「Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール」は、起業家養成スクールの火付け役ともいえるYコンビネーターについて書かれている書籍です。
献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
Yコンビネーターと言えば、IT系のスタートアップ界隈では知らない人はいないと言っても過言ではないぐらい有名な会社。
創設者のポール・グレアム氏は以前にこのブログでも「ハッカーと画家」という書籍を紹介しましたが、シリコンバレーだけでなく世界的なスタートアップのカリスマです。
このYコンビネーターという書籍では、そんなポール・グレアムがYコンビネーターの門を叩いた起業家の卵を、どのように叱咤激励し、育てているのか、非常に生々しいタッチで描かれています
日本においてもここ数年、インキュベーターやベンチャーキャピタルがスタートアップ専用のオフィスを開設し、起業家養成スクール形式で起業家を支援する形式が急増しましたが、その起点になっているのはこのYコンビネーターなのは間違いありません。
個人的にはそんなグレアムが「インキュベーターが提供するオフィスに閉じ込められ、息苦しい監視の下におかれては起業家に必須の独立心が窒息させられると信じている。」というスタンスだったというのにはちょっと驚きました。
表面上の起業家養成スクールという形式はコピーできても、ポール・グレアムという魂自体は真似できないわけですから、実は日本の起業家養成スクールと、シリコンバレーのYコンビネーターや500Statupsには細部に大きな違いがあるのかもしれないなと思ったりします。
起業を目指している方だけでなく、新規事業や新サービスに取り組んでいる企業の方々にも刺激になる点がある本だと思います。
「ハッカーと画家」はもちろん、「リーン・スタートアップ」もあわせて読むのがお勧めです。
【読書メモ】
■「スタートアップを始めても多分失敗するだろう。ほとんどのスタートアップは失敗する。それがベンチャー・ビジネスの本質だ。しかし、失敗を受け入れる余裕があるなら、失敗の確率が90%ある事業に取り組んでも判断ミスにはならない。40歳になって養わなければならない家族がある状態での失敗は深刻な事態になる。しかし君たちは22歳だ。失敗してもそれがどうした?」(ポール・グレアム)
■「25歳はスタミナ、貧乏、根無し草性、同僚、無知といった起業に必要なあらゆる利点を備えている」
■最新のテクノロジーを利用しようとする起業家が迫られる選択
・一般ユーザー向けにプロダクトを提供するか(自身で金を採るか)
・一般ユーザー向けにプロダクトを開発しているデベロッパー向けにソフトウェア・ツールを売るか(ツルハシを売るか)
■「われわれはきみたちをクビにはしない。しかし市場がきみたちをクビにする」
■グレアムとYCのパートナーは助言を与えるときは創業者達と生身で直接対面することを絶対の条件とした。
「ビデオチャットなんかじゃダメなんだ。スタートアップをやるというのは生易しいことではない。直に会って話し合わなくては肝心の所が伝わらない」
■グレアムはインキュベーターが提供するオフィスに閉じ込められ、息苦しい監視の下におかれては起業家に必須の独立心が窒息させられると信じている。
■「スタートアップの本質は単に新しい会社だという点にはない。非常に急速に成長する新しいビジネスでなければいけない。スケールできるビジネスでなければいけないんだ。」
■アイデアを生み出すための3ヶ条
・創業者自身が使いたいサービスであること
・創業者以外が作り上げるのが難しいサービスであること
・巨大に成長する可能性を秘めていることに人が気づいていないこと
■友だちは、友だちだから使ってくれるかもしれない。しかし彼らが新しいユーザーを連れてきてくれるかどうかが本当のテストになる。」
■急いでローンチしろ
なにかアイデアを思いついたら最小限動くモデルをできるだけ早く作れ。作りかけのプロトタイプでもかまわない。とにかく現実のユーザーの手元に届けて反応を見る。そうして初めてそのプロダクトがユーザーの求めていたものなのかどうかが分かる
■初期スタートアップへの投資家はドロップボックスのような存在に対して恐れを抱くべきだ。ドロップボックスは、これはすごい、これは有望だ、さっそく投資しようとは誰も思わないような会社だった。ところがドロップボックスはスタートアップの概念を新たにするような爆発的な成功を収めた
■「毎週10%の伸びというのは黄金の数字なんだ。それはとてつもなく高い成長率だ。1年に換算すると142倍の成長になる」
■「アパートの一室で始まったスタートアップでは、創業者たちの働く時間は不規則だし服装はこれ以上ないほどカジュアルだ。ウェブを見るのに「職場にふさわしい」かどうかなど気にする必要もなければ、敬語で話す必要もない。」
■YCの同級生達がお互いに影響を与え会うのと同様、YCの卒業生達もまたYCという学校での体験に影響を与えている。
Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール ランダル・ストロス 滑川海彦 日経BP社 2013-04-25 by G-Tools |