「この人 吉田秀雄」は、電通中興の祖として知られ、広告の鬼とも呼ばれる吉田秀雄の人生をつづった書籍です。
「ヒゲのウヰスキー誕生す」で竹鶴 政孝に感動したのもあり、ちょっと過去の起業家や事業家の勉強をしようと思い、購入してみました。
読書メモを書けてなかったので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
有名な吉田秀雄の鬼の十則はWikipediaにも書いてありますがこんな感じ。
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
文字だけでも激しさが伝わってきますよね。
一方で情にあつい面もあったそうで、本書でもさまざまな逸話が取り上げられています。
今でこそ、日本の広告業界において電通の存在は圧倒的な物がありますが、吉田秀雄という人がいなければ、電通という会社はもちろん、日本の広告業界もまったく違う姿だったのかもしれないと思うと、この人の存在の大きさが分かるというものです。
今の電通、及び今の日本の広告業界がどのように形作られてきたのかを知りたい方には、参考になる点が多々ある本だと思います。
【読書メモ】
■新聞社側ばかり見ているのでは到底らちあかずと決着のついたのもこのときであった。「御無理ごもっとも」の平身低頭主義で、広告主を無条件にのさばらせていては、正しい商取引の時代はいつまでたってもやってこぬ。それに、平身低頭主義は広告主を利しているのではなく、会社商店の一広告係の懐中を肥やしているに過ぎないのが現状である。
■夏期広告講習会その他、機会あるごとに広告研究の会合を開き、広告主側の社員の啓発を図る一方、たとえば慶応、早稲田の学生が持つ広告研究会会員を対象に、積極的に呼びかけるなどの清新な企画が実施されたのは、おそらく秀雄をはじめとする改革派の意向の表れによるものと見られる。
■広告代理業の始まりはスペース・バイヤー的存在であった。
第一期:新聞社からスペースを買ってくる仕事
第二期:新聞社が積極的にスペースを売り始め、代理店が新聞社のスペースを売る行為をやるようになる
第三期:宣伝広告に関する一切のサービスをする。(売る人間にも買う人間にも、教えたり助言したりする活動)
第四期:良いサービスをするためには、その広告主の事業の全貌というものを理解していなければならない
■電通は会議が多いといわれるけれども、会議というものが結局電通においては、お互いの教育の広場なんですよ。お互いに広告人としての成長を完成するために、お互いが勉強する広場である。
■せっかくこれからという人間を作ったのに、どんどん吉田が外に出してしまうといいますが、そうすることが日本の広告界のお役に立って、多少でもよくなれば結構なことだと思っています。
■「この若い人たちに、もっと高い理想と将来の夢を持たせてやりたい。若いエネルギーを、そのために燃焼させてやりたい。それが日本のためなんだ」
この人 吉田秀雄 (文春文庫) 永井 龍男 文藝春秋 1987-01 by G-Tools |