コンビニや飲食店の冷蔵庫バカ写真炎上騒動が連鎖し続ける背景にある8つの要因

 さて、ブロガーサミット絡みで、ブログとかソーシャルメディアのポジティブな面ばかり続けて書いている今日この頃ですが。
 当然個人が情報発信できるようになったことのデメリットというのは明確にあります。
(※冷静に記事を読み返すと、タイトルと内容の乖離が激しいのでタイトル変えました。元のタイトルは「個人がソーシャルメディアで情報発信できるようになったことのメリットの裏返しが「バカの可視化」であるという現実」でした。)
 その中でもタイミング的に注目されている話題なのが、従業員やアルバイトが勤務先でふざけた写真をあげることによって会社自体がダメージを被るというケースでしょう。
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 まぁ、ここしばらくの記事だけ並べてもこんなにあります。
7月15日 「コンビニのアイスケースに入ってみた」写真炎上でローソンが謝罪 問題の男性は解雇、当該店もFC契約解約へ
7月20日 「香川真司が来た」店員が防犯カメラ画像流出、ファミマが謝罪
7月25日 「コンビニのアイスケース入ってみた」画像炎上で今度はミニストップが謝罪 アイス類撤去→ケース入れ替えへ
8月2日 今度はバーガーキングで…… 炎上中の「バンズの上に寝そべってみた」写真についてバーガーキングが謝罪
8月4日 従業員が冷蔵庫に入った写真で炎上、ほっともっとが謝罪
8月5日 また炎上……今度は丸源ラーメンが謝罪 調理前のソーセージをくわえてTwitter投稿
8月6日 バイトが冷蔵庫入って写真撮影→炎上 今度はステーキのブロンコビリーが謝罪
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 これ、ほとんどITmediaねとらぼの記事なんですが、ここまで並ぶとそのうち炎上だけをネタにしたカテゴリができてしまいそうな勢いです。
 直近の記事のサブタイトルが「炎上、炎上、また炎上」となっていますが、まさに文字通りですね。
 この現象に関しては、すでに様々なブログで議論されてますが個人的に特に印象に残ったのはこちらの二つ。
「うちら」の世界 – 24時間残念営業
「バカが可視化される時代」とどう向き合うか – 脱社畜ブログ
 24時間残念営業さんでは、当事者に近い業界にいる立場の視点から、こういう炎上事例を引き起こす人たちを「うちら」で完結する「彼ら」と呼び、こういう人たちが日本には一定数いて、こういう出来事は続くだろう、と断じていますし。
 脱社畜ブログさんでは、「バカが可視化される時代」になったからこういうことが起こるようになったわけで、同じく対処は難しいだろう、と論じています。
 
 実際、私自身も上記に納得感がありますが、ただこの短期間の炎上の連鎖感は、ある程度人為的に作られたものだとも思います。
 なぜこの短期間にこれだけ似たような炎上事例と企業の謝罪のケースが連続して発生したか。
 それには下記の8つの要因が複雑に絡みあっているように思います。


■1.もともと、こういう「バカな行為」をする人は今までもいた。
 これは多くの人が指摘しているポイントで、議論の必要は無いでしょう。
 私自身も15年以上前にファミリーレストランや居酒屋チェーンでアルバイトしていたことがありますが、大学生のアルバイトが中心に運営されているわけで、当然大なり小なり様々な悪ふざけは良くありました。
 ただ、昔はバカな行為をしても、ブログとかツイッターなんてなかったし、写真でそれを公開するなんてできもしないので、せいぜい店長に見つかったら怒られるぐらいで済んでたわけです。
■2.ソーシャルメディアにより、「バカな行為」が可視化されるようになった。
 それが、ソーシャルメディアにより、可視化が容易になります。
 今までは仲間内でバカなことをしていたのを、ネット上に公開することができるようになったわけです。
 何でそんなバカなことするの?という疑問に対しては、24時間残念営業さんが指摘されているように、そういう人たちは「楽しいから良いじゃん」ぐらいの感覚なんだから、仕方が無いという回答しかないという話なんだろうなと思います
 実際、2007年にも「吉野家、「テラ豚丼」動画騒動で謝罪」というニュースがあるように、アルバイトが引き起こすトラブルは今年始まったわけではありません。
■3.一部の人はソーシャルメディアは身内のみのコミュニケーションと勘違いしている
 で、一連の流れから少し寄り道しますが、日本においてこの手の炎上が定期的に話題になる背景に、こういうトラブルを起こす人たちは自分の投稿が自分の友だちにしか見られないと思い込んでいる傾向が強い点があげられます。
 以前話題になったウェスティンの炎上事例や、アディダスの炎上事例も、いろいろ見てみると、発言をした本人は数十人の友だちとフォローしている程度でのツイッター利用で、メーリングリスト的にツイッターを使っていて、日本中の人に発言が伝播する可能性など考えていないというケースが多々見られます。
 こういう意識が、普通ならこんな写真公開しないだろ、という写真を平気でネットにアップする背景にあります。
■4.ローソンの炎上の一件で「バカな行為」が社会的に大きな「ニュース」になった。
 で、ここにローソンの炎上事例が来ます。
 従業員が冷蔵庫に入った写真が、何かのきっかけで7月15日に大きな話題になり、ローソンにクレームの連絡が入り、ローソン側が該当店舗の処分や、謝罪リリースを行う結果になっています。
 まぁ、何と言ってもこの写真ですよね。
 グルーポンおせちを彷彿とさせる写真の威力を思い知る一品です。
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 もともとは、この実際の写真は6月18日の段階でFacebookに投稿されたもののようですが、友人経由で話題になり、2ちゃんねるやツイッターで伝播して話題になっていたもののようです。
 Facebookという一見友だち限定の場所に勘違いしやすいところにあげた写真が、こうやって一ヶ月を経て大きな話題になったわけですから、写真の力は偉大ですね。
 これにより、バカな行為をする飲食店アルバイトの写真というのが、日本で「ニュース」として位置づけられることになります。
■5.類似の「バカな行為」を行う模倣犯が発生した。
 で、その直後に起こったミニストップの炎上事例は、明らかにローソンのニュースを見た人が調子に乗って起こしている模倣犯です。
 まぁ、殺人事件ですら模倣犯が発生するわけですから、大々的にニュースになった冷蔵庫写真ぐらい、簡単に模倣できてしまいます。
 被害を受けたミニストップは気の毒としか言いようがありませんが、実際には写真にあがっていないだけで、試しにやってみたというケースはもっと他にあってもおかしくないでしょう。
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 で、ここまでは良くあるバカな行為の連鎖でしか無いんですが。
 今回は、これにまだ要素が組み合わさってます。
■6.類似の「バカな行為」を探して企業にクレームを入れる行為が激化した。
 ニュース記事だけみると、ローソンの事件が話題になった7月15日の後、2週間程度で類似の行為が次々に発生した印象を持つ人が多いかもしれませんが、実は事実は違います。
 実際には、バーガーキングのケースは6月25日、ほっともっとのケースは6月28日に写真が投稿されているのです。つまりローソンのニュースが話題になった7月15日よりはるか前に投稿されていたもの。
 それが次々に8月に入って謝罪に追い込まれているのは、ローソンのケースで刺激を受けた人たちが、類似のケースを過去のものも含めてクレームを入れている可能性が高いと想像されます。
 もちろん、ローソンのケースが6月18日に話題になったことを考えると、上記の2件もローソンの写真が引き金になった模倣犯の可能性はありますが、同時にユーザー側の警察行為も厳しくなっているのは間違いないでしょう。
 もともと、日本における炎上事例は、サッカー選手関連かジャニーズ関連が中心で、これはファンがツイッターで選手の関連の発言を検索しているから見つかりやすい構造になっているからだと考えていますが、現在は冷蔵庫関連のキーワードも監視対象になっているように感じます。
■7.企業側がプレスリリースで「バカな行為」を公式に謝罪する形が常識化
 また、個人的に意外に大きいと思っているのが、上記のクレームに対してプレスリリースで謝罪をするという形態が常識化したことです。
 おそらく昔は、アルバイトの不謹慎な行為を店頭で顧客が見つけてクレームを入れたとしても、大抵はお客様相談センターのスタッフが個別に謝罪をする形で終了というのが一般的だったはずです。
 ただ、現在の警察行為は明らかに企業側の公式な謝罪を求める形で激化している印象がありますし、炎上が起こった企業側も他社の前例を見習ってプレスリリースを出すのが当然という空気もあるでしょう。
 そして、このプレスリリースが、バカな行為の存在を知らなかった人たちにその存在を知らしめる一要素になってしまうわけです。
■8.メディアも「バカな行為」を「ニュース」として継続的にピックアップ
 メディアからすると、企業の謝罪プレスリリースが出るというのは、取り上げる価値がある出来事になりますし、公式に情報を入手できると言うことでもあります。
 さらに現状は、アルバイトによるバカな行為自体がニュースとして注目される空気が醸成されている関係で、関連の記事には多数のページビューが集まっていることが容易に想像されます。
 そうすると、当然メディア側が記事化する確率も上がることになるわけで、上述のように関連記事が乱立する状況になります。
 正直、6日のブロンコビリーの写真とか、実際問題、ローソンのケースに比べると、それ以外のケースの写真のインパクトはそれほど大きくはない気がしますが、そんなのもう関係ないんですよね。
 もはやここまで来ると完全にシリーズものです。
 実際には当事者同士には何のつながりも無いと思いますが、一連の記事だけ見るとアルカイダも真っ青の連続テロとか社会現象に見えかねないですから、当面は、類似のケースが起これば自動的にメディアもピックアップする流れが続くでしょう。
 まぁ、飲食店スタッフのバカな行為がニュースになればなるほど、マネをする模倣犯も増えるし、類似の行為を探したり企業にクレームを入れる警察行為をする人も増えるし、またメディアも取り上げる、というスパイラルに入っている感じですね。
 ステマ騒動の時と同様数ヶ月もすれば、みんな飽きてきて、4~8あたりは沈静化するでしょうから、同じような行為ではそれほど大きな話題にならなくはなるのでしょうが、構造的には1~3が重要で、バカな行為自体を簡単に無くすことは難しいのは間違いありません。
 単純に言うと、こういう行為をすると「職を失うんだ」ということが認識されない限り、目立ったり仲間を笑わせるためだけにバカな行為自体を続ける人たちは減らないでしょう。
 ある意味、この構造は飲酒運転と同じです。
 
 私が大学生の頃は、ある意味多少の飲酒運転をするのがカッコイイみたいな雰囲気があったことが否定できませんが、その後飲酒運転の刑罰が明確に重くなったことにより飲酒運転の印象も変わってきたと聞いています。
 「誰にも迷惑かけてないんだから多少酒飲んでもいいだろ」というやつですよね。
 で、実際に飲酒運転で事故を起こしてしまったら、自分の人生も被害者の人生も狂わしてしまうわけです。
 今回、飲食店スタッフのバカな行為が、ネットを通じて発信されると、その店が閉店に追い込まれたりスタッフが職を失ったりすることがあるという事実が明確になったわけで、バカな行為を行うこと自体がある意味飲酒運転と同じ、周りを巻き込む危険行為と認定されたことになります。
 そういう意味では、シンプルにこういう行為への罰則が厳しくなり、社会的な視線が厳しくなり、それがバカな行為をしている人たちに社会常識として局有されるしか、根本的な問題解決にはならないんだろうなぁと思ったりします。
 で、個人的に一番不安なのは、こういうトラブルが続くことによって企業に所属する個人のブログやソーシャルメディアによる情報発信が禁止される方向に行くことなんですよね。
 こういう個人のバカな行為自体が可視化されて、炎上し、企業が謝罪する羽目になるという行為は、実は個人がブログやソーシャルメディアで情報発信できるようになったメリットの裏返しなわけです。
 何しろ企業の経営者とか人事部からしたら、こういうバカな行為をとりあえず止めたいと思ったら、炎上のきっかけになっている7つの問題のうちの2番目のソーシャルメディアを禁止するのが一番根本的な解決に見えてしまうんです。
 でも、実際には禁止したところで、1とか3の問題が解決されない限り、禁止を無視した輩がやっちゃって、メリットを失う上にデメリットは減らないとかになっちゃうと思うんですが・・・
 で、8月24日のブロガーサミットでは、個人の情報発信ができるようになった可能性と、個人の情報発信をさせたくないエネルギーとの選択の話をしたいと思っているんですが、長くなったので今日はこの辺で。
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