「ベロシティ思考」は、世界最高峰のクリエイティブエージェンシーであるAKQAを率いるアジャズ氏とNIKEのデジタルスポーツ担当副社長であるステファン氏の掛け合いという形で書かれている書籍です。
さとなおオープンラボで課題図書になっていたので買って読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
この書籍のタイトルになっている「ベロシティ」は早さとかスピードという単語みたいなので、ベロシティ思考というのはスピード思考的なタイトルなわけですが。
早く考えろと言うよりも、インターネットやソーシャルメディアの普及によって全く別次元のスピード感覚になったマーケティングやコミュニケーションの世界において、いかに考えるべきかという問題提起をしている本だと言えます。
AKQAといえば、時代を代表するクリエイティブエージェンシーとして日本の広告業界でも非常に有名で、レイ・イナモトさんの「広告の未来は広告ではない」というプレゼンテーションが非常に話題になりましたが、このベロシティ思考には日本版特別寄稿としてレイ・イナモトさんのこの「広告の未来は広告ではない」も収録されています。
実際問題、AKQAの人とNIKEの人の対談なわけで、マーケティングや広告領域が中心の本ではあるんですが、意外なほど広告のテクニック論の話ではなく、思考法を根本から変える話が中心になっているのが印象的です。
AKQAのようなクリエイティブエージェンシーが、従来型の広告代理店と何が根本的に違うのかを理解したい方には参考になる点が多い本だと思います。
「明日のコミュニケーション」や「コミュニケーションをデザインするための本」、「マーケティング3.0」を合わせて読むのもお薦めです。
【読書メモ】
■「新しいことはチャンスであり、脅威ではない」
■ベロシティを味方につけるための7つの原則
・銃の前では、最強の手札も無力になる
・行うは易し、言うは難し
・最高の広告は、広告ではない
・手軽さは、正しさの敵である
・そこに「人」がいることを忘れずに
・最高のジョークも、会議にかけるとダメになる
・自分自身よりも大きな目標を持て
■「収益をあげるためにサービスをつくり出しているのではありません。より良いサービスをつくり出すために収益をあげているのです」(マーク・ザッカーバーグ)
■顧客との接点は、ほとんどすべてデジタルになってきている。だからどのブランドもソフトウェアカンパニーになる必要性が出てくるだろうね。
■「90%のユーザーが、90%の精度で、箱から出してすぐに使えるものでないと形になっているとは言えないですね。」(スティーブ・ジョブズ)
■nikeplus.comにご意見をお寄せ下さいボタンをつけたことで、参考になるコメントが1日1万5000件も寄せられる。
■成功している企業は、規模がまだ小さくて顧客との距離が近かった頃にもっていた「露天商メンタリティ」を失わずにいるんだ。
その対極にあるのが、お客さんとの交流を持たなくなった「大企業的アプローチ」
■「広告は、平凡な製品やサービスをつくってしまったことに対して、あなたが支払う代償である」(ジェフ・ベゾス)
■広告の成果の基準
・エンゲージメント
・ブランドクオリティの向上
・売上の増加
・株主価値の増加
・プロセスの効率化による経費の減少
■総意による決断と賢い決断には、たいてい負の相関がある(ジェームズ・コリンズ)
■今日、最大にして唯一のチャンスは「製品やサービスを購入してもらった時点で、消費者との関係が始まる」ということだ。
AIDMAモデルでは、消費者を繰り返し引き戻すためのマーケティングに対して、延々と投資を続けなければならなかったけれど。現在は、ほとんどすべての製品やサービスを充実させ、本当に意味のある体験を作り出せるようになった。
■広告の未来は広告ではない
・マス広告ではなくソフトウェア
・メディアではなくプロダクト
・ブランドの物語ではなくブランドの行動
・キャンペーンではなくプログラム
・360ではなく365
ベロシティ思考-最高の成果を上げるためのクリエイティブ術- アジャズ・アーメッド ステファン・オランダー レイ・イナモト(日本版特別寄稿) 白倉三紀子 パイインターナショナル 2012-08-08 by G-Tools |