P2P とビジネスの関係:企業の壁が無くなる日(1)

前回のコラムでは、クロスファンクショナルチームに代表される、企業の内部での組織の壁を超えたビジネススタイルについて紹介しましたが、今回はもう一段視点を外に広げてみましょう。


あなたの仕事は、企業の内部に閉じているでしょうか? それとも、社外の人と協働する場合が多いでしょうか? 企業の組織にとらわれない情報共有を実現できる P2P の技術を活用すれば、組織だけでなく企業の壁すら意識する必要がなくなります。

これこそが P2P 型の情報共有の真骨頂とも言える世界です。

■ソニーから工場が無くなる?

2000年10月、ソニーは自社で保有する2つの工場を Solectron という米国の企業に売却し、世界を驚かせました。この売却は、いわゆる工場を閉鎖して売却するというネガティブな売却ではなく、工場を売却して生産部分をアウトソーシングすることで、自社の経営資源はコアとなる研究開発や商品企画に注力させるという新たな形の売却です。

ソニーとしては、経営資源の集中はもちろん、工場内に陳腐化した設備を保有するというリスクを回避することができ、ソレクトロンとしては、受託に特化することでスケールメリットによるコストダウンなどのメリットを狙えるという、Win-Win を目指した売却でした。

また、生産財のカタログ通販を行っているミスミは、アウトソーシングで非常に有名です。

ミスミが自社で担っているのは、商品の企画と顧客にとっての購買の代理店という機能だけです。 製品の製造どころか、総務経理業務などの管理業務や、情報システムの管理・運用、受発注や物流のサービスに至るまで、ほとんどの業務をアウトソーシングしていることで知られています。

このような自社の経営資源をコアビジネスに集中させ、それ以外の部分は他社に任せるというスタンスは、ビジネスの変化の速度が急激になっているここ数年、さらに顕著になっています。いわゆる垂直統合から水平分業への産業構造の変化です。

■垂直統合から水平分業へ

一般的にこれまでの日本企業は、自社の業務に関わる全ての業務を自社の社員やグループ会社の社員で実施する、というスタイルを取ってきました。

特に大企業においてはコアビジネスの周辺領域はおろか、社員食堂の運営や社宅、福利厚生施設の管理、社員の海外出張の手配に至るまで、グループ会社を作って自社グループで完結させるという企業も少なくありませんでした。

このように自社ですべてを担うというスタイルは、自社ですべてをコントロールできる上に、自社の事業周辺で発生する事業機会を自社グループで吸収できるという点では、意味がありました。

しかし、変化が速い現在では、高コストの温床になってしまうということが指摘され、各企業とも急速に改革を進めてきています。

例えば企業システムの構築などが良い例です。一昔前に企業システムを構築する際には、中心となるホストコンピュータからダム端末、ネットワーク機器に至るまで1つの企業から購入することができました。

これが現在では、サーバー、パソコン、ルータ、中で動くソフトウェア、そしてそれをまとめて構築するシステムベンダーと、複数の企業が協働でシステムを構築するのが当然となっています。

あなたの業務も振り返ってみてみてください。社内の人とだけやりとりしていれば仕事は終わるでしょうか? 

次回のコラムまでに是非一度振り返ってみてください。(次回に続く)