マス広告による大量リーチと、エンゲージメントを重視した手法の比較に意味があるのか adtech関西で議論したいと思います。

来週に開催されるadtech関西で、「エンゲージメント重視のアプローチはビジネス成果につながるのか?」というセッションのモデレーターをさせて頂くのですが、タイトルに横文字が多くてセッション内容を誤解されている方がおられそうなので、こちらで何を議論したいのか、という話を書いておきたいと思います。

通常のadtechのセッションは、公募されたスピーカーの方々で構成されていることが多いのですが、今回のセッションに関しては、個人的にも話を聞いてみたいと思った3名のスピーカーの方々に直接私の方でコンタクトして登壇をお願いさせていただきました。

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adtech関西ということで、お三方とも関西の企業にこだわってお願いをしました。
そういう意味では、今回のセッションは個人的にも非常に思いがこもっているセッションです。

「エンゲージメント重視のアプローチはビジネス成果につながるのか?」というセッションタイトルだけを聞かれると、ちょっとこのセッションで意図してることが伝わりづらいかもしれません。

150907engage実はスピーカーの方にも、セッション概要をご説明したら「うちはFacebookページ注力してないんですよ」と断られそうになったことがありましたが、ここでいうエンゲージメント重視はFacebookのエンゲージメント率重視という話では無く、広い意味での「顧客との関係構築」を重視したアプローチのことです。

ブライアン・ソリスが「Engage!」という本を出してましたが、せっかくネットやソーシャルメディアで顧客とつながれるようになったんだから、もっと関わろうよ、というイメージですね。

このエンゲージメント重視の対極にあるのが、普段私が個人的に問題意識として感じている「リーチのみを重視したアプローチ」の君臨です。

まぁ、私自身がアンバサダープログラムとかソーシャルメディア側のプレイヤーなので、エンゲージメントを重視するのは当然だろ、という話ではありますし。
実際日本はマスメディアが非常に強いのでリーチ重視のアプローチで成果を出すことが向いている国だとは思うのですが。

それにしても日本においては、多くの企業が広告の効果測定指標として「リーチ」のみに依存しているのでは無いかと感じることが多くあります。

特に個人的に一番問題に感じているのが、マスメディアの効果測定において、テレビCMのGRPや新聞、雑誌の発行部数のような、最大リーチ数が指標として用いられていることが多く、広告費を払った分だけリーチが保証されるのに対し、エンゲージメントを重視した施策というのは、施策を実施するまで何人にリーチできるかが分からないことが多い点。
さらには、10万部の雑誌に広告を出しても、本来はその広告ページが開かれる確率とか、記憶に残る確率とか、行動に移す確率とか考えると、実効ベースの人数は絶対に10万人より少なくなると思いますが、その数値は取ることができないのに、ネットではクリック数やコンバージョン数とか様々なデータを取れる分、どうしても効果測定指標として比較される数値が小さくなる傾向にあるという問題もあります。

そういう意味では、リーチのみの効果測定指標で評価されるのであれば、正直確実にリーチを獲得できる広告メニューを並べておく方が担当者の方々としても実はリスクが低い、というのが日本の広告宣伝の現場で起きがちな現象かなと感じています。

個人的にも、せっかくこれだけネットが普及し、ソーシャルメディアやスマホなど、企業にとって単なる広告メッセージを流してリーチを獲得するだけでなく、もっと顧客との関係性を構築して言うエンゲージメントを重視したアプローチに挑戦する人が増えて欲しいと思うわけですが。

実際に、日本企業の多くはテレビCMで成功して大きくなったところが多いですし、経営陣がテレビCMのリーチ数の桁数を中心に効果の議論をしているケースが多いと聞きます。

テレビCMなら「数百万人、数千万人に認知されます。」という話ができるのに対し、ソーシャルメディアだと下手したら数万人とか数千人とかの人数の報告になってしまうわけで、経営者から物足りなく感じるのは間違いないでしょう。
本来的には、そもそも、この二つの数値を比較すること自体が意味あるのか?という議論もありますし、全く別のコミュニケーション手段なのだから組み合わせで考えた方が良いという視点もあると思うんですが、実際には経営者に理解してもらえないから評価してもらえないという状況はまだまだ少なくないようです。

そんな中、個人的に注目しているのが今回のパネリストの方々のように、リーチを求められる業態にありつつも、あえてエンゲージメントを重視したアプローチにコミットしながら模索を続けられている方々です。

私のような第三者から見ても、論理的に日本においてはエンゲージメントを重視したアプローチに取り組むのは面倒だしリスクが高いな、と思ってしまったりするわけですが。

USJの田村さんは、単純にソーシャルメディアのアカウントのフォロワーやファンを増やすのでは無く、ユーザーからのクチコミ投稿を増やす形での実験に取り組まれていますし。

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パナソニックの工藤さんは、グローバルに対してパナソニックの様々なニュースを発信することで広告では伝わりにくいパナソニックの魅力を届ける努力をされています。

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ネスレの津田さんは、ネスカフェアンバサダーという取り組みの中にサンクスパーティーや座談会、時にはジョギング企画など、地道なコミュニケーション施策を複数取り込んでおられます。

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なぜ、お三方は単純にリーチを獲得できるアプローチでは無く、エンゲージメントを重視したアプローチを取られているのか、
上司や経営陣には自分達の活動の位置づけをどのように理解してもらっているのか、というあたりの話を当日はお聞きしてみたいと思っています。

adtech関西に参加される皆さん、当日は是非よろしくお願いいたします。