プラットフォームブランディング(川上慎市郎・山口義弘)

4797373113 「プラットフォームブランディング」は、タイトルから想像できるとおり、新しいブランド戦略について考察されている書籍です。
 大昔に献本を頂いていたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 ブランドとかブランディングという言葉は、どうしても日本語では無いということもあり、なかなか綺麗に理解できないキーワードの代表だと思うのですが。
 この書籍ではそのブランドについて整理をし直すとともに、プラットフォーム発想でブランディングを再定義することを提案されています。
 共著者の川上慎市郎さんとはブログの黎明期から面識があり、メディアの構造についていろいろと教えて頂いた存在なのですが、この本もそんな川上さんならではの論理的なまとめがされていて大変刺激になりました。
 特に個人的に妙に納得してしまったのは「アンチ勝間が生まれたことは、逆に勝間和代のブランドの価値を生み出し、カツマーを増やす効果を生み出すことに貢献した。」という部分。
 アンチが騒ぐことが逆にその人を力強くすると言う、アンチの人たちが聞くとガッカリしそうな話なんですが、この辺の構造はイケダハヤトさんとか安藤美冬さんとかにもあてはまるよなぁと、しみじみ納得してしまいました。 
 いわゆる広告的なブランディングでは無く、一歩引いた構造論としてブランドを考え直してみたい方には、参考になる点がある本だと思います。
 「GROW 本当のブランド戦略について語ろう」や「マーケティング3.0」を併せて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■日本のサービス産業の生産性が国際的に低いのは、ものづくりにどっぷりつかってきた日本人の常識が通用しないからだ
■ブランドに対する3つの誤解
・ブランドは広告で形成するイメージのことである
・ブランドとは高級品のことである
・ブランドとはCI、つまりネーミングとロゴのことである
■生活者のブランド評価=体験の魅力度×体験の量・時間×体験の一貫性


■日本でスターバックスがそのブランドを認知するために膨大な広告費を使ったのかといえば、実はそうではない。日本国内での拡大期における純粋な広告投資は、上場時に新聞に出稿したIR広告のみと言われている。後は店舗立地の良さと、商品・サービスの一貫性によって強いブランドを形成したのだ。
■企業の二つのブランド戦略
・「個別適応型」商品ブランドごとに異なる価値を訴求する
・「横串啓蒙型」商品ブランドの違いを超えて横串を通すように共通の価値を訴求する
■一般の家電メーカーでは流通が量販店、系列店、ネットなど多岐にわたるがゆえに、流通において統一したデザインや接客サービスなどを徹底するのは非常に難しいことだ。だが、アップルは「購買」こそが顧客にブランドの価値を実感してもらうもっとも重要な体験の一つだと考え、生活者のアップル製品の購買体験そのものをブランド色に染めていく施策を推し進めたのである。
■アンチ勝間が生まれたことは、逆に勝間和代のブランドの価値を生み出し、カツマーを増やす効果を生み出すことに貢献した。
■ブランドのメッセージを尖らせ、あえて指示を得たい顧客とその対局にいる層との間の鏡反射の関係の中にブランドを投げ込むことで、指示を得たい顧客層の意識に強い価値を訴えかけるという手法は、実は決して珍しいものではない。
■物づくりの分野であっても、ものの価値をベースとした価値設計ではなく、生活者の体験フローをベースとした価値設計と体験の価値をいかに高めるかと言うことを目的に据えるべきであり、顧客にとっての体験価値を競争するパートナーを事業プロセスに取り込む「プラットフォーム」の発想が重要になる
■プラットフォーム構築への四つのプロセス
・生活者の感じている「大きな欠損・非効率」を発見する
・そこで提供する体験の価値を絞り込み、最大化する
・体験価値を高めるためにパートナーを引き込む
・周辺領域へプラットフォームを拡大する
■レバレッジの利いたブランド戦略を策定するための3つの視点
・商品群の横串となる共通要素に集中投資
・メディア化する商品に集中投資
・関連商品の購買につながる商品に集中投資
■関係者で全体験を共有できるようにするために「顧客体験マップ」としてとりまとめる
■ブランド知覚価値全体の構造
・ブランドターゲット:象徴的な顧客像は?
・インサイト:刺激する心の琴線は?
・コアバリュー:ひとことに集約された核となる価値は?
・パーソナリティー:人格としての印象は?
・ベネフィット:物理的/心理的なうれしさは?
・エビデンス:裏付けとなる論拠・事実・スペックは?
■企画アイデアで秀でたブランドが勝つのではなく、用意周到に顧客体験をデザインし、それに対して全社的に粘り強く投資して実現したブランドだけが、安定的に高い競争力を発揮する時代に変わったのだ。

4797373113 プラットフォーム ブランディング
川上 慎市郎 山口 義宏
ソフトバンククリエイティブ 2013-03-30

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