GROW 本当のブランド戦略について語ろう(ジム・ステンゲル)を読むと、CMOという役職の重要性を改めて考えさせられると思います。

4484131013 「GROW 本当のブランド戦略について語ろう」は、P&GでCMOとして成功を収めたことで有名なジム・ステンゲル氏の書籍です。
 昨年末に気になって買って読んでいたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 ジム・ステンゲル氏については、私自身はあまりよく知らなかったのが正直なところなのですが、米国Fortune誌の「Executive Dream Team」においてThe Dream CMOとして選出されたことがあるという背景があるように、文字通り理想的なCMOを絵に描いたような人物だと言えると思います。
 日本においてはCMOという役職がそもそも存在しない企業が多いため、どうしてもCMOという役職の位置づけがイメージできていなかったのですが、この本を読んでいるとCMOの役割は日本においては社長が担っているケースが多いような気がしてきました。
 ソーシャルメディア時代になり、本当の意味での「ブランド」というのが非常に重要になってきていると感じていますが、ブランドとは何なのか改めて俯瞰的に考えたい方には参考になる点が多々ある本だと思います。
 ジム・ステンゲル氏については書籍が出版されたこともあり、複数のインタビュー記事が公開されていますので、そちらも是非ご覧下さい。
真似したってブランドはつくれません
カンヌライオンズでの新たな挑戦とCMOの役割(その1) | 世界を代表する”The CMO”が語る
【読書メモ】 
■企業やブランドが競争に打ち勝って成長を遂げるためには、なにが必要なのか?
 それは”人々の生活をよりよいものにする”ことを目標とし、ビジネスと人間の普遍的な性質に土台を置くビジネスの枠組みだ。
■経営陣はみずからにこう問いかけることをおこたっていた
「わが社独自の強みとはどういうものなのか?顧客の頭の中で、わが社はどういうイメージをもたれているのか?」
■優れたリーダーの5つの行動原則
発見・”人々の生活をよりよいものにする”ことに関わるブランド理念を発見する。
構築・ブランド理念を軸に、企業文化を構築する。
発信・ブランド理念を社内外に発信し、社員と顧客の両方とそれを共有する。
提供・ブランド理念に沿って、理想に近い顧客体験を提供する。
評価・ブランド理念に照らして、ビジネスの進歩の度合いと社員の仕事ぶりを評価する。


■ステンゲル研究の4つの発見
・ブランド理念は、最も急速に成長を遂げているビジネスの原動力である
・最も急速に成長を遂げているビジネスは、人間にとって大切な五つの基本的価値のいずれかに関わるブランド理念をもっている
・最も急速に成長を遂げているビジネスを動かすのは、ビジネス・アーティストである。
・ビジネス・アーティスト達には、いくつかの活動に卓越しているという共通点がある。
■5つの基本的価値
・喜びを感じさせる
・結びつくことを助ける
・探究心を刺激する
・誇りをかき立てる
・社会に影響をおよぼす
■ブランド理念の木
・ブランドが奉仕する人々:注意深く選ぶ
・ブランド理念:ブランドが世界に提供する高次の恩恵
・類似化ポイント:ライバルの強みの無力化
・差別化ポイント:情緒的・合理的恩恵の提供
■メソッドの四つの問い
・それはオシャレか?
・それは高い性能を備えているか?
・それは賛同者を集められるか?
・それは粗利益率の基準を満たしているか?
■「あなたの才能と世界の需要が交わるところに、あなたの目指すべき目的が存在する」(アリストテレス)
■ビジネス・アーティストが問い続ける「四つの問い」
・わが社の未来にとって最も重要な人々のことをどの程度理解できているか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践しているのか?
・わが社とわがブランドは、どのような価値を実践したいのか?
・わが社はどのように、これらの問いに対する答えを実際の活動に反映させているのか?
■えてして、四つの問いに答えるのにとりわけ苦労するのは、数字を重んじて「現実主義的」に会社を運営していると胸を張るリーダー達だ。
■ある選択肢を選べば短期的には財務上の恩恵が見込めても、その道を選ぶことで付随的に生じるリスクがあまりに大きいと思えば、リーダーはその選択肢にノーを言わなくてはならない。
■「ソーシャルメディアとは壮大な口コミだ」
 こうした新しいメディアが登場して、嘘偽りのない高次のブランド理念がいっそう大きな力を持つようになった。
■P&Gのコミュニケーション概要
・ビジネス上の目標
・成果の評価基準
・ブランド理念や顧客層に関する考察
・コミュニケーションを通じて変えさせたい消費者の行動
■「企業がおこなうあらゆる行動は「メディア」である
 アップルの最高の広告、それはアップルストアの店舗だ」(TBWA リー・クロウ)
■ジーニアスバーでは、アップルのスタッフが「単にコンピュータを修理するのではなく、人と人との触れあいを復活させて」いる。
■ブランド理念に基づいたコミュニケーションのポイント
・コミュニケーションが成長の重要な原動力であると認識する
・コミュニケーションのおこない方を考える際は、人と人との関係を参考にする
・コミュニケーションの質を測る際は、愛情ある人間関係の質を測るときと同じ基準を用いる
・社外のパートナーにコミュニケーション戦略をゆだねる際は、個々の依頼業務ごとに、簡潔明瞭に、相手のやる気をかき立てるような指示を与える。
・社内・社外のコミュニケーション・システムを設計する際は、創造性とスピードと効率性を最大限高めることを目指す
■トヨタが重んじる指標
・販売店は夢中になっているか?
・社員は夢中になっているか?
・顧客の望んでいるものを提供できているか?
■P&Gのマーケティングスタッフがどれくらいの時間を消費者や小売店関係者と過ごしているのかを調べてみた。
 多い人で勤務時間の50%、少ない人で20%程度だろうと予想していたが、なんと平均で勤務時間の5%に満たなかった。

4484131013 本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50
ジム・ステンゲル 川名周
阪急コミュニケーションズ 2013-01-09

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