グランズウェル (シャーリーン・リー)

479811782X 「グランズウェル」は、米国においてソーシャルメディアの専門家として非常に有名なシャーリーン・リーが書かれた書籍です。
 翻訳をされた伊東さんに献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 事例も抱負で、体系だってまとめられているので、ブログを始めとするソーシャルメディアを活用するマーケティングに興味がある方にはバイブルになる可能性がある本だと思います。
 オススメです。
 個人的にも、これまでカンバセーショナルマーケティングという言葉で表現しようとしていた世界感が、この本にしっかり整理されていると感じているので、来年はこの本を参考に日本向けのグランズウェル的アプローチを真剣に考えたいと思います。
【読書メモ】
■ストライサンド効果
 インターネットからコンテンツを削除しようとして、逆に広めてしまう現象
■グランズウェルを生んだ3つの力の衝突
・人間
・テクノロジー
・経済学
■ファストレーンは、GMのコミュニケーションを一変させた
 業界紙や高額なテレビCMだけが、顧客、ディーラー、従業員、投資家にメッセージを伝える方法ではない。GMは、彼らに直接語りかけるチャネルを手に入れたのだ。
■ソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィール
・創造者(Creators)
・批評者(Critics)
・収集者(Collectors)
・加入者(Joiners)
・観察者(Spectators)
・不参加者(Inactives)
■グランズウェル戦略の4段階のプロセス「POST」
・人間(People):顧客は、どんなテクノロジーを使う傾向があるのか
・目的(Objectives):ゴールは何か
・戦略(Strategy):自社と顧客の関係をどう変えたいのか
・テクノロジー(Technology):どんなアプリケーションを構築すべきか
■グランズウェル戦略の5つの目的
・傾聴戦略:顧客理解を深める
・会話戦略:自社のメッセージを広める
・活性化戦略:熱心な顧客を見つけ、彼らの影響力を最大化する
・支援戦略:顧客が助け合えるようにする
・統合戦略:顧客をビジネスプロセスに統合する
■グランズウェル戦略へのアドバイス
・小さく始める
・グランズウェル戦略がもたらす戦略を考え抜く
・高い地位にいる人物を責任者に据える
・テクノロジーの選択とパートナーの選択は慎重に


■傾聴戦略の二つの手法
・プライベートコミュニティを立ち上げる
・ブランドモニタリングを始める
■オンライン・プロモーター・スコア(OPS) モティーブクエスト
 ネット上の会話が、「推薦」につながる可能性を示している
■傾聴戦略を実施する理由
・ブランドが象徴しているものを知る
・バズの変化を捉える
・コストを抑えながら、リサーチの精度を高める
・インフルエンサーを特定する
・広報上の危機に対応する
・新しい製品やマーケティングのアイディアを得る
■傾聴戦略へのアドバイス
・顧客のソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィールを調べる
・小さく始めて、大きく考える
・経験豊富な専任チームをつけてもらう
・集めた情報を解釈し、他のデータと統合する仕事は上級社員に担当させる
■大企業の幹部ブログの費用対効果
・初期費
 設計・構築 25,000ドル
 執筆担当幹部のトレーニング 10,000ドル
・運営費
 ブログプラットフォーム費用 25,000ドル
 ブランドモニタリングサービス費用 50,000ドル 
 ITサポート費用 3,000ドル
 コンテンツの修正(幹部の時間を含む)150,000ドル
 レビューと修正費用 20,000ドル
 総費用 283,000ドル
便益分析
 広告価値(1日辺りのPV=7500、CPM=2ドル50セント) 7,000ドル
 広報価値(記事数=24本、1本辺りの価値=1万ドル) 240,000ドル
 クチコミ価値(記事数=370本、1本あたりの価値=100ドル) 37,000ドル
 サポート価値(電話の削減数=1日あたり50本、1本あたりの価値=5ドル50セント) 69,000ドル
 リサーチ価値(コメントを5回のフォーカスグループに相当と計算。1回の調査費=8,000ドル) 40,000ドル
 総便益 393,000ドル
※ブログの便益は、読者が商品を購入するという形で発生するわけではない。
■会話戦略をブログで始める際の注意点
・まずは耳を傾ける
・ブログのゴールを設定する
・ROIを見積もる
・計画を立てる
・練習する
・編集プロセスを構築する
・ブログをデザインし、企業ウェブサイトとの関係をはっきりさせる
・マーケティング計画を立て、ブログの認知度を高める
・ブログを書くことは、単に文章を書くことではないと肝に銘じる
・正直であれ
■会話戦略の目的と4つの手法
・認知度の問題←バイラルビデオ
・クチコミの問題←SNS
・複雑さの問題←ブログ
・アクセシビリティの問題←コミュニティ
■現代のマーケターと広告代理店が測定しなければならないのはリーチやフリークエンシーではない。そのはるか先にある「エンゲージメント」だ。つまり、見込み客がファネルをどこまで進んだかである。
■活性化戦略の3つの手法
・格付けやレビューを導入し、顧客の情熱を活用する
・コミュニティを作り、顧客を活気づける
・ファンが作ったネットコミュニティに参加し、メンバーを活気づける
■バザールボイス(格付けシステム)の費用対効果
・費用分析
 開発費(先払い) 50,000ドル
 ベンダーの運営費(年間) 25,000ドル
 社内の運営費  125,000ドル
 総費用(初年度) 200,000
・利益分析
 サイト訪問者 1000万人
 レビューを閲覧した訪問者(初年度は20%) 200万人
 通常商品の売上高(顧客転換率2.5% 1回100ドル) 5,000,000ドル
 レビューがついている商品の売上高(顧客転換率3% 1回110ドル) 6,600,000ドル
 レビューに起因する売上高の増加 1,600,000ドル
 利幅25%とした場合の利益の純増 400,000ドル
■コミュニティ運営の教訓
・B2B企業のほうがコミュニティを構築しやすい
・コミュニティが暴走する可能性と対処方法を事前に考えておく
・目的の達成状況を測定する
■活性化戦略のステップ
・本当に、グランズウェルを活気づけたいのかを考える
・顧客のソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィールを調べる
・「顧客の問題は何か」と自問する
・顧客の問題やソーシャル・テクノグラフィックス・プロフィールにあった戦略を選ぶ
・長期的に取り組む覚悟がないなら、手を出さない
■「寛容さの文化」(カテリーナ・フェイク Flickr創業者)
 「心理所得の追求」
 利他的な行動を取ることで満足感を得る人もいれば、他者から承認されたり、コミュニティに所属したりすることで安心感を得る人もいる。
■コミュニティサポートフォーラムの費用対効果
・初期費
 設計・構築 25,000ドル
・運営費(年間)
 フォーラムソフトウェアプラットフォーム 60,000ドル
 モデレーションと管理(常勤スタッフ5名) 500,000ドル
 トラフィック誘導のための広告(月1万クリック、1ドル) 120,000ドル
 総費用(初年度) 705,000ドル
・便益分析
 年間の利用者(書き込みと閲覧)(顧客の1%) 50,000人
 年間の利用者(閲覧のみ) (顧客の5%) 250,000人
 サポート電話の想定本数 300,000本
 削減されたサポート電話の本数(利用者の33%が回答を発見) 100,000本
 削減されたサポート電話の費用(1通話あたり10ドル) 1,000,000ドル
■MIKE2.0(ベリングポイント) openmethodology.com
 社内ウィキを公開することで、自社を軸に新しい知的財産が積み上げられるようにした。
 アクセス数は100万を優に超えている。
 
■支援戦略のポイント
・小さく始める
・活発な顧客にリーチする
・トラフィックを誘導する
・評判システムを組み込む
・顧客に従う
■統合戦略の参考書籍
・民主化するイノベーションの時代(エリック・フォン・ヒッペル)
・アウトサイド・イノベーション(パトリシア・B・シーボルト)
・ウィキノミクス(ドン・タプスコット)
■クレディ・ミュチュエル(もしあなたが銀行家だったら?)が成功した要因
・企業が顧客と同じ側に立っていた
・イノベーションの泉をうまく活用した
・顧客の声に耳を傾けていた
・優れたサービスを開発する責任を忘れなかった
■組織がグランズウェル的思考を取りれるためのポイント
・小さくても、効果的なステップを重ねる
・ビジョンとプランを持つ
・リーダーを巻き込む
■部門横断的な「ブログ解決チーム」を作った(デル ライオネル・メンチャカ 2006年3月)
 チームのメンバーは、カスタマーサービスとテクニカルサポートの両方のトレーニングを受けた。
 デル製品の問題に言及しているブログを見つけると、メンバーはブロガーに連絡を取り、問題が解決されるまで面倒をみた。
 ライオネルの任務は、デルが耳を傾け、行動していること、さらに重要なのは、ライオネルやデルが過ちを認めていることを、社外の人々にはっきりと示すことだった。
■自分や組織を確実に変化させるための鉄則
・小さく始める
・幹部を教育する
・適任者を戦略担当者に選ぶ
・グランズウェルを理解している広告代理店やテクノロジーパートナーと組む
・長期的な視野から、次のステップを考える
■グランズウェルの7つの教訓
・グランズウェルでは、すべてが「人対人」であることを忘れない
・良い聞き手になる
・辛抱強くあれ
・好機を待つ
・柔軟であれ
・協力する
・検挙であれ
■公式サイト
 http://www.forrester.com/groundswell

479811782X グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略
伊東 奈美子
翔泳社 2008-11-18

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