P2P で何が変わるのか:P2P コラボレーションツール――その1

これまで P2P の具体的なアプリケーションを4つ紹介してきました。各アプリケーションのはっきりしたイメージがつかめたでしょうか。

最後に紹介する P2P コラボレーションツールは、これまでの4つとは少し趣が異なります。


これまでの4つが、 P2P の技術的な特徴の一部分を生かしたアプリケーションとするならば、 P2P コラボレーションツールは、それらの特徴を組み合わせたアプリケーションと言えます。

どちらかというと技術ではなく、利用目的から考えたアプリケーションと言えるでしょう。つまり、インスタントメッセージの要素やファイル共有の要素などを組み合わせて、コラボレーションという用途に特化したアプリケーションなのです。

そういう意味では、これまでの4つのアプリケーションに比べると、 P2P コラボレーションという概念は比較的新しいものです。利用目的がわかりにくいなら、グループウェアをイメージしてみてください。グループウェアは集団での共同作業を効率化・最適化するソフトウェアです。

グループウェアにはサーバーがつきものですから、ここではあえて P2P コラボレーションツールと呼んでいますが、簡単に言うと、新しいグループウェアのひとつです。実際、P2P コラボレーションツールを開発している企業は、サーバー型のグループウェアを開発している企業と関係があります。

P2P コラボレーションツールの代表的なものとしては、米国の Groove があげられます。この Groove を立ち上げた Ray Ozzie 氏は、グループウェアの代名詞ともいえるロータスノーツを生み出した人物です。また、日本発の P2P コラボレーションツールを開発しているアリエル・ネットワークの創立メンバーも、多数のロータス出身者で占められます。

ただ、グループウェア市場はすでにある程度、ロータスやマイクロソフト、サイボウズのような企業によって成熟してしまっています。実際、大企業のグループウェア導入率は9割を超えているとも推測され、市場も過去のような急成長は望めないと言われています。

そのような市場に、なぜ今 Groove やアリエル・ネットワークのような新興企業が参入しているのでしょうか?

それは、P2P コラボレーションツールが、これまでのグループウェアになかった新しい特徴を持っているからです。(次回に続く)