湯川鶴章のIT潮流 powered by ココログ: ブログ出版社-インフォバーン小林弘人氏を聴いて。
今更ながらに、時事通信の湯川さんとインフォバーンの小林さんのポッドキャスティングを聴いて「マジックミドル」という新しいキーワードを耳にしました。
いわゆるロングテール理論の登場で、インターネットが多くのロングテール現象を引き起こしていることはかなり一般的に共有されるようになってきたと思います。
ただ、ロングテール理論を早とちりすると、ロングテールの方が価値があるとか、ロングテールでヘッド側の価値が減るというような話になることがありますが、個人的にはそういう話にはちょっと違和感を感じていました。
いくらロングテールが伸びたところで、ヘッドにあたる部分がいきなり落ちてきたりロングテールと入れ替わったりするはずも無く。
当然Googleのようにロングテール全体をAdsenseのような新しい広告プラットフォームでごっそりとカバーできる企業はロングテール部分で儲かる訳ですが、ロングテールに存在する個々の製品やサービスは結局ニッチなものにすぎません。
そういう意味ではロングテールとショートヘッドを対比して議論するのにはあまり意味が無いはずです。
もちろん、ロングテール部分でもビジネスができたり、ターゲットに見つけてもらえるようになったという意味では大きな変化な訳ですが、個人的にはロングテールがショートヘッドとつながったことで、ロングテール側にいた商品やサービス、そして人がヘッド側にスライドすることができるようになったことに意味があるように感じていました。
例えばマスメディアを例にすると、これまではヘッドであるテレビや新聞で報道してもらうためには最初からヘッドに認めてもらえないと相当難しかったはずです。それが、今はネットのロングテールの中で見いだされればヘッドとは言わないまでもある程度の認知度や、影響力を持つようになることができます。
その現象を表現するキーワードとして納得できたのが、上記のポッドキャスティングで、インフォバーンの小林さんが話していた「マジックミドル」というキーワード。
もともとはTechnorati創業者のDavid Sifryが提唱したキーワードで、被リンク数を指数化しているTechnoraiらしく20-1000の人にリンクされているブログやメディアを言うようですが、もう少しゆるく真ん中ぐらいというイメージでも良さそうです。
要はこれまでのショートヘッドではなく、ロングテールからヘッドに向かってあがってきている中間層の人たち。
単純な中間ではなくマジックというぐらいですから、新しい中間層とイメージした方が良いでしょうか。
米国のブログでいうとTechCrunchやRead Write Webあたりがマジックミドルにあたる模様。
マジックミドルとはいえ、TechCrunchなんかはスポンサー広告の単価が月額6万ドルというから凄まじいです。
日本も昨年からのブログブームでブログの数自体は米国に匹敵するほど増えたようですが、日米を比較して日本のブログ界の広がりが物足りなく感じるのは、日本で広がったのは「日記」としてのブログが中心で、このマジックミドルにあたるブログがまだまだ少ないことも影響しているように思えます。
海外のこれらの人気ブログは、完全にメディアビジネスとして運営されているものが多いのに比べ、日本でメディアビジネスとして運営されているのは、enGadgetやGIZMODO、TechCrunchなどの翻訳ブログをのぞけば、ネタフルやGIGAZINEなどまだまだ一部のブログやサイトの印象がありますから、そのあたりの違いということでしょうか。
(最近で言うと、田口さんが仕掛けているsimple*simpleやpop*popなどの複数ブログ展開もその一つになりそうな雰囲気があります。)
ブログブームも一段落したという印象もある昨今ですが、日本でも米国同様にマジックミドルと呼ばれるような内容の濃いブログや商業的に成功するブログが今後増えてくるのか、それともやっぱり日本は違う展開になるのか注目したいところです。
というか、ブロガーの一人として何かできるのか、というのもちゃんと来年は考えたいなと思います。