「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」は、電通ブランドクリエーション・センターの小西圭介さんが書かれた書籍です。
献本を頂いたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この「ソーシャル時代のブランドコミュニティ戦略」は、そんな小西さんが15年以上にわたるマーケティングコンサルのキャリアを元に、ソーシャルメディア時代のブランドの位置づけについて考察されている本です。
ブランディング、というとどちらかというと製品や広告のイメージで印象をつくるという静的なイメージがあると思いますが、小西さんはそれを「形容詞のブランディング」と呼び、これからは「動詞のブランディング」というユーザーと企業が一緒に価値を生み出していくアクションとダイナミックなプロセスを軸にしたブランディングが重要になってくると提示されており、その実践に向けたやり方を具体的に紹介されています。
日本語の本なのに、あのデビッド・アーカーが推薦文を寄せてるって凄いですよね。
何でもデビッド・アーカーが電通グループのアドバイザー的なことをされてるそうなので、それも影響してるのかもしれませんが。、それにしても二人で対談できるなんて羨ましすぎます。
■【デービッド・A・アーカー氏×小西圭介氏対談】(前編) 企業が一方的にブランド価値を提供し、 メッセージやイメージを管理する時代は終わった
私が小西さんに初めてお会いしたのは2009年までさかのぼることになると思います。
まだ当時はツイッターの黎明期で、ソーシャルメディア自体の価値に多くの広告業界の人たちが疑問を持っていた時期だと思いますが、その頃から私の妄想のような話を真剣に聞いて頂いたのがとても印象に残っています。
(その関係で巻末の謝辞に私の名前も記載して頂いたようで本当に感激です。)
ブランドコミュニティというタイトルから、いわゆる掲示板とかグループ的なネット上のコミュニティサービスをイメージされる方も多いかもしれませんが、この本はそういう本ではなく、ブランディング自体がコミュニティを意識して行わなければならないというブランド論の本です。
ネットやソーシャルメディアの普及によりブランドの位置づけがどのように変化しているのか俯瞰的に考察してみたい方には参考になる点が多々ある本だと思います。
「グランズウェル」や「マーケティング3.0」、「次世代コミュニケーションプランニング 」等を、あわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■人がブランドについて他者に伝えようとする動機(アーネスト・ディヒター)
・製品を購入し使用する経験が非常に目新しく、有用で愉快なため、人に伝えずにはいられない(33%)
・知識や見解を伝えることで、自分の判断への同意を求めたり、自分の優越を見せつけたりする(24%)
・つきあいがよく思いやりがあり、友好的であることを表現するために情報を伝える(20%)
・メッセージそのものの内容がおもしろかったり、有益であったりするために伝える価値がある(20%)
■ソーシャルメディア関与層の分類
・クリエイター層:独自のコンテンツを創造・発信したり、自らコミュニティの運営者となる 5%前後
・エディター層:ブログや写真投稿、情報の編集・加工などを行う層 10%前後
・バリュアー層:主に情報に関してコメントをしたり、レビューを行う層 20%前後
・ブラウザー層:閲覧や視聴のみの利用を行っているユーザー層 65%前後
■マーケティングの定義の変化
・従来のマーケティング「顧客を創造する活動」
・今日のマーケティング「顧客と共に創造する」
■ユニクロ共創型ファッション体験とフィードバックループ
・スタイル共感による購買喚起
・探す:スタイル提案(広告/ブランドコラボ)
・選ぶ:ヒートテックなど(テクノロジー差別化)
・買う:リアル+オンラインストア体験
・体験価値増幅とファン拡大
・着る
・着こなす
・楽しむ
・共有する
・還元する:Uniqlo Recycle
・ファッション価値創造のコラボレーション
■マーケティングの概念モデルの変化
・形容詞のブランディング
製品にイメージで付加価値をつけて顧客を惹きつけるマーケティング手段
・動詞のブランディング
コミュニティを中核に共有された目的実現に向けて一緒に価値を生み出していくアクションとダイナミックなプロセス
■共有価値(シェアードバリュー)の3つの要素
・共有性:生活者や社会の拡がりを通じて共感・共有されうるか
・共創性:顧客と共に創り、価値がフィードバックされうるか
・参加性:顧客自身が価値創造のアクションに参加しうるか
■ブランドの共有価値を発見・定義する
・ブランドに関わりをもつファンやクリエイター層に着目する
・製品から離れて、ユーザーの生活行為・行動を発想する
・ブランドと関わるアウターコミュニティを見つけ出す
・カテゴリーを超えた企業・ブランドと顧客の関係テーマを見いだす
■プラットフォーム戦略の3つのレイヤー
・製品自体のサービス・プラットフォーム化
Nike FuelBand、スマート家電、アプリ連携
・サービスプロセスのダイレクト化/ITプラットフォーム化
iTunes、アマゾン/楽天、各種オンラインサービスチャネル
・マーケティング活動のコミュニティ・プラットフォーム構築
Nike+コミュニティ、コカコーラパーク、レゴ/デルのユーザーコミュニティ
■コミュニティ・プラットフォーム戦略のポイント
・リアルとオンラインのコミュニティを結びつける戦略設計
・プラットフォームのユーザー特性を踏まえた活用のあり方を検討
・マーケティング目的に合わせたコミュニティタイプの選択
・コミュニティプラットフォーム設計に欠かせない5つの要素
・コンテンツ
・対話性
・関係性
・共創性
・継続性
・コミュニティへの継続的な参加を促すモチベーションの設計
・自己達成
・個別化
・帰属/承認
・他者貢献
・価値共有とフィードバックサイクルの設計
■コミュニケーションプランニングの枠組み変化
・キャンペーンからの誘導による時間軸での関係作り
・メディア接触から生活者視点でのコンタクトポイント構築へ
・メディアを超えたコンテンツ開発と情報コンテクストの設計
・モノログからダイアログへの話法の転換
■コネクションプランニングの6つのステップ
・ターゲットとのコネクション。テーマ/アクションの目標設定
・コンテクスト設計/コンテンツ開発
・コンタクトポイント設計とプラットフォーム施策
・継続対話と支援によるエンゲージメント
・ユーザー共有コラボレーション促進
・フィードバックと承認/アウトプット
ソーシャル時代の ブランドコミュニティ戦略 小西 圭介 ダイヤモンド社 2013-02-01 by G-Tools |