CMO+CIO Leadership Forumで考える日本企業におけるマーケティングとテクノロジーの融合の難しさ

 先週IBMさんが主催された「CMO+CIO Leadership Forum」に光栄にもお誘いいただいたので当日の感想をメモしておきたいと思います。
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 当日の概要は、ITmediaさんがセッションごとに記事を書かれているので、そちらをご覧いただければと思いますが、イベントのタイトルにもある通り、CMOというマーケティングの責任者とCIOというシステムの責任者が両方とも対象になっている日本では珍しいタイプのイベントで、非常に刺激になる内容でした。
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 実際、ビッグデータの議論でよく課題に挙げられるように、デジタルマーケティングの世界においてはマーケティングとテクノロジーのトップが連携して取り組むことの重要性が良く言われます。
 日本においては、そもそもCMOという役職自体が存在せず、その不在がマーケティング担当者の現場で嘆かれていたりしますが、さらにマーケティングの領域を統合するどころか、システム領域と連携しなければいけないわけで、縦割りの組織構造に慣れてしまった日本企業には難しい課題だなと思ったりするわけです。


 今回のIBMのイベントにおいては、iPad miniが300人を超える参加者全員に配布され、専用の掲示板やツイッターからの投稿が推奨されており、一参加者としてはかなり度肝を抜かれたのですが。
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 実際に端末から投稿にチャレンジしていたのは、私が見ていた限り参加者のごく一部。
 米国の同様のイベントでどれぐらい議論が盛り上がっているのかは分かりませんが、少なくともCMO+CIO Leadership ForumというタイトルのIBMさんのセミナーに参加するような意識の高い人でも、この結果というのは、日本におけるマーケティングやシステムのリーダークラスがこうしたツールで直接議論することの難しさを改めて感じさせられる結果となりました。
 特に日本で難しいのは、いわゆる大企業の経営者層は年配の方が多く、ほとんどの方がネットやソーシャルメディアを個人では利用していないケースが多いという点でしょう。
 米国のCMOの集まりに参加された方が、アクセス解析サービスの設定項目の具体的な調整の議論までCMOレベルでできていて驚いたという話を聞いたことがありますが、日本の経営者層がそういう議論をするというのはまずありえない気がします。
 そもそも、日本の大企業の宣伝部や広報部は、マスマーケティングを中心として組織が作られてきたケースが多いため、デジタルマーケティングへの取り組みはどちらかというと若手担当者に任されている印象が強くあります。
 宣伝部長や広報部長が率先してビッグデータやソーシャルメディアなどの新しい領域に取り組むというのは稀でしょう。特に広報部においてはリスクマネジメントが部のミッションであるケースも多く、どちらかというと新しい技術を社員が使うのをリスクと考えているケースも多いように感じています。
 さらに悲しいのは日本においてはシステム部門も、どちらかというとインターネット利用を規制する側にまわっている場合が多く、いわゆるデジタルマーケティングで注目される利用者のネット活用の可能性をシステム部門自体が感じていないケースがまだまだ多くあるように感じます。
 システム部門が会社のソーシャルメディア利用を禁止している場合、システム部の担当者は当然見本になるべくソーシャルメディアに手を出さないという話を聞くこともあります。
 さらに実際には日本においては、会社の実務を取り仕切っているのはトップマネジメントではなく、優秀な中間管理職がトップのバックアップを受けながらやっているというのが、個人的な印象であり持論なのですが、そういう構造だと実はマーケティングとテクノロジーの融合のような部門間をまたぐ取り組みというのは実現が難しくなりがちです。
 当然米国のCMOとCIOの間においても、さまざまな軋轢やバトルがおこっているそうですが、それでも少なくともCMOとCIOが同じベクトルに向けて進めば話は進むはず。
 それに対して一般的な日本の大企業の組織構造だと、そもそもCMOやCIOのような存在がいない上に、縦割りでの業務分担が進みすぎていて、ビッグデータのような両方の領域をまたぐテーマというのはどうしても組織の間に落ちてしまう印象があります。
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 当日のパネルディスカッションでも、マーケティングとテクノロジーの溝をいかに超えるべきかという質問に、日産の星野さんから「もっとあちらがこちらを理解して欲しい」と発言が出て会場から笑いが起こるシーンがありましたが、現実的には多くの企業で同じ思いを持っている人が多いように感じます。
 なんとなく取り留めもないメモになってしまいましたが、この課題をどうやって社内で認識し、どのように超えていくかを組織全体で議論することこそが、実はデジタルマーケティングにおける重要なポイントな気がします。
 日本には米国のCMOのような絶対的なカリスマが存在する組織は確かに少ないかもしれませんが、逆にその事実を認めてミドルマネジメントレベルでの組織横断プロジェクトで対処することで、実は日本ならではのCMOプロジェクトチームのような形式を模索したほうが現実的ではないかなと思ったりもします。
 IBMさんの方で当日のツイッターの発言一覧もまとめられていますので、興味のある方はそちらも是非どうぞ。
CMO+CIO Leadership Forum – Togetter
 またイベントの関連資料は、IBMさんのスマーターマーケティングのサイトにも掲載されているようなので、こちらもどうぞ。
IBM スマーター・マーケティング – Japan
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