメブロの人気ランキング上位の芸能人、とか、ツイッターのフォロワーが単純に多い人、とかではなく、継続的に価値のあるコンテンツを生み出すことができる人、になるべきなんじゃないかなと思ったりするわけです。
 で、たぶんそういう成功事例は、一つのメルマガに大量の読者がついて荒稼ぎ、とかじゃなくて、特定の専門分野の濃い情報を本当にその情報を必要としている人たちに対して少人数ながらも配信してくれる人、とかになると良いんじゃないかなぁと、そういう人たちの支援に注力する有料メルマガサービスの運営事業者さんが出てくると面白いんじゃないかなぁと妄想していたりする今日この頃です。