ソフトバンクの新料金プランは、“予想外”に複雑 (1/2)を読んで。
ソフトバンクモバイルの予想外割の難しさが、ネット上でも大きな議論を呼んでいるようです。
予想外割の落とし穴的な詳細の解説や議論がネット上で繰り広げられているのに対し、発表翌日にはソフトバンクモバイルの受付に行列ができていたりと、今のところソフトバンクモバイルに対する反応がポジティブなのかネガティブなのかはどうも良く分からない状況ですが。
総じてネット層は比較的冷ややかに分析、テレビ層は好意的に受け止めている印象です。
何と言ってもソフトバンクといえば、通信業界ではまさに革命児。
低価格のADSLで無茶なダンピングと呼ばれた通信事業への電撃参入を皮切りに、モデムの無料配布で利用者数を拡大したり、IP電話においてもBBフォンで利用者間無料というインパクトのあるサービスでIP電話市場拡大に貢献。その後、日本テレコムを買収後におとくラインを発表。それまで聖域と見られていたNTTの電話の基本料金にまで切り込んだ歴史があります。
そういう意味では、今回のソフトバンクモバイルの予想外割に同種の革命を期待する利用者も多いことでしょう。
ただ、今回の予想外割等のプランは、当時のADSLの料金やBBフォンの分かりやすさに比べると、どうにも煮えきっていない印象があります。わかりづらい料金プランがブログ等でバッシングの対象になるのも当然と言えば当然でしょう。
そういう意味では、個人的には今回の予想外割が、ソフトバンクモバイルにとって攻めの手段かと言われると違和感があります。
これまでのソフトバンクの通信事業でのろしを上げて成功した場合には、なんだかんだ言って、必ずある程度技術による後ろ盾が何かしらありました。
Yahoo BBにおいてはADSLという当時注目されていた新しい技術が参入の背景にありましたし、BBフォンにおいても、IP電話の技術を活用することで利用者間無料を実現しています。
ただ今回のソフトバンクモバイルにおいては、ボーダフォンを買収したのが今年3月。
急ピッチで端末のラインアップなどを揃えたのは流石ですが、負け組と呼ばれていたボーダフォンを半年で急に全くコスト構造の違うインフラや、魅力あるサービスに変更するのはいくらなんでも無理でしょう。
そういう意味では、今回の予想外割が真の意味での利用者間通話無料を実現できず、ネットでバッシングされるような中途半端な仕組みになってしまっているのは仕方が無いところです。
ウィルコムのように地道なインフラ整備により利用者間通話無料を可能にしたのではなく、料金プランの力技でやってるわけですから。
まぁ振り返ってみれば、今回予想外割等の発表があるまで、下馬評ではモバイルナンバーポータビリティの勝ち組はau、負け組がボーダフォン+ソフトバンクモバイルというのが大方の予想だったはずです。(実際、既にauが6日間で8万人純増したという発表があったようですから下馬評通りというところでしょう。)
そんな中、ソフトバンクモバイルがまずやらなければならないことは、新規利用者の獲得以前に、実は「既存利用者の流出を止めること」。
そういう意味では、仮に中身はともなっていなくとも、今回の発表でとりあえず既存利用者に「まぁソフトバンクモバイルのままでも問題ないかも」と思わせて、ある程度シェアの低下を押さえることができれば、少なくともソフトバンクモバイルの勝ちと言えるのではという気がしてきます。
そもそも、携帯電話を換えるのって結構面倒な作業ですから、個人的には今回のMNPも固定電話のマイラインと同様、事業者側の盛り上がりにくらべると、実は短期的に大きな変動をもたらすものにならないのではと思ったりもするのですが、まぁ最初の一ヶ月のシェア変動で「au大幅増、ソフトバンクモバイル大幅減」となって、「あーやっぱりソフトバンクモバイルってダメなのね」とスタートの印象から負けてしまうのがソフトバンクにとっては最悪のシナリオなはずです。
そういう意味では、今回の予想外割は、実際に他の事業者の利用者に契約してもらおうという「攻め」の施策というよりは、あくまでアドバルーン的な「守り」の施策なんだろうなーと思います。
分かりづらかろうが、実際に得だろうが何だろうが、とにかく利用者の注目を集めることで、今回の利用者大量流出をある程度食い止めることができれば、まずは当面の目標は達成。
その後に時間をかけてインフラを整えたら、本当の意味での「攻め」の手段を準備してくるのではないかなー、と思ってしまうのは考えすぎでしょうか。
まぁ、システムトラブルで早くも謝罪会見をしたりもしているようですから、攻めの手段を準備できるまで、本当にねばることができるのかというのも一つの注目点になりそうです。