P2P とビジネスの関係:真のモバイル?

前回のコラムで「情報を個人に取り戻す」という話をしましたが、それがもっとも端的に現れるのがモバイルにおいてです。

近年「モバイル」という言葉を使う機会が増えましたが、皆さんはどういうイメージを抱いてこの言葉を使っていますか?


欧米では単に携帯電話を指す場合もありますが、日本では一般的にはモバイルコンピューティングを指す場合が多いですね。そのモバイルコンピューティングと言うのも、出先や出張先で携帯電話や PHS を利用してネットワークに接続する場合が多いようです。最近は定額制の PHS も普及し、日本国内においてもかなりの数のモバイラーがいるとも言われています。

ところが、そもそも「モバイル」という英語は「可動性の」とか「固定されていない」という意味です。そういう意味では、基本的には、パソコンや PDA を持ち運んでいればすでにモバイルコンピューティングの実践者と言えるのです。

ただ、ここで中央集権型と P2P 型におけるモバイルの違いが出てきます。

中央集権型のシステムにおいては、クライアントであるパソコンには何の情報も保有されていません。そのため、パソコンをモバイルで持ち運んだとしても、データや情報自体は一緒に移動していないことになります。使うたびに回線を接続して、ホストコンピュータやサーバーに接続して「表示」する、という形でモバイルを実践することになります。当然回線がつながらないと、いくらモバイルとは言っても何の役にもたたないですね。 反対に P2P 型のシステムにおいては、情報は個人のパソコンに保管されています。そのため、回線がつながろうとつながなかろうと、パソコンさえ持ち運んでいれば自分の情報はいつでも利用できます。そういう意味で、P2P 型の技術を利用すれば「真の」モバイルが実現できるようになると考えられるのです。

 ちなみに、読者の皆さんの中には「別に PIM(個人情報管理)ソフトを使えば、どこでも情報は見られるよ」と言う方もいらっしゃるでしょうね。そういう意味では、P2P 型のソフトは PIM ソフトと非常に似ています。「個人情報」が自分のパソコンに存在するからです。ただ、PIM ソフトはそれがあくまで一つの P である個人(Personal)で閉じてしまいますが、 P2P 型の場合は、ネットワークに接続すると他の人と情報を共有できるようになります。 PIM ソフトをお互いに見せているイメージです。

そういう意味では中央集権型のモバイルは、会社のホワイトボードに書いた行き先掲示板を望遠鏡でのぞいているイメージで、 P2P 型のモバイルは、自分の手帳を常に持ち歩いているイメージ、といったところでしょうか。

どちらのモバイルが適切かは業務形態によって異なると思いますが、将来的には少なくともこれまでと異なるモバイルが生まれてくると考えられています。

皆さんが「モバイル」に望むものはどのような未来でしょうか?