バイラルメディアという言葉は、いつからパクリサイトや劣化コピーメディアのことになってしまったんだろう。

ちょっと前ですが、LINEの田端さんのインタビュー記事が話題になってました。
バイラルメディアは二重の意味でダサい NewsPicks
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歯に衣着せぬ田端さんならではの、痛快インタビューなんですが、バイラルメディアについても「ほとんどのバイラルメディアはどこかで見たような記事の劣化コピーである点。もうひとつは、経済合理性がないというか、儲からない点。」の二点から二重にダサいと一刀両断しています。
「だから読者も欺いているし、お金を出させているという意味で出資者や投資家も欺いている。」とまで言ってますからね。バイラルメディア全部をある意味、詐欺師扱いです。
実際、ちょっと前にバイラルメディア同士の記事のパクリ合いみたいな抗争が話題になっていたのを山本さんがYahooニュースでまとめてました。
バイラルメディア界隈で仁義なき戦いが勃発中(山本 一郎)
そういう意味で、日本ではバイラルメディア=劣化コピーメディアというイメージが徐々に確立されつつあるように感じます。
でも、そもそもバイラルメディアは劣化コピーメディアだから、パクリサイトだから、と一言でバイラルメディアブームを片付けてしまうのは、それはそれで間違うと思うんですよね。


マイナビニュースのキーワード解説にあるように、もともとバイラルメディアの定義は「「バイラルメディア」とはFacebookやTwitterなどのSNSの情報拡散力を利用して、インパクト・話題性のある動画や画像を中心とした記事に、短期間で爆発的なトラフィックを集めることを目的としたブログメディア」のこと。
特に米国におけるバイラルメディアの位置づけについては、スマートニュースの藤村さんが書かれた下記の記事が分かりやすいと思いますが。
バイラルメディア、日米で人気過熱 一過性か革命か
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バイラルメディアがバイラルメディアと呼ばれる本質って、本気でソーシャルメディアからのクチコミによるトラフィックを意識してメディアを運営してるかどうかだと思うんですよね。
バイラルメディア以前のネットメディアは、基本的に
1・ブラウザのお気に入りやホームページに設定してもらって定期的に来てもらう か
2・メルマガなどを購読してもらってメルマガからサイトに来てもらう か
3・Yahooニュースとかに記事配信してそこ経由でサイトに来てもらう か
4・SEOをがんばって検索経由でサイトに来てもらう か
というのが基本的なPVの集め方だったと認識してますが、これらの方法ってなかなか数を増やすのが難しかったんですよね。
特に個人ブログなんかだと1~3はなかなか難しいので、4の検索エンジン対策をがんばって、そこから購読者を増やすのが王道だった時代があったと記憶してます。
それがFacebookやTwitterの普及によって、ソーシャルメディアからのトラフィックを上手く集めることができれば、短期間に大きなPVを集めることができるようになり、そこにメディアとしての重点をスライドしているメディアが象徴的に「バイラルメディア」と呼ばれるようになっただけなんですよね。
米国の代表的なバイラルメディアとして取り上げられているバズフィードなんて開設2006年ですから、別に昨日今日始まったメディアではないわけで、長く運営しているうちにソーシャルメディアからのトラフィックを効率的に獲得するやり方を構築したという話なんでしょう。
実際ハフィントンポストなんかは投稿システム自体にソーシャルメディアの反応を意識する仕組みが実装されていると聞いてますし、藤村さんの記事によるとアップワージーに至ってはソーシャルメディアからのバイラルを最適化するために、記事毎にタイトルを25件も用意して反応を見て自動的につけかえたりするんだそうです。
SEO重視の時代からは考えられない話ですよね。
メディア・パブ: 爆発的に急成長するバイラルメディア、バブルなのか本物なのか
実際、昨年のメディアパブの記事を見てるとDistractifyというバイラルメディアは、4500万を超える来訪者数の「流入トラフィックの約9割がフェイスブックから」だそうですから凄いです。
ただ、その後のPVの推移を見ると下記のように頭打ちになってる感じもありますから、継続するのは継続するので大変だという話ではあるんでしょうけど。
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私自身の個人ブログですら、以前「いつの間にか自分のブログへの誘導数トップが、ツイッターでもFacebookでもなく、グノシー砲になっててビックリした件について」という記事で書いたように、ソーシャルメディアの普及やキュレーションメディアの進化で、1記事のPVが増えてきている手応えがありますから、この辺のトラフィックの流れは、この5年ぐらいで劇的に変わってきているんだと思います。
(先週の私のやまもといちろうさんとのやり取りの記事なんか1記事で20万PV超えましたからね、ネットバトル系のネタだから特別だとは思いますが(苦笑))
日本においては、米国のバイラルメディアブームを受けて、自らバイラルメディアと名乗って運営をしているメディアの多くが、実は劣化コピーネタ中心だったということもあり、バイラルメディア=劣化コピーメディアという印象をかたちづくる結果になってしまっているようですが。
実際にはバイラルメディアが劣化コピーを中心にしたメディアでも、PVを稼げるような時代になっているという点に注意すべきなんだと思います。
当然既存メディアの人は、このトレンドを受けてある程度ソーシャルメディアのバイラルを意識したメディア運営にするべきだと思いますし。
一方であまりにバイラルを意識しすぎるとPVは稼げるけど、どこかで見たようなワイドショーネタとかばかりが並ぶメディアになってしまうリスクもあるという話ではありますが。
劣化コピーメディア的なバイラルメディアよりも、あらたに独自コンテンツに力を入れてヒット記事を連発しているNewsPicksの方がよっぽど本家バイラルメディアの成功のポイントを抑えたアプローチを取ってるんじゃ無いかなと思ったりします。
ということで、バイラルメディア=劣化コピーメディアだから、自分には関係ない、と思うのは、それはそれで勿体ないな、と思う今日この頃です。