2004/07/28にjapan.internet.comに掲載されたコラムです。
(前回のコラムの続き)
■P2P 技術による動画コンテンツ配信の可能性
日本国内における動画コンテンツ配信はまだまだ黎明期にありますが、 Kontiki はすでに米国で P2P 技術による動画コンテンツ配信を市場として確立しつつあります。
Kontiki が現在 Web サイト上で利用事例として公開しているパターンは、大きく3つに分かれます。
1:コーポレートコミュニケーション
全世界に10万人を超える従業員を抱える Ernst&Young では、従業員に対する動画コミュニケーション手段として、 Kontiki のサービスを利用しています。
導入の背景には、一連の不正会計疑惑による業界のイメージ悪化を払拭するために、社員教育を強化する狙いがあったとも言われていますが、 140か国を越える拠点にあわせた手段で動画配信ができる Kontiki の効果は大きかったようです。
また、Adobe では新製品に関する動画コンテンツを顧客向けに配布し、効果をあげています。
2:トレーニングとエデュケーション
いわゆる、社内教育分野でeラーニングとも位置付けられる分野になります。 NEXTEL や autodesk などの企業が、社員の教育用動画コンテンツを Kontiki を利用して配信しています。紙を読んだだけでは理解しづらい製品において、動画コンテンツの効果は大きく、低コストで営業の効率性が改善できるといわれています。
3:カスタマーケア&サポート
エンドユーザーにコンテンツを配信するという意味では、通常言われるコンテンツ配信に最も近い形ですが、現在はサポート目的の利用が多いようです。
例えば Palm では、端末の操作方法の動画コンテンツの配信に Kontiki を利用しています。 PDA のような端末のサポートは、電話ではお互い混乱してなかなかうまくくいかないと言われています。そこを動画コンテンツで「見る」FAQ を配信することで、サポート電話自体を40%削減する効果があったということです。
これらの利用事例におけるメリットは、もちろん P2P 型の動画配信に限ったことではありません。
ただ、Kontiki が、これらの動画配信によるソリューションを低コストで提供できるため、動画の新しい使い方が広がっているのは間違いないでしょう。
■Kontiki は今後どのような展開をしていくのか
Kontiki は、現在ビジネスでの動画コンテンツ配信に特化する形で、その勢力を拡大しています。
現時点で Kontiki を利用したユーザーは1200万人を超えている、とも言われていますし、 2003年度は売上高の伸びが前年度比で10倍を超えたと発表しています。
Web サイトや販促資料でもビジネス向けというのを明確に記載しており、映画やテレビドラマのようなコンシューマー向けの動画コンテンツ配信市場については、今のところ静観する構えのようです。
その原因はやはり日本と同様、コンテンツの著作権に関する法律や制度の整備がまだ完成していないことも大きいでしょう。
ただ、動画コンテンツ配信の仕組みや技術としては完成しているため、コンテンツ事業者次第では、サービスを開始する可能性もあるのではないかという憶測も流れています。
実際、Kontiki のクライアントである CNET は、ソフトウェアや動画デモの配信インフラとして Kontiki を利用しており、今後その利用範囲が拡大することも十分考えられます。
動画コンテンツの主流が、ストリーミング配信からダウンロード配信に移りつつあることも、 P2P 技術を使う仕組みにとっては追い風になりえるでしょう。
もちろん最大の壁は、コンテンツを保有しているコンテンツ事業者がデジタルでコンテンツを配信することに魅力を感じるかどうかにあるため、今後どうなるかはまだまったく分かりません。
ただ、少なくとも Kontiki のような P2P 技術によるコンテンツ配信の仕組みが、一つの選択肢として、今後ますます注目されるのは間違いなさそうです。
Kontiki は現在英語でのサービスしか行っていませんが、サンプル動画は誰でも簡単に見ることができます。ぜひ体験してみてください。