ネット・プロモーター経営(フレッド・ライクヘルド他)はNPS(ネットプロモータースコア)導入のためのバイブルといえる本だと思います。

4833420333 「ネット・プロモーター経営」は、「究極の質問」の著者として知られるベイン・アンド・カンパニーのフレッド・ライクヘルド氏が書いた書籍です。
 ちょっと前に買って読んでいたのですが、遅ればせながら書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 前著の「究極の質問」を読んでから、すっかりNPSに興味をもつようになり、AMN自体にも導入してみたり、AMNがお手伝いしている企業のソーシャルメディア活用の効果測定に活用してみたり、様々なNPSの勉強会にお邪魔したりしてみているのですが、知れば知るほど奥が深い指標だなとつくづく思います。
 そんなこんなで私自身もNPSを活用している事例としてインタビューをして頂いたりもしましたが。
ソーシャルメディアバブルの「悪しき利益」体験から、NPSの探求を通じて原点に回帰するまで
 今回の「ネット・プロモーター経営」では、NPSを単なる「ネットプロモータースコア」という点数ではなく「ネットプロモーターシステム」という経営のための仕組みとして活用することが明確に提案されているのが非常に印象的です。
 実際、NPSをいろんなシーンで使ってみていますが、NPSを重視できるかどうかと言うのは実は経営理念と直結している点が非常に大きいと感じています。
 いわゆるマスマーケティング的に、とにかく認知やリーチを重視している場合、正直個々の顧客のNPSを測定している暇があったら、もっとリーチを稼ぐ方に集中した方が良いという結論が出るでしょう。
 一方で意識をNPSに集中するようになると、一人一人の顧客が本当に満足しているかどうかの方がはるかに重要になり、満足しない顧客にリーチする行為自体がリスクに見えてきます。
 実際には物事はそんなにシンプルではなく、B2Cの大企業が売上を上げていくには両方の活動が不可欠だと思いますが、B2Bの企業の中にはNPSにフォーカスする過程で新規顧客への飛び込み営業をやめ、既存顧客への営業活動のみに注力するという英断をしている企業もいるようで、ネットの普及により口コミのパワーが増した結果、既存顧客の満足度に集中することが結果的に新規顧客獲得に繋がるというサイクルがより明確にまわる可能性が見えてきているように思います。
 NPSに興味があるという方は、「究極の質問」と合わせて読むのがお勧めです。
【読書メモ】
■なぜロイヤルティの高い顧客を追求すべきか?
 ロイヤルティの高い顧客は何度も自社に戻ってきて製品やサービスを購入し続け、友人に紹介し、貴重なフィードバックを提供し、サービスにかかる費用が抑えられ、価格にそれほど敏感ではないからだ
■リーダー自ら顧客志向を標榜しているにもかかわらず、日々追いかけて、議論し、管理しているのは、やはり財務指標なのだ。
■批判者に対する推奨者の比率が業界内で最も高い企業は、一般的に高い利益と健全な成長を享受している。
■推奨者と批判者を分かつ要因
・顧客維持率
・価格
・年間購入額
・費用対効果
・クチコミ


■忘れてはならないのは、通常、紹介客自身の経済性も著しく高いことである。しかも紹介客は推奨者になりやすく、それが推奨の好循環を加速していく。
■エンタープライズレンタカーの事例
・推奨度の点数と社内の表彰制度を連動させることにした
・推奨度を強調するように月次の業務報告を再設計し、純利益の数字の隣に支店の推奨度の点数を乗せることにした
・社内で話をするときは必ず推奨度を主要テーマとするなど、コミュニケーションを徹底した
■NPSの原則
・究極の質問を尋ね、それ以外の質問は極力減らす
・有効な評価尺度を選び、それを使い続ける
・自社顧客調査のスコアと外部調査のスコアを混同しない
・適切な顧客からの回答率を高めることを目指す
・財務データと同じ頻度で、NPSの報告や議論を行う
・調査単位を細かくして、より速く学習し、責任を持たせる
・正確さを担保し、バイアスを取り除く
■NPSを成功させるための3つの鍵
・シニアな経営陣、特にCEOが個人的にNPSを通した顧客ロイヤルティの改善を、きわめて重要な優先事項として受け止めている
・NPSの顧客フィードバックを組織全体の主要な意思決定プロセスに組み込み、学びと改善のクローズドループをつくっている
・短期的なプログラムや取り組みとしてだけでなく、企業文化の変革と成長にいたる長期的な道のりとしてネット・プロモーターに取り組んでいる
■ネット・プロモーター・システムの二つの柱
・経済性:NPSの考え方によって顧客ロイヤルティに投資を行い、その投資収益率を計算する
・動機付け:自分達がうまくいっているのか、まだ不十分なのか、なぜそうなのかといった理由を明らかにしてくれる
■経営者は、NPSの動機付けの側面について見過ごしがちである。自ら推奨者になるくらい従業員をやる気にさせて関与させなければ、ロイヤルティの高い顧客の創造など不可能だということを、つい忘れてしまうのだ。
■「あなた自身の母親だったら、こんなあつかい方をするだろうか」
 
■アップルのクローズド・ループを実現するための電話対応
・批判者に1時間電話したときに得られる追加売上高が1000ドル以上になる
・取り組み初年度で2500万ドルもの追加売上高を生み出す
・(この数字には批判的な口コミを避けられたことによる効果は含まれていない)
■eNPSのスコアは、顧客のNPSがタイトルよりもかなり低くなる傾向がある
 従業員は、会社に対して顧客以上に高い期待水準を持っている
■10点の壁
 批判者の持つ否定的なエネルギーに組織が飲み込まれないよう、10点をつけた顧客を重点的に取り上げることにし、推奨者からのコメントをそっくりそのまま壁に貼りだした。
■NPS進歩のために不可欠なポイント
 顧客フィードバックを毎日の通常業務に組み込み、個々の顧客と話をして「クローズド・ループ」をつくって適切な処置をとること
■顧客コミュニティ
 企業の製品やサービスについて定期的にフィードバックを提供するグループ
■NPSの採用におけるリーダーの選び方の三つのガイドライン
・リーダーは適切なスキル、経験、個人的な資質、エネルギーがなければならない
・どこで最大の変革を起こさなければならないかを考え、それに応じて取り組みを組織化する
・変革リーダーはCEOまたは重要な事業部門のゼネラル・マネージャーの直属
■NPSの活用に優れた企業は、絶えずIT能力を増強していく必要があることを認識している。
・ラックスペースは、二ポイント以上スコアが変動した回答者についても警報を発する必要があると考えた。
・ある顧客を繰り返し訪問する担当者は全員、携帯端末でそれがリピート顧客であることを確認できるようにした
■NPSに対する段階を判断するための質問
・少なくとも一年に一度NPS調査を受ける顧客比率は何%で、どのくらい回答が戻ってくるか?これらの顧客は売上高の何%を占めているか?
・クローズド・ループを用いて、フォローアップのために48時間以内に連絡をとっている批判者は何%にのぼるか?連絡をとった人々のうち、講じられた対応に満足した人はどのくらいいるか?
・所属部門の現在のNPSとその目標をしっている従業員はどれぐらいいるか?また、その目標を達成するために必要な最も重要な改善点を一つ挙げることのできる従業員はどのくらいいるか?
・ターゲット顧客セグメントの中で、推奨者と批判者の顧客生涯価値の違いはどのくらいか?
・推奨者を増やすために最も重要な取り組みは何か?推奨者一人を生み出すためにかかるコストはどのくらいか?

4833420333 ネット・プロモーター経営 〈顧客ロイヤルティ指標 NPS〉 で「利益ある成長」を実現する
フレッド・ライクヘルド ロブ・マーキー 森光 威文
プレジデント社 2013-01-29

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