DDIポケットの明日はどこにあるのか – CNET Japanを読んで。
いつものことだが、森さんの分析は深い。
正直、今回のDDIポケットの買収劇の裏にここまで深い洞察を走らせることができるとは思いもよらなかった。もっとシンプルな話だと思ってしまっていたからだ。
ただ、個人的には、PHS事業についてはかなり斜めに捉えてしまう。
どうしても、日本におけるPHS事業というのが、そもそもボタンの掛け違いから始まったという認識が抜けないからだ。
私が某通信会社に就職活動をしていたとき、PHSは新しい移動通信サービスとして密かに脚光を浴びていた。
ただ、それは新しい携帯電話としてではなく、外に持ち出せるコードレス電話としてだったはずだ。
当時の私はそのPHSのインフォマーシャルに胸をときめかせたものだ。家では家のコードレス電話として使え、それをそのまま外に持って出ると携帯電話になる。
電話料金も効率的だし、なんと素晴らしいことではないか!
ただ、結果的には通信競争政策のあおりもくらい、PHSサービスは「安い」携帯電話としてスタートせざるを得なくなった。
最終的にはNTTグループのPHS通信会社であるNTTパーソナル通信は、DDIポケットとの競争に敗れNTTドコモに吸収合併されることになる。
今、その競争に勝ったはずのDDIポケットがKDDIグループから見捨てられ(?)、独自路線を歩む羽目になるとは、実にこの世界も複雑だ。
通信産業の海外進出、特に日本の通信会社の海外展開が上手くいったのを聞いたことが無いので、DDIポケットの海外展開には個人的には更に懸念がある。
ただ、確かにデータ通信の世界でPHSが果たしてきた役割は小さくない。
32~128Kbpsという今でこそ低速回線ながら、常時接続定額制は数多くのモバイラーの活動を支えており、日本のようなビジネスエリアが密集している国においては今後とも有効な通信手段となりうる余地はある。
そもそも、最近はPHSはすっかり目立たなくなってしまったが、逆にいうと地道に普及しているということもできる。
先日、公衆無線LANサービスが、なぜ海外に比較して日本でなかなか普及しないかという議論をしていたが、やはりPHSの影響は大きいという結論になった。
つまり、逆にPHSのような定額制のモバイル通信手段をもたない国だからこそ、公衆無線LANが人気を得るということだ。
そういう意味ではPHSが進化すれば、また別のモバイルの姿も生まれるかもしれない。
ただ、どうしても個人的にはPHSサービスをどうしても斜めに見てしまう。
おまけに買収元に名を連ねているのが、投資会社のカーライルというのもどうも気になる。結局日本テレコムのときのように売り先の候補が頭にあるんじゃないだろうか・・・