P2P とビジネスの関係:リアルタイムコミュニケーション?

「情報を個人に取り戻す」ことによって得られるメリットは、モバイル性の向上だけではありません。自分を中心に情報をやり取りするということは、情報を直接相手とやり取りできることを意味します。


■電子メールは「郵便」

電子メールは現実の世界でいう郵便のようなものだと、 一番最初のコラムで書きました。もちろん、伝達速度が圧倒的に違いますからピンと来ないかもしれませんが、電子メールは最終的にはサーバーにあるあなたのメールボックスにメールが届くだけです。

パソコンがサーバーを定期的に見に行くような設定にしておけば意識する必要はありませんが、それでもメールを送付した人は、自分の電子メールが相手のメールボックスに届いただろうということは分かっても、相手がそのメールを読んだかどうか、いつ読んだかということは分からないわけです。

そのため、急ぎの連絡を電子メールで送った場合、返事がくるまで相手が読んだかどうかは分からないので、結局、心配になって電話する……というのは、実は良くある話ですよね。

■P2P 型アプリは「電話」や「会議室」

サーバー型の電子メールが「郵便」だとすると、 P2P 型のアプリケーションは「電話」に例えればいいでしょうか。それも個人ごとに番号が決まっている携帯電話みたいなもので、直接相手とメッセージをやり取りすることができます。 

例えばインスタントメッセンジャーでは、送ったメッセージが相手に読まれたかどうか、すぐに知ることができます。相手がいなければ当然送ることはできませんが、相手と直接やりとりできるので、ビジネスの世界におけるコミュニケーションをより迅速に行うことができ、非常にメリットがあると言われています。

また、技術の進歩により現在ではインターネットを経由して、 VoIP のような電話だけでなく、テレビ会議、ホワイトボードや資料の共有を実現することも可能です。相手と同じ情報をパソコン上で共有することにより、具体的にその資料の同じページを見ながら話ができるのです。

これは「電話」どころか、実際の「会議室」に近い世界だといえます。つまり、これらの手段は P2P 型の直接相手と情報をやり取りするという特徴を生かすことで、より「リアルタイム」なコミュニケーションを可能にしているのです。

■これからどうなるの?

現在のインターネットは、電子メールが最も基本的なアプリケーションであることは間違いありません。もちろん、今後インスタントメッセンジャーやテレビ会議システムが電子メールに完全に取って代わることもほとんどありえないでしょう。

ただ、郵便が中心の時代には、電話がビジネスのコミュニケーション手段の中心になることは誰も想像できませんでした。電子メールが登場した当時も、多くの人が電子メールは雑談や私用の会話を増やしてしまうと非難したものです。

どこか、現在のインスタントメッセンジャーの議論に似ていますよね。そう考えると、これらの新しい P2P 型のアプリケーションが新たなビジネスのコミュニケーションを担うのかどうか、それが分かるのも時間の問題なのかもしれません。