震災と福島の原発事故をきっかけに、日本人は自分以外の誰も信じられなくなってしまったという残念なデータ(エデルマン・トラストバロメータより)

 先月、エデルマン・トラストバロメーターのセミナーに参加させて頂きました。
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 エデルマン・トラストバロメーターとは、世界26カ国で31,000人を対象に実施されている信頼度調査。各国のいろんな組織や人に対する信頼度がどのように推移しているのかを定点観測しているエデルマンの企画で、すでに13回目にもなる名物リサーチのようです。
 詳細のデータは、リリースやプレゼン資料がネット上に無料で開示されていますので、そちらをご覧いただければと思いますが。

 個人的に衝撃を受けたのがこちらの10ページのグラフ。
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 日本人の政府や企業、メディアなどに対する信頼度の推移のグラフなんですが、当たり前と言えば当たり前なのかもしれませんが、震災があった2011年を契機に、メディアや政府に対する信頼度が激減してるんですよね。
 推測するに原子力発電所の事故周辺の情報隠蔽疑惑の影響でしょうか。
 特に政府の失った信頼は震災から二年経った今でもまだまだ戻し切れていません。


 まぁ、この辺は民主党政権に対する不信感というバイアスも入っていそうなので、今回の政権交代で来年のデータがどうなるのかがポイントにはなりそうですが。
 さらに衝撃を受けたのがこちらの29ページのグラフ。
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 こちらはさっきの組織に対する信頼度ではなく、日本人がCEOや専門家、政府高官などのスポークスパーソンに対して感じている信頼度の推移のグラフですが。
 さっきのグラフよりも激しく全ての対象に対する信頼度が激減しており、しかもさらにショックなことに翌年もほとんど回復していません。
 学者に対する信頼度でも70%から32%と半減しているわけですが、政府高官に対する信頼度に至っては、63%から8%に下がってますからね、8分の1ですよ、8分の1。
 聞いたこともないぐらいの大バーゲンセールですよ。
 スライドのタイトルが「日本では自分のような人に対する信頼度が一貫している。」となっていますが、要は自分のような人以外の信頼度が激減してしまってるわけです。
 政治家とか社長とか目立っている人が信じられなくなったということかと思いきや、一般社員に対する信頼度も59%から16%と3分の1以下になってますから、もはや自分以外の誰も信じられない状況としか言いようがないデータになってます。
 個人的には東日本大震災は、原発周辺のトラブルを中心に、確かに政府や組織の嫌な面をたくさん思い知らされた出来事であったとは思いますが、一方で多くの人がつながってお互いを助け合ったと言う意味で、日本人の日本人らしさを再確認される出来事でもあったと思っています。
 そういう意味では、マンションの中でお隣さんを知ろうとする動きが一部で出てきたりとか、コミュニティの大事さを考えさせられた出来事でもあったと思っていますし、あの大惨事をきっかけに多くの人がつながりとか周りの人と助け合うことの大事さとか、人生の意味とかを考え直したり思い出した出来事だと思いたいんです。
 でも、このデータだけ見るとなんだか実に暗い気持ちにさせられます。
 ただ、まだ救われるのは上記のグラフでも、企業に対する信頼度が東京電力の信用度激減の影響があるにも関わらずたいして下がっていないこと。
 新興国からの日本企業に対するイメージも比較的高い地位を保てているようです。
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 そういう意味では、日本における企業というのは、信頼できなくなった政治家やメディアに変わって、淡々と良いものを作り続け、良いサービスを提供し続け、日本人の信頼をつなぎとめていく責任を負っているのかな、と思ってしまったりします。
 もちろん、一つのリサーチの結果だけを見て判断するような話ではありませんが、日本における企業活動の飛躍自体が、日本のムードを明るくするのに不可欠であるのは間違いなさそうだなぁと、そんなことを感じる今日この頃です。