「リアルタイムマーケティング」は、「マーケティングとPRの実践ネット戦略」や「グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ」などの著作でも知られるデイヴィッド・ミーアマン・スコットの書籍です。
大昔に献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
リアルタイムマーケティングというこの書籍自体は日本で出版されたのが2012年4月と2年以上前になるのですが、「リアルタイムマーケティング」というフレーズ自体は、昨年にオレオがスーパーボールの停電の際に機転を利かした投稿を行って大きな話題を呼んだ取り組みがカンヌで受賞したこともあり、日本でも昨年から良く話題に出るキーワードになってきたように思います。
Power out? No problem. pic.twitter.com/dnQ7pOgC
— Oreo Cookie (@Oreo) 2013, 2月 4
・スーパーボウル停電で大勝利:オレオのSNS宣伝チーム
実際日本でもコカコーラさんがワールドカップ中にリアルタイムに試合の様子を元にしたツイートを行って話題を呼んでいましたが、こうしたリアルタイムな取り組みは当然それに応じて多くの人手やコストがかかってくるわけで、実際に日本で本当にリアルタイムな体制を組める企業というのは数少ないのでは無いかなと言うのが正直な印象です。
・コカ・コーラネームボトルで本田のゴールを再現した動画のクオリティが凄い!【ブラジルW杯】
オレオの事例なんか「15人からなる即応体制を組んでいた」らしいですからね。
日本のソーシャルメディアユーザー数を考えると、ここまでやるのはどうなのか、という議論は当然出るのでは無いかなと思います。
ただ、この書籍リアルタイムマーケティングで紹介されている考え方を読むと、そうは言っても今がリアルタイムに対応すべき時代に入っているということをまず理解しておくというのは重要だなと言うのは痛感できると思います。
リアルタイムマーケティングという手法をどう実施するかどうかでは無く、リアルタイムなマーケティングが必要な時代に我々はどうプランし、行動すべきか、ということを学びたいのであれば、この本は参考になる点が多々ある本だと思います。
「グランズウェル」や「マーケティングとPRの実践ネット戦略」を併せて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■United Brakes Guitars
テイラー・ギターのボブ・テイラーは、デイブの動画に対応して独自にTaylor Guitars Responds to United Brakes Guitarsを公開
■関連の動画は二回取り直しをしましたが、わたしがかけた時間は合計で約15分でした。このほかスタッフが、プラン作り、管理、投稿と言った作業に数時間を費やしましたが。
■ユーチューブの再生回数が20万を超えるころには、「デイブ・キャロル仕様旅行用ギターケース」が誕生していた。
■この間ユナイテッドは沈黙を貫いた。リアルタイムの対応をしなかったのだ。
■残念ながら、公の場で何の対応も示さず、ネット上での急激な騒動の広がりから本能的に目を背けようとする姿勢は、産業界ではいまだに嫌というほどはびこっている。
これには数多くの理由がある。「責任を認める発言をしてしまうこと」を恐れる法務部門による悪影響、最前線の担当者の動転、PR会社からの的外れな助言、「ノーコメント」で通そうとする企業文化に染まりきった幹部の石頭などだ。
■リアルタイム・マーケティング&PRのべき乗法則
ネット上では、事件が起きると瞬間的に記事の件数が跳ね上がる。以後、新しい記事の件数は急カーブを描いて減っていく。
■企業規模が大きければ大きいほど、リアルタイムの発想を身につけるのは難しい。
ほとんどの企業では走りながら考え自分から行動を起こすことは御法度なのだ。
■第2段落作成(ニュースジャック作戦)
最新ニュースの取材に出かけるジャーナリストは往々にして、記事に引きを添えるユニークな切り口を大急ぎで探し回るものだ。そうしたネタはたいていは第2段落に載る。
最新ニュースについて、すぐに旬のキーワードを盛り込んだブログ記事を書けば、記事の第2段落に取り上げられる可能性は高い。
■何より優先すべきは、あなたの会社や事業についてたびたび発言するブロガー、アナリスト、ジャーナリストなどの声をくみ取ることである。
■クラウドソーシングによって問題解決に協力した人々は当事者意識を抱く。参加を通して傍観者が支持者へと変わる。
■顧客とリアルタイムのつながりを生み出すための四つのきっかけ
・売買の成立まで
・お買い上げ直後
・顧客からの問い合わせ
・トラブルの修復とコミュニケーション
■グルーポンのようなサイトに頻繁に激安広告を出すのは、「断じて定価を払うな」と顧客に教え込むようなものだ。
■売り手やメディアの威力が強烈をきわめたのは戦後の日本である。
片手で数えられるほどのメディア複合企業と大手の広告代理店二社が実質的にすべてのメッセージを牛耳り、1億二千万人の消費者は信じがたいほど従順にそれを受け止めていた。
■マスメディアが支配した20世紀は、コミュニケーションの歴史に照らすときわめて異例の時期だった。1950年代からの60年間は、テレビが幅を利かせて一方的に情報を流すという奇妙な時代が続き、消費者には発言権がなかった。
だが、そんな時代もウェブの興隆とともに幕を閉じようとしている。
■実のところ世の中は、マスメディア文化の影響で本当のコミュニケーションが途絶える以前の状態に回帰しようとしているのだ。
■どうやってリアルタイムに対応すべき情報を選別すればいいのか。
これらの問題の背景にあるカギを一言でいえば、人間の「注意」である。
■「情報の豊かさは注意の貧困をもたらす」(ハーバード・サイモン)
リアルタイム・マーケティング 生き残る企業の即断・即決戦略 デイヴィッド・ミーアマン・スコット 楠木建 日経BP社 2012-04-26 by G-Tools |