「情報革命バブルの崩壊」は、切込隊長BLOGでお馴染みの山本一郎さんの書籍です。
献本を頂いていたのですが、読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
金融危機がインターネットに与える影響だとか、来年以降のネット業界の課題とか可能性とかが気になる方には、参考になる点が多い本だと思います。
【読書メモ】
■情報革命の本質とは、情報そのものが増えたわけではない。情報へアクセスする方法の効率が良くなっただけである。
■ネット社会における価値は「情報」と「名声」によって集約され、価値のある情報がもたらされる島や、社会的に知見の高いとされる名声がある島は大きくなり、多くのネット人口を養う。一方、ある情報の価値というものは、その特定の分野に関心を持っている人においてのみ高まり、関心のない人は見向きもしない。
■ネット社会が一般人の購買に強い影響力を与えていることはマーケティング上多くの事例を蓄積する中で分かりつつあるが、一方で多くのネット上の工作、煽動の技法の確立という悪しき側面も見受けられるようになった。
■ネットの元から持つアングラ的なスキルや方法論が、そのままネット社会の成長と共に現実社会の消費行動に大きな影響を与え始めている。
■ソースロンダリング
ネット内でちょっとした揚げ足取りのような議論をわざと湧かせ、問題であるとネット内で批判の火をつけようとし、ある程度コメント数が揃ったところでJ-CASTに代表されるネット内メディアやZAKZAKなど夕刊紙のサイトでネット内のトピックスとして取り上げることから、社会的な炎上は始まる。
■ネット内でなぜバッシングが起きやすく、現実社会に対して批判的な言論が成立し支持されやすいのか
・ネットでのこれらの言論や風評を、具体的な検証なしに鵜呑みにする程度の社会知識しかない人がネット社会での議論で声が大きいこと
・既存のマスコミがネットに進出する過程で、ネットから情報を拾って書かれる記事が急増したこと
・私たちは私たちの見知った、専門とするもの以外は、情報の真贋など判断がつかず、自分の関心領域から外れたものの価値は、過大評価するか過小評価するしかできない、という点
■情報化社会は国民の総専門家化を促すものであり、一人の人間が持つ情報量に限りがある以上、社会にいる人間同士が価値観や考え方を共有したり相互理解することの妨げになりかねない。しかも、これを押し止めることはできない。
■我が国でも場合によってはネットの無料文化自体をどう収束させ、適正な費用をユーザーから徴収し、ネット業界全体で按分していくべきかという議論は政策レベルで為されなければならないだろう。
■ネット界隈が一般社会の価値観や秩序の枠組みに取り戻され、普通の社会の延長線上にネットがあるのであって、ネットが必ずしも「あちら側」の踏み進むべきフロンティアとは限らない、ということを、良く理解するべきだと考えるのである。
■この世界間の競争に自分たちが不利とならないよう、どのようなルールを加えるべきか、どうすれば加えられるのか、それを学ぶことこそが、混乱期を乗り切るもっとも重要なエッセンスにほかならない。
情報革命バブルの崩壊 (文春新書) 山本 一郎 文藝春秋 2008-11 by G-Tools |