P2P の誤解:IPv6 が P2P にもたらす世界(3)

(前回コラムからの続き)


■ダイレクトに相手を発見できる IPv6 の世界

IPv6 においては、各端末に固定のアドレスを振ることが可能になります。(もちろん、実際にそういう使い方になるかどうかは分かりませんが)

そうなると、インターネットの世界は、前回のコラムで書いた、郵便箱を経由する郵便のような世界から、直接相手の机に届けることができる P2P 型のサービスが、手軽に実現できるようになります。

例えば、PC から PC に IP 電話をかける際に、センターのサーバーを経由する必要がなくなり、直接電話をかけることが手軽にできるようになります。

また、大きなサイズのファイルを相手の PC に渡したい時に、これまでのように、どこかのサーバーにアップロードしてから共有したり、相手のメールサーバーにメールで送る必要はなくなり、直接相手の PC に送ることができるようになります。

実際、 IPv6 を前提としたこれらのサービスは、すでに各社から提示されています。

例えば、タカラは「IP 糸テレフォン」なる IPv6 対応の IP 電話を、 IPv6 の普及状況を見ながら年内の発売を目指すと言っていますし、 NTT 地域会社の IPv6 サービスである「フレッツ.NET」では、サービスの利用者同士で手軽に、 P2P 型のファイルの交換や共有を行うことができます。

■IPv6 と P2P の可能性

もちろん、これまでの IPv4 では、これらのサービスが実現不可能だったのかというと、そんなことはありません。

相手のアドレスを検索するための仕組みや、中継の仕組みを組み合わせることによって、同様のサービスが実現されています。

インスタント メッセージソフトは、相手の PC と直接 P2P 型のコミュニケーションを行う仕組みの代表的なものですが、 MSN メッセンジャーのようなインターネット経由で誰とでもやりとりできるものは、基本的に Microsoft のような事業者が運営するサーバーを経由して、相手を見つけています。(IP メッセンジャーのような中継サーバーのないものでは、 LAN 内の利用者はブロードキャストによって発見できますが、 LAN 外の相手とは IP アドレスを直接入力しないかぎり、やりとりできません)

IPv6 では、このような仕組みが不要になるか簡素化することができるため、コスト的にもパフォーマンス的にも、これまでの IPv4 の世界では難しかったことが実現できると考えられています。

さらに IPv6 の世界になると、 PC だけでなく家電や自動車などさまざまな端末がネットワークに接続されます。

端末の数が飛躍的に増えると、サーバーを使った中央集中型の仕組みだけでは、サーバーに負荷がかかったり、検索の効率性が落ちるなど、さまざまな課題が出てきますが、 P2P 型の仕組みを活用することで、これらの課題を克服した新しいサービスが生み出される、と考えられているのです。

逆に言うと、 IPv6 になってやっとインターネットは、インターネット本来の可能性を100%引き出すことができるようになる、と思います。

もちろん、本当にそうやって後から評価してもらえるかどうかは、これからの新しいアプリケーション次第ですが。