2004/10/27にjapan.internet.comに掲載されたコラムです。
(前回のコラムからの続き)
■米国と日本で異なるアプローチ
前々回のコラムで紹介した Mercora のアプローチは、悪い言い方をすると、技術を効果的に利用することで法律のギャップをすり抜ける、というようなものでした。
それに対してレコミュニのアプローチは、現在の法律や音楽ビジネスの現状に、ビジネスモデルを合わせる形を取っていいます。(実際、レコミュニは「P2P のよさを活かす」と表明していますが、ここで指している P2P はコンセプトであり、 P2P 技術を利用しているわけではありません)。
米国で大ヒットを呼んだ iTunes が、未だに日本でサービスを開始できない状況を見ても分かるように、日本におけるコンテンツビジネスは著作権関連の処理が非常に難しいといわれています。
そうやって有料モデルが足踏みをする中、不正ファイル交換の利用者が増えてしまっているのは実に残念なことです。
そんな中、レコミュニは JASRAC および e-License とインタラクティブ配信基本契約を締結し、現状の著作権管理の仕組みを正面から捉えて対応しています。
今回のレコミュニの試みは、その停滞する日本の音楽配信事業に一石を投じたという意味で、非常に注目されるサービスといえるでしょう。
レコミュニの Web サイトにフェローとして並んでいるメンバーの肩書きを見ても、この取り組みが音楽に携わる人々の意見を反映して作られたものであることが分かります。
■他の大手音楽配信事業者に勝てるのか?
「ファイル交換ソフトを使えば無料で手に入るのだから、有料のビジネスがうまくいくはずがない」というのが、これまでのコンテンツビジネスの一般論でした。
しかし、米国で有料の iTunes がある程度の成功を収めたことにより、無料での入手手段が存在しても、料金を支払ってコンテンツを買う顧客がある程度はいることが証明されました。
当面レコミュニにとっての課題は、そのような有料でデジタル音楽を購入する顧客層を早期に獲得できるか、という点になるでしょう。
そういう意味では、招待制によるメンバー獲得がいかに効率よくまわるかが大きな鍵になりそうです。
また、事業が軌道に乗った後には、当然 iTunes のような大手音楽配信事業者との競争が発生してくるでしょう。
その過程で、特にレコミュニ独自の仕組みとして注目されるのが、レコミュニが「P2P のよさ」と表現している、ユーザー同士のコミュニケーション機能です。
実際、音楽を知るルートにおいて口コミは非常に有効な手段となるはずです。
もし、レコミュニが理想としている音楽を軸としたコミュニティを構築することができれば、おそらく、通常の音楽がただ並べてあるだけのスーパーマーケット型の音楽配信事業者とは、一線を画した事業展開が可能になると考えられます。
オンライン書店の Amazon が、独自のアフィリエイトシステムによって大きな成功を収めているのは有名な話ですが、レコミュニも音楽配信において同様の成功モデルとなる可能性があるかもしれません。
口コミでメンバー同士が音楽を推薦しあう健全なコミュニティを形成できるかどうかが、 iTunes のようなスーパーマーケット型の音楽配信事業者が参入した後に、レコミュニが生き残れるかどうかに大きく影響することになると思われます。
レコミュニは、10月19日にサービス開始しました。
招待制のため誰でも参加できないのがもどかしいところかもしれませんが、ぜひ入っている人を探して招待してもらいましょう。