前回のコラムの最後の宿題は考えていただけましたでしょうか? それでは続きです。
■企業機密と情報共有
前回紹介した水平分業のコラボレーションが行われる際に問題となるのが、実は情報共有のあり方です。
協業している部分では当然情報を共有しなければなりませんが、それ以外のそれぞれの企業に属する情報を相手に見せるわけにはいきません。
サーバー型の情報共有システムの場合、サーバーに接続できるようにしてしまうと、通常、その中味が相手にすべて見えてしまいます。
システム構築プロジェクトの会議のために、自分の予定表を相手に見せようものなら、別の顧客の訪問予定まですべて見られてしまいます。
簡単な例えで言い換えると、ビルの入り口に鍵をかけてガードマンを立たせている状態です。入り口を入るのは大変ですが、入ればそのあとは自由です。
もちろん、それぞれの部屋にさらに鍵をかけることはできますが、ビルに入れてしまうと、その部屋に侵入される危険も増すことになるため、一般的にはなかなかビルであるサーバーへの接続許可を出すことが難しいのが実状です。
さらに物理的なネットワーク接続の問題や、サーバー費用をどちらが負担するかという別の問題も発生します。当然、短期のプロジェクトで大規模なシステムを構築するわけにも行きません。 そのため、サーバー型のシステムでは、企業をまたいだ情報共有は非常に実現が難しい、というのが一般的な事実でした。
結果的に、これだけ IT 化が進んだ現在でも、企業をまたいだコラボレーションを行う場合には、実際の情報共有は紙やメールだけで行われているケースがほとんどなのです。
■情報共有をしたい相手と情報共有
P2P 型システムの場合、自分の持っている情報を相手に見せるかどうかを選択するのは、サーバーではなく自分のパソコンになるため、企業を超えた情報共有を行うのが非常に容易です。
先ほどサーバー型のシステムでは、ビルの入り口に鍵をかけている例で説明しましたが、同じ例でいうと、 P2P 型のシステムはお互いに写真付の身分証明書を胸につけている状態です。
お互いが誰かはその身分証を見れば確認できますから、それをもとに相手に情報を見せるという、より現実社会に近い情報のやり取りを行うことができるのです。
そのため、企業の壁をまたいで、情報共有をしたい相手との情報共有を安全に行うことができるのです。 (セキュリティの仕組みについては、また別の機会に詳しく説明したいと思います)
P2P 型システムは、このような情報共有のセキュリティ確保のコンセプトと、以前に「組織の壁を超える」のコラムでご紹介したような、柔軟に情報共有の単位を構成することができるという特徴を持っているため、企業の壁を超えた情報共有にも簡単にソフトウェアだけで対応することができるわけです。
これまでのサーバー型システムでは、社外の人と情報共有をするのが難しかったため、社外と情報共有できずに思考停止に陥っている場合が多いようです。
もう一度、あなたの情報共有をしている相手を冷静に考えてみてください。
頻繁に、社外の人とメールでやりとりをしていませんか? 社外の人との会議の日程調整のために、メールが何往復もしていませんか? 必要なファイルを社外の人に CD-R や FD で渡していませんか?
実は P2P 型システムを使えば、社内で行っている情報共有と同じ仕組みを、社外の人とも構築できるのです。
本当にあなたが情報共有をするべき相手は、実は社内ではなく社外にいるかもしれません。