最新技術はそれ単体では何の意味も無く、利用者の行動や生活スタイルをどのように変えるかを考えて初めて革命になるという話。

 現在、沖縄で開催されているブランドサミット2013に参加中なんですが、初日に実施された基調講演が盛りだくさんだったので忘れないうちにメモしておきたいと思います。
130522shelly0.png(Photo by Mike Honma)
 初日の基調講演に登場したのはシェリー・パルマー氏。
 FOXテレビでも冠の番組を持っているデジタルご意見番的な方です。
130522shelly1.png
 今回のセッションでテーマとなっていたのは「The Connected World」
 「つながった世界」とでも訳すべきでしょうか。
 先日紹介したブライアン・ソリス氏の「エフェクト」にも定義されている「つながる消費者(Connected Customer)」のキーワードもプレゼンで出てきましたが、米国においてはこの「Connected」というのが未来を示す一つのキーワードになってるようですね。
 パルマー氏のプレゼンの中では、Google Glassや最近話題のヘルスケアガジェット系をはじめとした数々の最新技術が紹介されました。
 ある意味プレゼントしてはSF的未来の紹介プレゼンなのですが、パルマ-氏が何度も繰り返していたのが、これらの技術は未来の話ではなく実はすでに「今」使えるということ。(やたらと日本語で「イマデショ」を繰り返していたのが印象的でした)
 例えば事例として出てきたサイトにはこんなものがありました。


130522shelly4.png
 まず個人的に最も印象に残った、プログレッシブ社の自動車保険。
 ログを取るツールをクルマにつけて一ヶ月運転してもらい、ドライバーに実際の運転履歴を元に、保険料を計算するという仕組みです。
 現在年間の運転距離とかで保険料が変わる仕組みとかありますけど、せっかくログデータ取れるんだから、それを直接保険料と連動した方が、ある意味ドライバーの安全運転促進にもつながる可能性があるわけです。
130522shelly2.png
 こちらはおむつの定期購入サービス。
 何で今まで無かったんだろうぐらい普通のサービスですが、店頭におむつを並べるのが当たり前になっている小売りやメーカーの方は意外に思いつかないというのがポイント。
130522shelly3.png
 一見普通のファッション店舗なんですが、店では商品は変えなくてオンラインから配達するという店をショールームにしてしまったbonoboの事例。
 これなら在庫管理とかすごいシンプルになりますよね、目から鱗。
130522shelly5.png
 
 ウォルマートのセルフレジ、
 日本でもセルフレジは増えてきたように思いますが、スマホのアプリに購入商品リストが記録されることにより、買ったものの成分とかカロリーとか分析しやすくなる点に非常に可能性を感じます。
 一個一個のサービスを見ると、ふーーーんっていう話ではあるんですが。
 こういう生活者のライフスタイルや行動習慣自体を根本から変えてしまう変化が次々に起こり始めているというのがポイントでしょう。 
 パルマーさんが強調されていたのは、「最新技術は技術単体では意味が無い」ということ。
 重要なのは「技術によって消費者の行動を変えることができるかどうか」だという点です。
 パルマ-さんは「指数関数的成長の時代」と表現していましたが、現在技術の進化から普及までのペースがすごい速くなってるんですよね。
 10年前にSFだと思っていたサービスが、現実の技術で実現可能で、実はぼやぼやしていると関係ないプレイヤーがそのサービスを始めてしまい、利用者の生活スタイルを根こそぎ変えてお客さんを持って行ってしまうかもしれない時代な分けです。
130522shelly6.png(Photo by Mike Honma)
 パルマ-さんからは「日本は年長者を尊重する文化かもしれないが、変化は若い世代からやってくる」というエールがQ&Aの時に送られましたが。
 実際、日本企業が世界で勝ち抜いていくためには、日本の消費者の生活スタイルを率先して変えていき、その生活スタイル自体を世界に広げていくという新規カテゴリー創出の視点が必要なんだな、と改めて感じます。
 パルマ-さんの書籍は電子版で日本語で読めるようですので、興味がある方は是非どうぞ。

B00CTMJXFA デジタル・ウィズダム ~オンライン世界の新しいデジタル・リーダーたちへ~
シェリー・パルマー 西谷大蔵
ヒトメディア 2013-05-15

by G-Tools