思いつきから始まったアルファブロガーアワードを8年間続けてみて、できたこと、できなかったこと。

 先日「8年間つづけたアルファブロガーアワードを、今年で終了することにした理由」という記事でご紹介したアルファブロガーアワードですが、事前にお知らせしたように、先週月曜日に総勢117名に及ぶ「アルファブロガー・リスト」を公開するという形で最終回とさせて頂きました。
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 お陰様で、今回のアルファブロガーアワード2011とアルファブロガーリストの公開については、たくさんのメディアに取り上げて頂いたのですが、中でも主催者側としても驚いたのが、ヤフートピックスにアルファブロガーリストの記事が掲載されたこと。
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 企画の主催者の一人である自分が言うのも変な話ですが、まさかアルファブロガー企画が五輪マラソンとかジャニーズの記事と一緒にヤフトピに並ぶ日が来るとは思いもしなかったので、妙な感傷にひたってしまった今日この頃です。
 
 ただ、一方でこの出来事を皮切りに、過去にアルファブロガーに勝手に選ばせて頂いた方々に、いろいろと総括やコメント記事を頂いていますので、そちらへのお返事もかねてこちらのブログを書いておきたいと思います。
「アルファブロガー・アワード」千秋楽。そして雑感:小鳥ピヨピヨ
アルファブロガーなんて、いいことがひとつもなかった: やまもといちろうBLOG(ブログ)
アルファブロガー・アワードの終わり: 極東ブログ
アルファブロガー・アワードは終了したが、私の「オウンドメディア」としてブログ以上のものが出てきているとは思えない
 私がもともとアルファブロガーアワードの全身となる企画を主催したのは2004年12月。
 一つのきっかけは下記の記事です。
勝手にブログ of the Yeah!と有名ブロガー
 まぁ、要は開催されるなら参加したいと思っていた憧れの企画だった「勝手にブログ of the Yeah!」が気がついたら知らない間に終わっていたのが、正直寂しかったんですよね。
 そんなこんなで数日後には、アルファブロガーを探せという企画をFPNで開始することになります。
FPN-日本のアルファブロガーを探せ2004
 当時、今からやるなら急いで年内に開始しないと、2004年の企画にならないと焦って実施したのを良く覚えています。
 結局、その年のアルファブロガー投票企画は、試行錯誤の末、なんとか数百件の投票を集めて、20のブログを選考して終わるわけですが、実は当時は似たようなボトムアップのブログ選考企画が乱立していた時代。
 アルファブロガー投票企画の実施にあたって個人的なモチベーションは、下記の終了後のまとめ記事にあるように「ビジネス系やテクノロジー系のブログを表彰される企画を実施する」というものでした。


アルファブロガー投票企画を振り返って(1)
アルファブロガー投票企画を振り返って(2)
アルファブロガー投票企画を振り返って(3)
 当時は人気ブロガーやカリスマブロガーという言葉だと、眞鍋かをりさんの芸能人ブログや、ライブドアの堀江さんなどの社長ブログがイメージされるのが普通になりかけていた時期で、そうではないビジネスに役立つオピニオン系のブログの賞をやることでそういうブログとは違う、普通のビジネスマンのブログでも有名になれるという可能性に脚光を浴びせたかったというのが本音でした。
 もともと個人的には「ビジネスブロガー大賞」でも良かったのですが、当時「ビジネスブログ」というのは企業の公式ブログの呼称になっていたのであきらめた経緯があるほどで、「アルファブロガー」という言葉に飛びついたわけです。
 そういう意味では、正直、当時の私の一番のモチベーションは、アルファブロガーに選ばれるような人たちに、ブログをどういうスタンスで運営してきたのか直接聞いてみたい、というものでした。上記の2004年の投票企画自体への参加のインセンティブに、座談会への参加権をほのめかしているのを見て頂ければ、その辺の私のモチベーションが透けて見えるかと思います。
 その後、アルファブロガーに選ばれた方々との座談会企画が、翔泳社さんのおかげで書籍化プロジェクトになり、当時FPNを一緒にやっていたメンバーと「Amazon.co.jp: アルファブロガー」本を出すわけですが、実はこの段階で個人的な投票企画のモチベーションは達成できてしまったというのが正直な状況でした。
 2005年には「ジャパンブロガーカンファレンス」という実におおげさなタイトルのイベントを主催し、アルファブロガー投票企画も継続しますが、人気ブログ至上主義者のように扱われ始めたのに驚いて2006年3月には「読者の少ないブログの方が価値があるかもしれない」という記事も書いていたりします。
 個人的にはビジネス系とかテクノロジー系の読み応えのあるブログを探すためにアルファブロガー投票企画を実施していたのに、いつの間にか自分が芸能人ブログ系の価値観と同じ人だと扱われていてショックだったのを覚えています。
 そこで、2006年の三回目のアルファブロガーを最後に、アルファブロガー投票企画を終了することを決めるわけです。
アルファブロガー投票企画を終えて
 正直な話、既にアルファブロガーという単語が一人歩きを始めていて、完全に私の手には余る状態になっていました。
 上記の記事を書き終えて、肩の荷が下りた気持ちになったのを良く覚えています。
 ただ、実際には翌年もアルファブロガー・アワードを継続することになります。
 継続することになった背景の詳細は下記のブログ記事に書いていますが、何と言っても大きかったのはシックスアパートのいちるさんが、こういう企画は継続することに意味があると、全面的に企画側に入っていただけたことです。
私がアルファブロガー投票企画を継続することにした理由
 アルファブロガーアワードが計8年も継続できたのは、いちるさんのおかげですし、本当にいくら感謝しても足りません。
 それまで実質的に私の一人企画二近かったアルファブロガー投票企画が、このいちるさんの参加と日本にブログブームをもたらした立役者であるシックスアパートさんの支援を受けることにより、企画の位置づけが大きく変わることになったわけです。
 
 ちなみに、アルファブロガー・アワードを継続するもう一つのモチベーションになっていたのが上の記事にも書いているとおり、サイバーエージェントさんが実施していたBlog of the yearの存在でした。
 タイトルは日本を代表するブログを選ぶ企画に聞こえますが、実際にはブログをあまり書いていない芸能人が選ばれてしまうという立て付けで、いわゆるベストジーニスト的な受賞者ありきの企画という印象でした。
 もちろん、アメブロのPR施策と考えれば実に正しいアプローチなんですが、アルファブロガー・アワードが無くなると日本のブログ界の表彰企画は、これだけになってしまうのはやはり寂しいなぁと思った記憶があります。
(その後、アメブロのBlog of the yearは著名人ブログの表彰企画に特化して継続されているようです。)
 最終的には、そんなこんなでいちるさんやカイさんの協力もあり、8年間アルファブロガー・アワードを継続することができ、いろんな議論を巻き起こしつつも、アルファブロガーという単語が野村総研さんのリサーチで取り上げられたり、NHKのクローズアップ現代に取り上げられたりと、芸能人ブログ以外のブロガーの存在に注目してもらう一助になったという実感はあります。
 さらにはアルファブロガーリストを日本のウェブメディアの中心であるYahoo!トピックスでも取り上げて頂くことができて、個人的には本当に感慨深いです。
 そういう意味では、2004年に私の思いつきから始まったアルファブロガーアワードは、実に言い出しっぺの想像を超えて、「普通のビジネスマンのブログでも有名になれるという可能性に脚光を浴びせる」ことはできたのかなと思っています。
 結果的には私自身、アルファブロガーアワードを企画したからこそ、現在アジャイルメディア・ネットワークで社長をさせていただくという数奇な人生をたどることになったわけで、正直、自分でも振り返ってみると当時の自分の状況からのあまりの展開にビックリします。
 二度とできないであろう貴重な経験をさせていただいたことに、関係者の皆さんに深く御礼をさせて頂きます。
 本当にありがとうございました。
 と、まぁ、ここまではできたことの振り返りなのですが、せっかくなので反省点も合わせて書いてしまいましょう。
 個人的にアルファブロガーアワードを振り返って一番後悔しているのは、やはりAMNのブログネットワーク事業者としての属性と、アルファブロガーアワードというブログを表彰する企画の間の関係が結果的に中途半端に見えてしまったことです。
 私自身としては、サイバーエージェントさんのBlog of the yearへのアンチテーゼという意識が強かったために、できるだけアルファブロガーアワードとAMNの事業の関係を明確に分離しようと努めていたのが正直なところです。
 そのために事務局にシックスアパートさんに入ってもらい、私がAMNの社長になってからは私自身は徐々にアワードの選考からは距離を取って、代わりにいちるさんとカイさんに多大な負担を強いることになりました。
 AMNのサイト上でもリリースやブログ以外でほとんどアルファブロガーアワードへのリンクが存在しないのは、そんな私の意識が反映された結果ですし、アワードの受賞者の方をAMNのパートナーに誘いづらくなってしまったりという問題も発生しました。
 でも、結局切込隊長ブログに「アルファブロガー界隈っていうのは、徳力さんとAMNの皆さんという、杉山清貴&オメガトライブみたいなネット社会の一角を占めるコミュニティで占められていて」と書かれてしまうように、一部の人から見たら当然AMNの営利事業に見えるわけですよね。
 実際には、アルファブロガーの受賞者の方の半分以上の方は受賞されるまで私と面識が無い方だったりしますし、全くあったことの無い人も多数おられますから、受賞者の方々からすると、こうやって書かれるのが不本意な方も多くおられるはずで、そういう意味では本当に申し訳ない限りです。
 私自身は、もともとアルファブロガーアワードは中立な投票企画として始めた自負があるため、そういう風に見られるのが嫌で嫌で仕方が無く、どちらかというと私の知り合いが選ばれづらいようにあえて意識的に変えようとしていた時期さえあります。
 Wikipediaのアルファブロガーの表現がかなり厳しく書かれていて、下記のようにブログで愚痴っていたりするのを見て頂くと、そのあたりの意識は見て頂けるかなと思います。
アルファブロガーという言葉とWikipedia
 ただまぁ、そうはいってもAMNが営利企業であり、そこの社長が企画の中心をしているアワードなわけですから、周りからしたらそうやって見られるようになるのはある意味当然かなんですよね。
 実際問題、アルファブロガーアワードをあまりにAMNの事業と無関係にしてしまったため、アワードの企画以外にエネルギーを全くつぎ込めず、結果的に切込隊長ブログに書かれているように「受賞して終わり」の企画に実質的になってしまった面は強くあると感じています。
 本来のアルファブロガーアワードの役割を考えれば、AMNのリソースをフルにつぎ込んで、アワード自体をAMNが理想としているメディア的なブログのシンボルとしてビジネスと連携して運営するという方法もあったのかもしれないな、と思ったりもします。
 
 そういう意味では、いしたにさんがブログで書かれているように、アルファブロガーアワードという企画を、上記の反省を活かして立て付けだけ変えて継続するという選択肢もあったとは思うのですが、いろいろ考えた結果、アルファブロガーアワードについては一時代の証明として殿堂入りさせて頂くという選択をすることにさせて頂きました。
DSC07621Photo by masakiishitani
 アワードの終了と言うことで、「ブログが終わった」と短絡的に見ている発言を誘発してしまっているのは実に残念で、個人的にはソーシャルメディア時代に入ったことで、逆にブログの役割は明確になり、ストックとしてのブログの価値が増していると感じていますし、今年はブログの価値を再発見する年になるのではないかと思っていますが。
 そういう意味では、アルファブロガーアワードは終了とはいえ、来年にまた違う企画を是非考えたいと思っているのは正直なところですが。
 まぁ、その話はまた別途させて頂くとして。
 過去の受賞者の方々のコメントを見て頂くと散見されるように、アルファブロガーアワードは私の勝手企画から始まっていますから、実は受賞されていない方で受賞したいという人こそ若干増えはしたものの、受賞されている方は意外に戸惑っていたり迷惑していたりすることが多いという非常にお恥ずかしい面もある企画だったと思っています。
 上述の私の中途半端なポジションのせいで、いわれもないやっかみを受けた方もおられるでしょうし、投票企画という立て付け上悔しい思いをされた方も多かったのでは無いかと想像しています。
 そういう意味では、本当に多くの人に支えられつつ応援して頂いたという面もありつつも、いろんな方々に混乱やご迷惑をおかけしたアワードであるとも思っています。
 それについてはこの場を借りて深くお詫びを致します。
 
 ただ一方で、毎年多くの方に推薦や投票にご参加頂き、私個人では決して見つけられなかったであろう多くの内容の濃いブログ、面白いブログが見つけられたことについては、心の底から企画を実施した甲斐があったと胸を張って言えます。
 アルファブロガーリストに掲載されているブログの全てが、多くの方々の投票に支えられて選ばれたブログであり、ネット時代以前であれば無料で読むことなど不可能に近かった非常に価値の高い情報源だと言えると思います。
 もちろん、アルファブロガーアワードを受賞したブログだけで無く、受賞してもおかしくないような質の高いブログがこの8年間の間に多数日本で増えていることも個人的には非常に心強く思っていますし、そのトレンドにアルファブロガーアワードが少しは貢献できたかなという満足感は感じています。
 過去の企画にご協力頂いた皆さん、受賞者の皆さん、企画に参加して頂いた皆さんに、あらためて深く御礼申し上げます。
 本当にありがとうございました。
 
 今回のアルファブロガーリストや、過去のアルファブロガーアワードを通じて、皆さんのブログを通じた情報収集や、情報発信に何らかの刺激や発見があったようであれば、企画の主催者としてこんなに幸せなことはありません。
「アルファブロガー・リスト」
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