FacebookはmixiやGREEを食わず嫌いだった世代に、シンプルにSNS初体験の感動を与えてくれてるのかも。

 前回の「日本は、まだまだソーシャルメディアの影響力で米国と比較するには、ほど遠いのではなかろうか」に続いて、ソーシャルメディアサミットの第二弾感想記事として、今日はFacebookセッションについて書いておこうと思います。
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 先日、日経ビジネス・オンラインにも「2011年はフェイスブックの年になる?というコラムを書きましたが、今年が去年のツイッターブーム同様、Facebookブームの年になるのはほぼ間違いない、というより既になっているのが事実でしょう。
 そう言う意味で、やはり今回のソーシャルメディアサミットにFacebookは外せないテーマでした。
 企業によるFacebookページ開設はまさに文字通りラッシュですし、実際AMNにもFacebookページ開設の相談は多数頂くようになり、一方で昨年のツイッターを超える企業担当者の方々の戸惑いの声も日々聞いています。
 何と言っても議論のポイントになるのは、はたしてFacebookは日本で流行るのか否か。
 私自身もTechCrunchで昔「日本でFacebookがブレイクするために必須と思われる5つのポイント」というような記事を書いた人間ですから、どちらかというとFacebookは日本で苦労するだろうという論者だったのですが、年が明けてからかなり見方が変わりつつあります。


 それは、結論から言うと、Facebookは、mixiやGREEを遊びの場だと思って全く使っていなかった年代層に、純粋にSNS初体験の感動を引き起こしているのではないかということ。
 個人的に印象的だったのが、年明けにうかがったフィットネス業界の勉強会での一幕。
 いつものとおりプレゼンの冒頭で、Twitterやmixiを利用してもらっている人に手を挙げてもらったのですが、結果が以下の通り。
 Twitter 6割ぐらい
 mixi 3割ぐらい
 Facebook 4割ぐらい
 まだ1月に週刊ダイヤモンドのFacebook特集が出た直後のことです。
 フィットネス業界というとITと縁遠い印象があり、Twitter6割にも正直驚いたのですが、もっと驚いたのがmixiよりもFacebook利用者の方が明らかに多かったこと。
 普通のネット系界隈ではありえない数値です。
 その時の象徴が、ルネサンスの会長をされている斎藤敏一さんが、会のメンバーに対してFacebookの利用を推奨していたことです。
 直接なんでですか?とお聞きする機会があったのですが、「mixiとかは匿名だから使う気にならなかったが、Facebookは実名だから仕事に役立つと確信した」と明確に言い切っておられました。
 もちろん斎藤会長は新しいものにも常に積極的に取り組まれる方だそうなので、特別例と言い切ることもできますが、同様の発言は先日、ユニクロの柳井会長からも見られました。
「ネットの匿名は信用できない」–ユニクロ柳井会長がFacebookを選んだ理由 – CNET Japan
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 これまで日本のインターネットは、年配の世代、特に経営者層から「危ない」「便所の落書き」「炎上する」というネガティブな扱いが耐えなかったように思います。
 それには一般的に言われるようにマスメディアによるネガティブキャンペーンが確実に聞いているのも確かですし、2ちゃんねる発の様々な過激な発言が印象的すぎたこともあるでしょう。
 ライブドアショックによって、日本のネット業界にネガティブな印象を持ってしまった人が多かったことも事実だと思います。
 実際にはmixiやGREEはサービス開始当初は実名での利用を推奨していたと記憶していますし、実は現在のFacebook同様、初期のmixiやGREEに企業でのビジネス利用の未来を感じていた人も多数いました。
 私自身、GREEで友達の名前を検索しまくっていた人間ですし、現在のFacebookが米国で実現しているような「大事なメッセージはEメールではなくmixiで送る時代が来てもおかしくない」と、2006年にブログに書いたこともあります。
 ただ、その後mixiは2006年の上場後、たびかさなる実名ユーザーの問題行動によるトラブルに耐えられず、実名登録推奨の方針を転換することになります。
ITmedia News:mixiで氏名・性別の公開範囲を限定可能に
 それだけが原因ではありませんが、結局、残念ながら日本においては、mixiはいつの間にかいわゆる人と人のつながりのSNSではなく、ブログ同様暇な人が日記を書いている場所、とか出会い系サイトという印象をmixiを使ったことが無い世代に持たれてしまい、年配の世代の人たちはmixiを全く使うことなくSNS本来のつながりの魅力を知らずに今まで来てしまったように思います。
  冷静に考えると、mixiの利用者数はいまだに2000万人程度なわけですから、日本のインターネット人口を考えると20~30%、実は残りの6000万人はほぼ全くゲームサイトではないSNSを知らない人たちなわけです。
 今回のFacebookブームでは、その全くmixiを知らない層が、初めてSNSに触れて、2004年頃に私たちがmixiやGREEに触れたピュアなSNSの感動を味わっている、そういう風に見てみると、現在のFacebookブームを巡る喧噪が全く違うように見えてきます。
 切込隊長もシックスアパートさんのパーティーでの対談の際に、Facebookはマダムが多いと独特な表現をしてましたが、実際Facebookにはまっている層は、mixiの初期に比べると一回り世代が上、というのが個人的な印象です。
 Facebookで会ったことのない人に無差別にフレンド申請を多数している人は、大体自分で会社を経営している人や個人事業主の方が多い印象ですし、モデルばりの宣材写真のような綺麗な写真をプロフィールに使っている女性が多いのにも気づきます。
 そういった方々が発言をすると、1時間であっという間に100近い「いいね!」がついたりするのを、私のハイライトではよく目の当たりにしていますが、まさにこの盛り上がりは初期のmixiの足跡帳。
 世代は違えど、友達にいいねが押されるから、友達の発言のいいねも押し返すという典型的な日本のSNSのコミュニケーションのように思います。
 現在のFacebookブームを、何をいまさらと冷ややかな目で見ていたり、Facebookのコアユーザーは気持ち悪いと批判する層は、大体mixiをしっかり使ったことのある層ですし、Facebookのインターフェースが使いづらいと文句を言う層は、大抵mixiのコアユーザーだったりします。
 要は、5年を経過して、ようやく日本の普通のビジネスマンに、SNSが日記やゲームのサイトではなく、ゆるい人間関係をつなぐための「ソーシャルネットワーク」サービスであるということが理解されているようにも見えてくるわけです。
 そう考えると、実は現在のFacebookは、mixiやGREEを出会い系サイトやゲームサイトと考えて、手を付けなかった世代に使ってもらうために、非常に良いポジションにあるようにも見えてきます。
 何しろFacebookはグローバルスタンダードで、世界に利用者が6億人。
 Googleをも排除する勢いで成長中で、実名インターネットだから今までの日本の匿名インターネットと比べると安全(実際はどうかは別として)。
 と、日本の経営者層や年配の方々など、ネットに恐怖感を抱きがちな層が好きな材料がFacebookには大量に揃っています。
 昨今の匿名アカウント停止騒動も、その無差別な手法が良いかどうかは別として、匿名ユーザーが騒げば騒ぐほど、実名インターネットは安全と思っている層に対してはかえってFacebookが匿名の怖い人たちと戦ってくれているという宣伝になっている印象もあります。
 ルネサンスの斎藤会長のケースのように、経営者が使えば、当然その部下や企業自身が使うようになるのは自明の理。
 その結果、今回のセッションに登壇して頂いたANAさんや無印さんがおっしゃっていたように、Facebookユーザーはコールセンターに比べてネガティブなクレームが実は非常に少ないという実体験が積み重なっていくと、日本の企業のインターネットを見る目も大きく変わるような気がします。
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 実は企業におけるSNS利用は日本においては全くのブルーオーシャンだったわけで、当面のFacebookの最大の敵は、mixiやGREEではなく、企業からのソーシャルメディアへのアクセスを何でも禁止してしまうシステム部門とセキュリティフィルタ会社になってきていると言ってもいいかもしれません。
 
 日本においては、掲示板は便所の落書き、ブログは暇人の日記と扱われ、mixiのようなSNSは出会い系サイト、モバゲーやグリーはゲームサイト、Twitterは暇人がつぶやく場所、と、これまでソーシャルメディアは常に企業やサビジネスマンからは縁遠い場所、という印象をもたれ続けてきましたが。
 ループスの斉藤さんの記事によると実は今回のFacebookブームでmixiも利用者増えてるかも、みたいな話もあるようですし。
 ようやくFacebookが、シンプルなソーシャルの魅力を、そういったネット食わず嫌いの世代に感じさせてくれるかも。
 今回のFacebookブームに、そうちょっぴり期待してしまうのは、私だけでしょうか?
 ということで、当日のセッションの様子を知りたい方は、インターネットウォッチとネタフルの記事をどうぞ。
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