邦題の「みんなの意見は案外正しい」というタイトルだとぴんと来ない人も多いかもしれませんが。
原題はThe Wisdom of Crowds(ウィズダム オブ クラウド)。ウェブ進化論でも話題になった群衆の英知というキーワードのもととなった書籍です。
(実は2004年に出版されていて、直後にHYamaguchiさんがレビューして話題になっていたりするんですが、翻訳されるのに2年近くかかっているんですね。)
本書でも書かれているように、これまでの一般的な常識というのは「群衆」「大衆」というのは比較的あまり良いイメージでは使われません。極端に言うと、烏合の衆とか愚民とかいったキーワードにみられるように、大衆は能力のある個人には劣ると考えられがちです。
ところがこの本では、多様な集団や群集が到達する結論は、「一人の個人よりつねに知的に優る」という一見これまでの常識に逆行する説を提示しています。
ウェブ進化論においても、最後に梅田さんがあちら側とこちら側という考え方と組み合わせるもう一つの軸として提示していたのが不特定多数無限大を信じるかどうかというポイント。
この部分をどちらとして物事を考えるかというのは、結構大きな違いを生んでくるような感じがします。
本書では、群衆が個人よりも賢くなるケース、賢くならないケースについて具体的な事例を並べて解説してくれており、Wisdom of Crowdsがいまいち分からないという人にお勧めです。
ちなみに、個人的に気になったのは中盤に出てくる「マタイ効果」の話。
「有名な科学者の研究はさほど有名でない科学者の研究に比べて、膨大な数の引用がなされる。」という科学者の論文における「名声のパワー」の事例を紹介しているのですが、最近のブログ界も同じことが起こっている気がして、この認知と質のアンバランスの問題を技術によって解消することができるのかどうかが気になるところです。