デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男(ケネス・ローマン) を読むと、広告の本質がこの50年間でそれほど変わってないことを痛感させられます。

4903212327 「デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男」は、「現代広告の父」といわれるデイヴィッド・オグルヴィの人生と1950~60年代の広告業界の変遷を描いた書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 デイヴィッド・オグルヴィという名前は「ある広告人の告白」の著者としても知られています。ただ、個人的には正直「ある広告人の告白」は読んでもあまりピンときませんでしたが、今回の書籍を読んで、彼がいかに広告業界に大きな影響を与えたのかが理解できました。
 興味深いのは、彼が話しているポイントが、2012年の現代においてもそれほど色あせて聞こえないこと。
 広告における評価基準の話だったり、リサーチの重要性の話だったり、本を読んでいて50年前の話だと思えないのが実に考えさせられるところです。
 この辺の話は「広告に恋した男」を読んだときにも思いましたが、実は広告の本質というのはこの50年間でそれほど大きく変わっていないということなのだろうなと、考えさせられます。
 広告の本質を一歩引いて考えてみたい方には刺激になる点が多々ある本だと思います。
 日本の広告業界との比較ということで「この人 吉田秀雄」と比べて読んでみるのもおもしろいかもしれません・
【読書メモ】
■オグルヴィの成功の大きな要因は、手に入れたいもののために惜しみなくエネルギーを注ぎ込んだことにある
■書くときは猛烈、でも面と向かうとたいてい気弱だった。ある営業担当者は、オグルヴィに向かって三歩詰め寄っただけで、どんな議論にも勝てそうな気がしたという
■1885年には、広告というビジネスをプロフェッショナルにすべく「ハウツー本」が相次いで出版されるようになる
・メイザー・アンド・クロウザー「実践的広告」
・ベンソン「広告の知恵」「広告の力」
・J・ウォルター・トンプソン 「広告紳士録」
■ベンソンは広告には売上以外の評価基準はないとしていた


■「素人は広告を面白おかしく見せたがるが、プロの広告人は断固としてそういうことはすべきでない。軽薄な基盤の上に永続的な成功が築かれることはめったにない。人はピエロからモノを買ったりはしない」
■広告マーケティング21の法則は、出版するには貴重すぎると考えたラスカーは、20年もの間この原稿を金庫にしまったままだった。
「広告業界のどのレベルにいようとも、本書を少なくとも7回は読まない限り、自分は広告関係者だなどと名乗ることは断じて許されない」
■「広告とはモノを売ることだ。その原則は、セールスマンの原則と同じだ。どちらも、成功するか失敗するかに、よく似た原因がある。」
■「今はもう、美意識は広告とはなんの関係もないことがわかっています。広告のもっとも大事な仕事は、商品を注目の的にすることであって、それを提示するテクニックに注目を集めてはいけないのです。」
■ギャラップで仕事をしたことによって、オグルヴィはリサーチャーになった。
 どんなリサーチが必要かわかっていて、消費者の意見を数量化し、それに基づいた広告をつくらなければならない、それだけの価値があるとはっきり言い切った。
■ハサウェイ・シャツを着たアイパッチの男
 最初に「ニューヨーカー」にこれを出したとき、掲載料はたった3176ドルだった。それから一週間のうちに、ハサウェイシャツはすべて売り切れた。あまりの評判に同じ広告が再掲載され、そこから世界中で真似された。
■オグルヴィ最大のセールスアイデア
「ダヴの4分の一はクレンジングクリームです。洗っている間にお肌が潤います」
■「すべての広告は、ブランドの個性に対する長期の投資の一環である」
 このコンセプト自体は目新しいものではなかったが、これにスポットライトをあてたオグルヴィは、「ブランドイメージの唱道者」と呼ばれるようになった
■「君がいつも自分より小さな人間を雇っていたら、我が社はちっぽけな人間ばかりの集まりになってしまう。逆にいつも自分より大きな人間を雇っていれば、我が社は非凡な大人物の集団になるだろう」
■「ある広告人の告白」によってオグルヴィは正真正銘の有名人になった。広告界だけでなく、一般の人々にも知られるようになったのだ。「告白」は150万部を売り上げた。
■1938年に、広告の二つの学派と恋に落ちました(レオ・バーネット)
・ヤング・アンド・ルビカム率いるエレガントで面白い一派
・ロード&トーマスとルースラフ&ライアンで、クーポンの戻りで仕事に成果があったかどうかを判断する一派
■トンプソンの社長はオグルヴィに、広告ビジネス全体の土台が崩れるから、頼むからフィー制の導入はやめてくれと言った。
 結局、企業のマーケティング部門のリーダーたちに「勇気」と「ガッツ」を称賛されたことに気を強くしたオグルヴィは、フィー制の導入を強行した。
 ライバルの広告会社からの称賛の声はなかった。フィー制への移行によって、少なからぬ利益が広告業界から失われることになったからだ。
■マネジメントの原則
・最悪の駆け引き屋はクビにせよ。文書による諍いには断固として立ち向かえ。
・憂鬱を人に移すような困り者は駆逐せよ
・一流の人間は、くだらない企画や平凡なクリエイティブワークを認めない
・同輩中でリーダーの役割を果たせるだけの器量がある会長ひとりが議長役を務める
■金融持ち株会社、異なる哲学を持つ広告会社を同じ傘下に持つこと、成長し巨大化することへの執着。オグルヴィが公然と反対してきたことのすべてを、WPPは体現していた。
■「おだやかで親切で人間らしい広告会社なら、そんなに高い給料を払う必要はありません。最高の社員が集まりますし、もっとも魅力的なクライアントも引き寄せられてきます。人生を通じて、ずっと楽しい時間が増えますよ」
■「飛ぶ前に見ろ」
 リサーチを深く読み込み、その上で思い切ってクリエイティブな冒険をしろということだ。会社を築き上げる秘密兵器のひとつがリサーチだと思っていた。
■「消費者はバカではない。彼らはあなたの奥さんなのだ。家族に見せたくないような広告を打つな。あなたは奥さんに嘘をつくことはないと思う。うちの妻にも嘘をつかないでもらいたい」

4903212327 デイヴィッド・オグルヴィ 広告を変えた男
ケネス・ローマン Kenneth Roman 山内あゆ子
海と月社 2012-01-27

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