競合事業者への転職を本当に契約で阻止できるのだろうか?

マイクロソフト、グーグルを提訴–主要研究者の引き抜きをめぐって – CNET Japanを読んで。

 マイクロソフトがGoogleに転職した元幹部を訴えたそうですね。

 先日、マイクロソフトの広報ブログ責任者がスカイプに移ったニュースを紹介しましたが、「ここ数カ月の間にも複数の著名なMicrosoft社員がGoogleに移っている」そうで、どうもマイクロソフトはすっかり草刈場になってしまっているみたいですね。

 マイクロソフトも堪忍袋の尾が切れたのか、今回はGoogleと元幹部を競合禁止制限事項の違反にあたると訴えているようです。

 なんでも、根拠となっているのは、その元幹部の方がマイクロソフトに入社するときに交わした契約書。
 非競争事項と呼ばれる機密情報を入手できる立場にある社員を直接競合する事業者に転職しないように約束した項目がポイントになるようです。

 そういえばこの手の契約って良く聞きますが、実際に訴訟でどの程度防げるものなのかは良く分かりません。

 
 そもそも、ヘッドハンティングを受けるというのは、その人材に何かしら魅力があるからなはずですが、一般的にその魅力って総合職でもない限り業界の専門知識が大きく効くはずで。
 そういう意味では、そもそもこの手の主要人材の場合、転職先って同業種しかありえないような気もします。
 実際、社員がお客さんごと競合に移ってしまったなんて話は、別に良く聞く話ですよね。

 まぁ、今回のケースはマイクロソフトからするとよっぽど許せないケースということで訴訟に至ったんだと思いますが。
 ネット業界なんて、ほとんどの会社が競合のようにみなすことができますから、もしこの手の条項が厳密に適用されると、主要人材は入社時の踏み絵で一生縛られる・・・みたいな話になりかねないような・・・それはないですかね。

 
 ただ、こうやって訴訟とか振りかざして北風政策で縛ったところで、結局のところ出て行く社員は出て行くでしょうから、いかに社員が残りたがるような魅力的な会社でいることができるかというのが、これからどんな会社でも重要なポイントになってくるんだろうなぁ・・・と思ってしまいました。
(最初からそれができれば苦労はしないんでしょうけど)

“競合事業者への転職を本当に契約で阻止できるのだろうか?” への1件のフィードバック

  1. 日本では、【習得した業務上の知識、経験、技術は労働者の人格的財産の一部をなすもので、これを退職後にどのように生かして利用していくかは各人の自由に属し、特約もなしにこの自由を拘束することはできない】(昭43.3.27金沢地裁判決)と言う判例を背景に、競業避止条項を特約として就業規則や誓約書等に盛り込むことになったのですが、労働基準法による制限もあるため、【競業避止の内容が必要最小限の範囲であり、また当該競業避止義務を従業員に負担させるに足りうる事情が存するなど合理的なものでなければならない」(平12.6.19大阪地裁判決平成11年(ワ)5880) 】という判例もあります。逆にいうと、「必要最小限で合理的なものなら有効」であると認められていると言うのが現状です。通常この範囲は2~3年程度と捉えられているようです。

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