P2P の誤解:分散性とサーバー不要論(2)

(前回のコラムの続き)


■サーバーで実施したほうが効率のよい機能

例えば、音楽ファイルや映像ファイルの配信ビジネスを語る際に避けて通ることができないのが、著作権管理やそれと連動する支払・決裁などのシステムです。

これらの仕組みをすべてピュア型 P2P でやろうとしても、実はあまり意味がありません。実際にはそれらの処理は小さなデータのやり取りで済んでしまいますから、著作権管理・決裁はサーバー型の仕組みで行い、実際のデータ自体を P2P 型で実施することにより、確実な著作権管理と P2P 型ならではの効率的で低コストな配信システムを両立させることができます。

サーバーが存在することは、著作権の管理がまったく行われていなかった Napster では裏目に出てしまいました。

しかし、著作権の管理を適切に実施さえすれば、ハイブリッド型の仕組みのほうが、 P2P のメリットとサーバー型のメリットを生かした形のシステムを組むことができます。

また、前回のコラムでも触れた、各メンバーを証明する仕組みを実施するためにも、中央管理の仕組みは不可欠です。

証明書を各メンバーが自由に発行できてしまえば、その証明書の信頼性はないに等しくなりますから、免許証で言う警察署のような証明書の正当性を管理する仕組みは、サーバー型のほうが効率的であると考えられます。

つまり、状況に応じて分散型と中央集中型と使い分けることにより、真の意味で P2P 型のメリットを引き出すことができるのです。

■現在のクライアント/サーバーはホストコンピュータ?

そもそも、クライアント/サーバーという言葉は、 PC がお客さま(クライアント)で、サーバーはお客様を助ける(Serve)というのが語源になります。

90年代に脚光を浴びることになったクライアント/サーバー型のシステムは、当時主流であったホストコンピュータに変わるものとして注目された仕組みでした。そういう意味では、それまですべての処理をホストコンピュータで実施していた中央集中型のシステムに対し、クライアント側で実施できる部分はクライアント側で実施しようという、分散型の考え方にあたるのです。

逆に言うと、現在の Web サーバーのようなクライアント/サーバー型システムは、 PC ではブラウザが動作しているだけで、裏側の仕組みはほとんどがサーバー側で動いていますから、かなりホストコンピュータに近い動作であると言うこともできます。クライアント側にデータを持っていない場合がほとんどで、サーバーが落ちてしまえばクライアントは何もできないわけです。

そういう意味では、現在のクライアント/サーバー型のシステムよりも、ハイブリッド型の P2P のほうが、実はもともとのクライアント/サーバーのコンセプトに近いと言ってもいいかもしれません。

結局のところ、中央集中型と分散型のシステムにおいて、どちらかが完全に勝っているということはありえません。システムに応じて、最適なシステムの形というのが存在するだけです。

ホストコンピュータとクライアント/サーバー、シンクライアントとリッチクライアントの議論でいまだに結論が出ていないように、中央集中型と分散型の議論は今後も続いていくのかもしれません。