P2P というと、一般的に PC 同士が直接接続してデータ交換を実施することをさします。
さらに一般的に P2P の代表格とされる不正ファイル交換ソフトが、サーバーをなくすことによって匿名性を保持する方向に向かっているため、 P2P においてはサーバーは存在しないと考えておられる方も多いようです。
ただ、これも実際には極端な例による誤解のひとつです。具体的な事例から考えて見ましょう。
■ハイブリッド型とピュア型
P2P をよく知っている人の間では、よく「ハイブリッド型 P2P」と「ピュア型 P2P」という会話になることがあります。「ハイブリッド型 P2P」ではクライアント/サーバー的に一部機能をサーバー部分で担っている形になりますが、「ピュア型 P2P」ではそのようなサーバー的な中心機能がないパターンを指します。
P2P と呼ぶからには、当然ピアである端末側でデータを交換するという分散型の形には変わりないのですが、ハイブリッド型においては、最初の接続先やデータ保持者の検索などの中心的な役割をサーバー部分が担います。
それに比較してピュア型においては、検索もデータ交換もすべて中心がない形の、網の目上のネットワークで実施されます。そのため、一般的にはピュア型のほうが技術的にも難しい仕組みだと考えられています。
人によっては、ハイブリッド型の P2P はクライアント/サーバー型だと捉える人もいるうえに、最近は Winny のような不正ファイル交換ソフトがピュア型を指向しているため、 P2P=ピュア型 P2P と捉える人が多いようです。
■ハイブリッド型だった Napster
しかし、実は P2P が注目されるきっかけとなった Napster は、ハイブリッド型 P2P です。
Napster では、どの音楽ファイルを誰が保有しているかという、電話帳のようなインデックス情報をサーバー側で保有していており、実際の音楽ファイルについては保有している相手から直接入手する形になります。
実際にはこの部分が違法行為の仲介部分と見られ、 Napster はサービス停止まで追い込まれることになります。
そのため、その後の不正ファイル交換ソフトは一様に仲介部分を排除する形に進化し、ソフトウェアの運営母体の責任を問えない形になってしまいました。
特に Winny のような最近主流になっている不正ファイル交換ソフトは仲介部分となるサーバーがないうえに、匿名性も非常に高いため、不正行為を発見するのは不可能だとも言われていました(実際には逮捕者が出ていますから、不可能ではないようですが)。
今後もこれらの不正ファイル交換が目的のソフトウェアは、更にサーバー的な仕組みを排除し、匿名のクライアントだけですべてが実施できる方向に進化していくでしょう。
このこと自体は過去の著作権や匿名性のコラムに書いたとおりです。
Napster がハイブリッド型でサービス停止に追い込まれ、その後の新たな不正ファイル交換ソフトがピュア型の仕組みで生き残りに成功しているため、いかにも P2P 型システムはピュア型が最適であるように思われる人も多いようです。
しかし、「適法なサービス」という観点に立つと、サーバーの仕組みを持っていることには意味があります。 (次回コラムに続く)