アップル 驚異のエクスペリエンス ー 顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則(カーマイン・ガロ)

4822249433 「アップル 驚異のエクスペリエンス 顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則」は、「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン」や「スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション 」等の著書で知られるカーマイン・ガロ氏の書かれた書籍です。
 献本を頂いたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 カーマイン・ガロさんとは、「スティーブ・ジョブズ驚異のイノベーション 」の出版記念イベントでお会いしたことがあり、その際に三冊目を出すならどういうテーマかという議論はしていたのですが、アップルストアを持ってくるとは思いませんでしたね。
 
 ただ、この本を読んで、実はアップルストアは始めた当初は小売を敵に回すとか専門店が上手くいくわけないとかバッシングされてたのを思い出しましたが、この本を読むと実はアップルストアの存在が今のアップルの成功の下地になっていることが良くわかります。
 従来はアップルのような「メーカー」は、商品を開発するのに専念し、売るのは家電量販店とか小売に任せるのが一般的だったわけですが、実はアップルはその構造もアップルストアという自らの世界感の象徴をつくることにより、他のメーカーと全く違う存在になることに成功しているわけですよね。
 個人的には、最近力をいれはじめているNPSを、実はアップルは昔から使っていたというのを今更知ったというのも収穫でした。
  
 アップルについて興味がないという人こそ、この本を読んでみると新しい発見が多いのではないかと思います。
 「顧客ロイヤルティを知る究極の質問」や、「ザッポス伝説」をあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■ビジョンは一文で表現すべきです。語数は少なければ少ないほどいい。
■すばらしい職場をつくりたければ、人物で採用し、研修でスキルを身に付けさせるのが一番だ
■スティーブ・ジョブズが面接で必ず尋ねていた質問
 「なにか夢中になっているものはありますか」


■アップルの採用プロセス
・複数の候補者と採用担当者、アップルストアの先輩社員をひとつの部屋に集める
 次に、4人から5人程度の小さなグループに分かれ、起こりうる状況にどう対処するのかを聞かれる。知らないことは知らないと認める謙虚さを持つチームプレイヤーを重視。
・幹部社員とトレーナー、先輩社員、総勢5人からなるチームが面接を行う。
 応募者がスティーブ・ジョブズに正面からぶつかれるかどうかという視点で見ている。
・ここまで来れば、採用になる可能性が高い。
 過去の仕事における成功体験。成功を自分一人の功績として語る人より、チームのおかげだとする人のほうが評価される。
■スティーブ・ジョブズはなくなる少し前、アップル社員に「ジョブズならどうするだろうか」と考えて欲しくないと語っている。そんなことは考えず、正しいことをしてほしい、と。
■スティーブ・ジョブズも、社内・社外、両方のフィードバックをとても大事にしており、カスタマーセンターの電話を自分で取ることもあったという。
■アップルは、ネットプロモーターシステムを使って「社員と顧客の体験をモニタリングし、改善できるポイントを見つけて対応」している。
■メイヤーは、毎日、午後4時から1時間半ほどをそのために費やしている。執務室の廊下に張られた予定表に名前を書くと、15分ほどメイヤーと面談ができる仕組みだ。
■「失敗した人に懲罰を与えるのはまちがいだ。逆に励まし、自身をつけさせなければならない」(ジャック・ウェルチ)
■アップルストアの5ステップ APPLE
・Approach 顧客一人一人をあたたかいあいさつで出迎える
・Probe 顧客のニーズを丁寧に聞き出して理解する
・Present 顧客に解決策を提示する
・Listen 課題や懸念などをしっかりと聞いて解決する
・End あたたかい別れのあいさつと次回の来店をうながす言葉で分かれる
■対応できるまで3分から5分かかると店員に告げられると、顧客の体内時計はリセットされ、タイマーがゼロから動き始める。
■なぜ気にかける必要があるのかと、必ず自問自答する
 考えるべきは自分についてではなく、顧客について、である。
■顧客を教育する
 顧客が製品を理解しやすい資料を作成する
■メッセージマップ
・ツイッターにも余裕で書けるヘッドラインをつくる
 サービスや製品の概要を70文字以内で説明できなければならない
・セールスポイントを三つ用意する
・セールスポイント毎に、取り上げるべき点を洗い出す。
■定例ミーティングで会社の価値を強化する
 四半期に1回では頻度が低すぎる。AT&Tのリテール部門では研修セッションを毎週開催している。
■スティーブ・ジョブズは、ディズニーストアの改革を担当する役員からアドバイスを求められ「もっと大きな夢を見ろ」と答えた。
■我々がこれまで正しいと教えられてきた修練や改善中心の「シングルループ学習」から脱却して、問題の背景や前提、さらには元々の目標の再定義までも考慮する「ダブルループ学習」の考え方にシフトしなければいけない。

4822249433 アップル 驚異のエクスペリエンス ―顧客を大ファンに変える「アップルストア」の法則
カーマイン・ガロ 外村仁(解説)
日経BP社 2013-01-24

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