[P2P]インターネット世代論・再び を読んで

CNET Japan Blog – 梅田望夫・英語で読むITトレンド インターネット世代論・再びを読んで。 

 先日、CNET主催の梅田さんのオフラインミーティングに参加してきた。


 そのときの梅田さんの印象と、この議論を呼んでいる「世代論」に関して自分でもいろいろと考えていたのだが、再度世代論が再燃しており、いい機会なので自分の考えをまとめる意味でも書いてみる。

 70年代で世代を区切る手法自体の是非は後に回すとして、「PC世代」「ネット世代」という違いは明らかに存在する。
 
 PC世代の人がPCに接した時、PCはあくまでスタンドアロンで利用する単体の道具だった。
 正直言うと、そういう意味では私もPC世代の感覚かもしれない。PCとはアプリを目的別にインストールして利用する道具だった。
 計算をするには計算ソフト、文書を書くにはワープロソフト。ソフトさえいれれば何でもできる魔法の道具だが、今から考えれば単体の道具だ。
 
 それがインターネットの登場により、いわゆる「ネット世代」がPCに触れた際にはPCはネットワークにつながった情報端末へと変化したのである。

 このネットワークにいつ触れるかによって、おそらく厳密な「PC世代」と「ネット世代」の区切りが発生するものと思われる。
 PCがネットワークにつながることにより、PCは一人で使う道具ではなく、他の利用者や情報につながる情報端末になる。
 PCの前に座る際に、一人で使う道具としてPCに接するか、その後ろに何千万という人々が存在する情報への意入り口として接するか。
 この感覚の切り替えに成功できるかどうかはまず最初の「世代」の壁になると考えられる。

 例えばうちの両親が、いまだに電車の乗り換え検索にPCの組み込みソフトを使っているのは印象的だ。インターネットの乗換え案内を使った方が最新情報を使えるはずだが、まだそれよりもソフトウェアとして組み込まれているものの方が情報として正しいと認識しているような気がする。

 年配の方で梅田さんの書き込みに反発する方は、かなり初期にパソコン通信などに触れた方が多いように感じる。
 そういう方からすれば、自分は相当昔からネットの最先端に触れていたという意識があるわけだから、反発するのも当然だ。
 
 ただ、個人的に、梅田さんの定義を一つ進めて考えたいのは、「ネット世代」における情報に対する姿勢の違いである。
 いわゆる「PC世代」であっても、インターネットを適切に使いこなしている人はたくさんいる。そういう方々が、梅田さんの年代での世代区切りに大きく反発しているのは分かる気もする。ただ、一般的なそういう方々のネットの活用方法は、公式な情報の提供元としてインターネットを利用する方法だ。
 仮にその世代を「旧ネット世代」としよう。

 梅田さんが「ネット世代」として定義している世代は個人的には「新ネット世代」としてみたい。
 この世代は、インターネットをリアルな世界と同様、自分のコミュニティとして捉えることができている。
 そういう意味では「旧ネット世代」はインターネットをメディアとして捉えていると定義すれば良いだろうか。

 私の個人的な定義だが、具体的な旧ネット世代と新ネット世代の違いはこうだ。 
 両方ともインターネットを使いこなせていることを前提としよう。

■旧ネット世代
・既存の紙メディアのサイトが情報収集の中心(日経や雑誌系のサイト)
・製品を購入する際にも、その会社の公式サイトで製品情報を確認する。
・オークションで買うことは仮にあっても、出品することはほとんどない。

■新ネット世代
・メディア系のサイトだけでなく、ブログや掲示板など個人レベルの情報もウォッチする。もしくは自分でも書いている。
・製品を購入する際に、関連する掲示板やコミュニティでの評判を見たり、質問したりする。
・オークションに積極的に出品する。

 まぁ、定義の是非は置いておいて、二つの世代の大きな違いは、インターネットを受動的に利用するか、積極的に参加するかどうか、というのが分かっていただけるだろうか。

 個人的にはこの違いはインターネットの中だけでなくリアルな世界にも表れると考えている。
 新ネット世代は、インターネットという手段を活用することにより、自らの力を企業と同列の世界に引き上げることが可能になると思考できるからだ。
 旧ネット世代は、インターネットをあくまで、リアルな世界と同じ「他の企業」が便利なサービスを提供してくれるものとして捉えるのと対照的だ。

 そのため、二つの世代のリアルな世界での考え方も大きく異なる。

■旧ネット世代
・(一般的に)大企業に所属しており、ネットで成功した世代をITバブルに乗った成金と捉える。
・個人の力では企業に対して無力感を感じる。
・テレビに出てくる人を「特別な存在」として捉え、自分がそれになれるとは考えない。

■新ネット世代
・インターネットを利用すれば、自分も成功するチャンスがあると感じる。
・個人でもうまくすれば企業に勝つことができると考える。
・著名人が所詮一般人にしか過ぎないことを知っており、自分もそれになれる可能性があると思う。

 ううむ、書いてみるとなかなか上手く表現できないものですね・・・、何を言いたいか分かってもらえるだろうか・・・

 言いたいポイントは、masa blogで佐藤さんが指摘していた「インターネットと言うものは一般ユーザが多くの主導権を握れる数少ない世界である」ということと深く関係する。
 「新ネット世代」は、ネットワークの力を使えば自分の力を増幅することができることを知っており、実際に利用する世代も確実に増えてきている。最近のブログや副業ブーム、独立志向の背景にはそうした世代の増加も確実に影響していると感じる。

 過去の書き込みで私の関心がP2Pにおいて「Person to Person」であると書いたが、私がP2P技術に魅力を感じるのは、これまでシステムの主導権を握っていたのが企業である部分を個人に引きおろしてくる可能性がある点である。

 どうしてもP2P関係者の私がこう書くと、「またP2Pかよ・・・」となってしまうかもしれないが、私の最大の関心事は「これから企業から利用者にパワーシフトが起こるかどうか」ということだ。

 そういう意味で、日本でこれからこの「新ネット世代」が本当に増加するのかどうか、日本をリードしていけるかどうかということは、日本のインターネット産業、IT産業が今後どうなるかということに大きく影響する重要なポイントだと思う。

 梅田さんが非難を受けることが分かっているのに、あえて70年代という年代論でこの世代論を公式な場に提示するのは、この問題に対する梅田さんなりのアプローチなんだというのを前回のセミナーで強く感じた。

 梅田さん自身、自分のことを一歩引いてアドバイスするのに向いており、VCのような金が最優先の世界には向いていないと表現していたが、やはり梅田さんの興味は「日本の今後」「日本の若い世代の今後」にあるように思う。

 中学校などで、クラスの議論を沸騰させるために、先生が率先してあえて過激な定義をするという手法があったが、今の梅田さんのこのネット世代論議はまさにこの手法だと感じる。

 「あなたはネット世代なのか?」
 「ネット世代とは何なのか?」
 「ネット世代によって世界は、日本はどう変わるのか?」
 「あなたには何ができるのか?何をすべきなのか?」

 それを私たちに真剣に考えろと投げかけているように感じる。
 今回の書き込みで冒頭に日本企業の経営者にネット世代の意見を聞けと提言しているくだりが書かれているが、まさにこれからの日本企業に重要なのはこのポイントだろう。

 「PC世代」及び「旧ネット世代」が中枢を占めている日本企業が、「新ネット世代」の意見に耳を傾けることができるか。
 日本がこれからインターネットの中で重要な役割を担うことができるか、それに少しでも貢献したいという梅田さんなりの問題提議のようだ。
 実際にこれだけ議論を巻き起こしているわけだから、価値は大きい。

 ただ、実はブログを読む人、ブログで議論に参加する人というのがそもそも「新ネット世代」の人であり、一般の世の中でもごく一部に過ぎないというのもまた事実だ。

 そういう意味では、梅田さんだけでなく自分たち一人一人が「ネット世代」として実社会に影響を与えていって始めて世の中は変わるのだろう。

 なんだかまとまりの無い書き込みになってしまったが、セミナーで梅田さんに「援護しろ」と言われたこともあるし(?)、自分なりの考えを書き込んでおく。
(明らかに援護になってないが)
 
 梅田さん、CNETの皆さん、面白いセミナーの企画ありがとうございました。