顧客ロイヤルティを知る究極の質問(フレッド・ライクヘルド) は、NPS(ネットプロモータースコア)を理解するための必読本です。

427000147X 「顧客ロイヤルティを知る究極の質問」は、ベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏が書いたNPSの解説書籍です。
 かなり前に読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 この本は、最近ソーシャルメディア関連の効果測定の手法としても話題に出ることが増えてきたNPS(ネットプロモータースコア)のバイブルということができる本です。
 私個人がNPSについて興味をもったのは3年ぐらい前にツイッター関連のイベントでデルさんと無印良品さんとパネルディスカッションをご一緒した際に、NPSを指標としているという話を聞いたからなのですが、実は米国ではNPSはかなり多くの企業の経営指標として使われるようになっていて、人事評価と連動させている企業も少なくないようです。
 NPS自体の解説はこちらのページに出ていますが「ネットマーケティング・キーワード – NPS とは:ITpro」、要は「あなたはそれを友人や同僚に薦めたいと思うか?」という問いに対する答えを、0~10の11段階で調査。10~9をプロモーター(推奨者)、8~7をニュートラル(中立)、6以下をデトラクター(非難者)に分類する。プロモーターが占める%比率からデトラクターが占める%比率を差し引いた%数値をNPS指標とするもの。
 一件日本でもよくある5択の質問が11択になっているだけのようにも思われるかもしれませんが、明確にポイントでプロモーター、ニュートラル、デトラクターと分類して、それぞれの傾向を深掘りして対策をしようとPDCAを回す点が大きな特徴でしょう。
 実はAMNでも今年からNPSを導入してみているのですが、確かになかなか興味深い結果が出てきます。
 顧客のロイヤリティーや満足度の測り方に悩んでいる方はもちろん、ソーシャルメディアの効果測定に悩んでいる方にも参考になる点が多い本だと思います。
 「グランズウェル」や「エンパワード 」とあわせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■悪しき利益と良き利益
 顧客とのリレーションシップを犠牲にして得られる利益が悪しき利益なのである
■悪しき利益の悪影響は、そのほとんどが、悪しき利益が作り出す「批判者(デトラクター)」の手によってもたらされる。
 あまりのひどさに、こうした顧客は購入額を減らし、可能ならば競合他社に乗り換える。また、そんな思いをさせた企業を避けるよう周囲に警告を発する。
■推薦者(プロモーター)
 満足客たちは、実質的にその企業のマーケティング部門の一部となり、みずから購入額を増やすだけでなく、人にも熱心に推奨してくれる。


■CEOがどう考えていようとも、財務会計の指標を業績評価の柱に据える企業は、ロイヤルティは無用、リレーションシップも無関係、顧客第一ではなく利益第一の顧客対応をすべしと判断しているのに等しい。
■業績を測定する尺度が財務的指標だけであれば、幹部は利益だけしか見ようとしない。
■NPS ネットプロモータースコア(推薦者の正味比率)は以下の数式で算出される
 推薦者(P)-批判者(D)=NPS
■平均的顧客の生涯価値の算出(顧客ロイヤルティのマネジメント)
 典型的な顧客リレーションシップ継続期間中に発生するキャッシュフローの合計額を算出し、次に、それを合理的な割引率で現在価値に割り戻す
■推薦者と批判者を分かつ要因
・顧客維持率
・マージン
・年間購入額
・費用対効果
・クチコミ
 否定的なクチコミの80%から90%を発信するのは批判者である
■肯定的なクチコミの計算手順
・新規顧客の25%がデルを選んだ主な理由として推奨を受けた
 400万人の内、100万人はクチコミによりもたらされたことになる
・新規顧客の価値は一人あたり平均210ドル
 100万人の新規顧客は、デルにとり2億1000万ドルの価値
・肯定的なコメントは4000万件
 肯定的なコメントの価値は一件あたり5.25ドル
・推薦者は平均すると年間8人に肯定的なコメント
 推薦者が発する肯定的なコメントの価値は年間42ドル
■顧客満足度管理の本格的導入
・顧客満足度の点数を自社の表彰制度と連動
・業務月報の様式を顧客満足度が目立つように改め、各支店の店数を純利益のすぐ横に並べて掲載
・徹頭徹尾、とにかくコミュニケーション
・社内で行うスピーチは、必ず顧客満足度を主題に
・昇進要件として平均を上回る点数が必要とされた
■相互評価制度
 毎週月曜日の開店前、前週の顧客サービスの質に基づき同僚全員に1位から最下位まで順位をつける
 投票結果は集計され、全員の目に届くように貼り出された。
 肯定的なコメントをすること、順位の根拠を説明すること、良い行動と悪い行動の具体的事例を挙げること
■各自が責任感を持って変革を起こそうとする気運を高めるためには、公開投票方式が最も効果的
■顧客サンプルを無作為に抽出すると、利益に対する貢献が全体の10%に満たない顧客からのフィードバックが、ほぼ確実にフィードバック全体の80%を上回ってしまう。
 最重要顧客は、普段からいつでも大口個人顧客の担当者に直接意見を伝えられるため、こうした調査にわざわざ応じないのである。
■測定の七原則
・究極の質問を尋ねる。それ以外の質問は極力減らす
・有効な評価尺度を選び、それを使いつづける
・的確な顧客からの回答率を高める
・財務データと同じ頻度で、顧客リレーションシップのデータを報告する
・調査単位が細かいほど社員に責任を持たせられる
・正確さを守りバイアスを取り除くために監査する
・顧客の採点と顧客行動との相関を実証する
■顧客グリッドによる良き利益と悪しき利益の分類
 縦軸は高収益の顧客と低収益の顧客
 横軸は究極の質問に対する顧客の反応
■顧客増加のために優先的に実施すべき事項
・重点顧客に投資すること (収益性が高い推薦者)
・悪しき利益を減らすこと (収益性が高い批判者)
・新たな推薦者を見つけること (収益性が低い推薦者もしくは集積性が高い中立者)
■指標が顧客体験に焦点を当てたものでなければならないのとまったく同様に、社員向け報奨制度も、顧客体験に焦点を当てたものでなければならない。
■利益予算の枠内で活動することを期待されているが、利益を最大化しても部員は報償を得られない。その代わり、顧客体験を改善すると報償が得られるようになっている。
■顧客の苦情や提案を傾聴し対応するというだけのことが、顧客を喜ばせる一大要因であることが判明した。
 非建設的な形で怒りを発散し続けるのを静観するより、問題解決に協力してもらう方が得策
■規制の強化など無用である。成文化された規則なら、すでに山ほどある。
■社員全員による年二回の投票制度(ベイン)
 チーム・リーダーの行動が、「顧客にとって正しい方向を提示する」という基本理念に即したものだったかどうかを、社員が無記名投票で審査する制度
 リーダーの昇進要件にもこの投票結果が組み込まれている。

427000147X 顧客ロイヤルティを知る「究極の質問」 (HARVARD BUSINESS SCHOOL PRESS)
フレッド・ライクヘルド 鈴木 泰雄 堀 新太郎
ランダムハウス講談社 2006-09-27

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