書籍「エフェクト」は、先日の「ソーシャルメディアの使い分けのあるべき姿」というブログでも紹介したブライアン・ソリスさんが書いた本です。
イベントに参加した際に献本を頂いたので、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
ブライアン・ソリスさんは、先日のブログ記事でも紹介したとおり、米国でソーシャルメディアやデジタルPRとかに携わっている人であれば知らない人はいないと言っても過言ではない有名人。
個人的にも非常に参考にさせてもらっているブロガーでもあるのですが、この本が日本で出版されないので一時出版社に自分でかけあおうかと思ったことがあるぐらいです。
実はこの本は「エフェクト(EFFECT)」といういかにも洋書っぽいタイトルがついていますが、元々の書籍のタイトルは全然違います。
それがこちら。
「The End of Business As Usual」、直訳するなら「これまでのビジネスのやり方の終わり」という感じでしょうか。
実はこのタイトルでピンと来る人はかなりのネットの歴史通なんですが、実は日本では「これまでのビジネスのやり方は終わりだ」という本が、2001年に出版されているんですよね。
この2001年の本の原題は「クルートレイン・マニフェスト(The Cluetrain Manifesto)」、ドク・サールズやデビッド・ワインバーガーという米国で非常に有名なブロガーというか論客が執筆した本で、今で言うソーシャルメディア的なインターネットの可能性を予見していた書籍。その副題が「The End of Business As Usual」なんですよね。
この10年ぐらい、日米のネット事情を比較しながら、いろんなことをウォッチしていた人間からすると、いろんな議論が一周して整理された、そんなシンボルになっている書籍がこのブライアン・ソリスさんの「The End of Business As Usual」こと「エフェクト」なのではないかという感じを受けていたわけです。
詳細は本を読んで頂く方が良いと思いますが、この書籍でブライアン・ソリスさんはわざわざ日本企業向けに一章特別に書き起こしてくれています。
そこで提案されているのが「日本企業がもう一度、”未来の企業”になるためには、商品をデザインする時代から、顧客の体験をデザインする時代に適応していかなければならない。」というメッセージです。
インターネットの普及やテクノロジーの進化により、ビジネスにおける競争のポイントが、「良い商品を作る」というモノ自体を中心にしていれば良かった時代から、顧客の体験自体をデザインしなければいけない時代に変わっている。だからこそ、企業は戦略から顧客とのコミュニケーションの取り方まで根本的な見直しをしなければいけない時代に来ているわけです。
一昔前に無敵を誇っていた日本企業が次々に経営不振に陥っているのは、別に経営者の能力の問題だけでは無く、過去の成功体験自体を捨て、文字通り「これまでのビジネスのやり方を終わり」にして、ゼロから自社の戦略やビジネスモデルを考え直さなければならない時代になっているからなんですよね。
米国の事例が中心になっているため、日本企業の参考にならないと思われる方もいるかもしれませんが、本質的なメッセージは日本企業にこそ参考になる点が多々あると思いますので、ソーシャルメディアの技術的な変化にまどわされずに、顧客の本質的な変化とこれからのあるべき姿を根本から考えたい方には参考になる点が多々ある本だと思います。
日本企業の経営者の方々にも是非読んでほしい一冊です。
なお、「経験経済」や「ネットプロモーター経営」を合わせて読むのもお勧めです。
【読書メモ】
■日本企業がもう一度、”未来の企業”になるためには、商品をデザインする時代から、顧客の体験をデザインする時代に適応していかなければならない。
■私たちはフルタイムのブランドマネージャー
ネット上の自分自身の存在がブランドであって、ほかの人に自分がどう語られているのかについて、つねに注意を払っていなければならない。
■大切なのは、フェイスブック、グーグル+、ツイッターに注力することではない。ネットワーク上にいるさまざまな顧客グループを特定し、知恵をしぼり、望ましい反応や結果を得るための逆行分析を行うことだ。
■インフォメーションコマースの3C
・クリエーション:情報コンテンツの想像
・キュレーション:情報コンテンツの分類・整理・共有
・コンサンプション:情報コンテンツの消費
■つながる消費者は、以前よりもずっと自己規制ができるようになり、ソーシャルグラフの数ではなく、質を重視するようになっている。
インバウンド情報への要求が増え、パーソナライズ化と適合性が求められるようになり、コンテンツが重視される時代は終わった。
■インタレストグラフ理論
・インタレスト+シグナル:インタレストグラフ
・ソーシャル+シグナル:ソーシャルグラフ
・インタレスト+ノイズ:情報の一般化
・ソーシャル+ノイズ:ソーシャルの変形
■ピープルランクとヒューマン・アルゴリズム
ページランク同様、ソフトウェアが個人の活動を追い、個人をランクづけして、ピープルランクはとても適切なものとなった。
■ソーシャルキャピタルの7つの特質
・適合性
・権威
・一体感
・近接
・信頼
・人気
・善意
■クラウトのインフルエンサープログラムの姿勢
「私たちはみなさんのツイートを買うつもりはありません。みなさんが商品の提供を受けられるのは、影響力をもち、商品に関する話題に権威を持っているからです。」
■影響力チャート
【ソーシャルキャピタル】
・リーチ(到達範囲)
人気、近接、善意
・レリバンス(適合性) → レゾナンス(共鳴)
権威、信頼、一体感
→焦点型コミュニティ
→拡散型コミュニティ → 影響力
■結果としての影響力の測定も重要ではあるが、適合性の高い人々を特定することに焦点を当てるのか、関連性のある人々で構成されるネットワークに広く到達することに焦点を当てるのかなど、どこに焦点を合わせて調査するのかの検討も重要である。
■ソーシャルコマースの5つのC
・コンテンツ
・会話
・コネクション
・継続性
・コマース
■誘因力と親和力の法則
・つながる消費者の関心の特定
・意図と目的の定義
・個性と存在感の確立
・体験のシェアのデザイン
・ローカライズと適応
・本気のコミュニケーション
・本来の使命と目的
・認知とリワード、参加と愛着
・聞き、学び、変化の承諾
■つながる消費者の意思決定サイクル
・フォーミュレーション
関心を呼び起こし、つながる消費者が選択を煮詰める過程
・購入前
最初の考えにもとづいて、リサーチを行い、最初の選択肢を正しいと確認し、新たな選択肢を加える。
・購入
意思決定が行われると、消費者の旅が始まる。タッチポイントが顧客体験を作る。
・購入後
つながる消費者は商品と絆を結ぶが、その強さがロイヤルティやアドボカシーになる。
■4つのAは顧客をインフルエンサーや支持者に変える
・行動(Action)
・助言(Advisory)
・親近感(Affinity)
・支持(Advocacy)
■エンゲージメントの四つのタイプ
・ソーシャル的に賢い
・従来型のエンゲージメント
・有望顧客
・慣習的顧客
■「もし、お客様が靴を探していて、合うサイズがなければ、在庫がある競合先を紹介するのが私たちのポリシーの一部だ。」(ザッポス)
■「寄付金を募るのではなく、お客様を慈善家に変えることによって、真に持続可能な企業へ成長する」(トムス)
■「もし、きみが私のところへ来て、モバイルやソーシャルメディアのための予算とリソースを要求したら、毎回、却下するだろう。もし、それを私たちのビジネスの優先事項や目的に結びつけて、エンゲージメントがいかに顧客関係を前進させ、改善させるかを示せば、きみはそのたびに予算とリソースを勝ち得るだろう。ニューメディアが私たちの企業にとって成功への鍵となるのはまちがいない。ただ、どうすればいいのかを示してほしい」
■日本は過去50年間に、多くの業界において推進力を創出してきたが、いまは絶え間ない経済の変化に対する適合性を見つけようともがいている。実際のところ、伝統的なビジネスモデルと哲学が、市場の変化に対する財政的、文化的障害となっていると考えられる。これを変えなければならない。
■未来の企業にとって、もう一つ重要なことがある。
それは、商品ロードマップに恒常的で迅速なイノベーションを導入するか、あるいはアップルのように商品戦略をまったく新しいエコシステムへと転換することである。
エフェクト 消費者がつながり、情報共有する時代に適応せよ! ブライアン ソリス 金山 明煥 かんき出版 2013-05-11 by G-Tools |