そんな新事業なら、やめてしまえ!は、そんなマーケティングならやめてしまえ!で有名なセルジオ・ジーマンの新刊(といっても出たのは去年)です。
インパクトのあるタイトルが印象的ですが、書籍の中で主張されていることは経験に裏打ちされた理論で成り立っており、地に足の着いた本です。
ジーマンが主張しているのは「イノベーション、イノベーション」と言葉に踊らされて新事業に走る前に、自らの事業を見つめなおして「リノベーション」するべきだという点。
個人的には、新事業を立ち上げる方に興味があるので、イノベーションの方に興味がありますが、ジーマンの主張は鋭く非常に良く理解できます。
特に印象に残っているのは、イノベーション派とリノベーション派の思考回路の違い。
イノベーション派が「自分たちがつくれるものから出発して、売れるかどうか見てみよう」と考えるのに対し、リノベーション派は「自分たちが売れるものは何かまず見つけよう、それからそれが自分たちでつくれるものか検討しよう」とか。
たしかにビジネスの視点で考えるなら売り上げがたってなんぼなわけで、まずそこから考えるというのは、自分の今の役割を考えると耳が痛いところです。
そうは言っても新しい技術で何かを作り上げるプロセスはこれまた楽しいのでやめられないわけですが・・・
新事業にたずさわる人は、是非一度読んでみると面白いと思います。
特に大企業の新事業担当の人には胸に刺さること間違いなしです。
【読書メモ】
■イノベーションとは
・新しいアイデア、方法、あるいは装置を導入する行為
・既存の資産とコア・コンピタンシーを既存事業とは異なることを行うために活用すること
■イノベーション派とリノベーション派の違い
・イノベーション派「自分たちがつくれるものから出発して、売れるかどうか見てみよう」
・リノベーション派「自分たちが売れるものは何かまず見つけよう、それからそれが自分たちでつくれるものか検討しよう」
■自分が持つ能力の3つのキーポイント
・コア・コンピタンシー 「知識」「経験」「資源」「人」
・コア・エッセンス 「企業あるいはブランドとして、あなたは一体何者か」
・資産やインフラストラクチャー
ビジネスが向かう先を決定するのは「コア・エッセンス」
■イノベーションの5つの落とし穴
1.コア・エッセンスではなく、コア・コンピタンシーを重視
2.何が何でもクリエイティビティ(ビッグバン・アプローチ)
3.新製品頼み
4.水平的成長 対 有機的成長
5.買収によるイノベーション
■水平的成長 vs 有機的成長
・イノベーション/水平的成長
新規事業・新ブランド・新しい顧客・新しいコンピタンシー
・リノベーション/有機的成長
既存事業・既存ブランド・既存の顧客・既存のコンピタンシー
■コア・エッセンスを知るための3つの質問
・エモーション面のベネフィット : 顧客がお金を払うのはこれだ。
・機能面のベネフィット : 顧客の心に反映する優れている要素のこと。
・ブランドの属性・特性 : 顧客の便益にならなくてもベネフィットに影響を及ぼすもの。
■ビジネスはフランチャイズになれる
ビジネスは、特定の分野に限ってのみ成長することができる。
フランチャイズは、企業がノウハウを持っている分野を超えて拡大することができる。
■フランチャイズになるための要素
・アプローチのしかた(アティテュード)
・価値
・経験
・ノウハウ
■フランチャイズに転換する可能性を評価する公式 TACOS
商標(Trademark)+領域(Area)+顧客に提供するもの(Customer Offer)=成功(Success)
■ビジネスを徹底的に見直すための6つの要素
1 あなたの考え方
2 あなたのデスティネーション
3 あなたの競争的枠組み
4 セグメント化(顧客についてどう捉えているか)
5 あなたのブランドのポジショニング
6 あなたの顧客のブランド経験
■リノベーションの意識を養成するための3つのステップ
1 チャンピオンではなく、チャレンジャーのように考えるようにトレーニングせよ
2 マーケティングに使う金は、まだ始めていないうちであっても、効果を必ず測定せよ
3 値引きという発想は、いますぐ頭から捨て去れ。
■マーケティング活動の結果を測定する
・マーケティングにいくら使っているか
・それは、正確に何に使っているか
・そこから、何を得ようとしているか
■デスティネーション・ステートメント
1 我々は自分たちのビジネスをどのように定義しているか?
2 我々がターゲットとする消費者は誰か?
3 我々は消費者にどのように思って欲しいのか
4 我々は消費者にどのように感じて欲しいのか
5 我々は消費者にどのように行動して欲しいのか
6 その結果、我々は何を望むのか
■競争的枠組みの定義
・直接的な代替品
・現在のカテゴリー
・新たな、あるいはいまより広いカテゴリー
・金をめぐる競争
■ブランド構造の定義ステップ
・競争参加資格:消費者の候補リストに入らなくてはならない
・差別化要因:差別化それ自体は売り上げを伸ばすものではない
・プリファランス(優先的選択):顧客に商品以上のものとして気に入って選んでもらう。
■まったく新しいセグメンテーションの考え方
・有意義で各セグメントに独占的
・測定可能
・十分な大きさ
・達成可能かつ実行可能
■デマンドベース・セグメンテーション
1 最も価値ある顧客を特定する:既存の顧客により多く買う理由を与える
2 機会をセグメント化する:反応に基づいて消費者をセグメント化する
3 時期をセグメント化する:購入やコミュニケーションの時期を割り出す
■消費者が言っていることと、やっていることの差
・言葉で表現された重要性
・実際行動に現れた重要性
■ブランド・ポジショニングをリノベートする
1 ブランド・ポジショニング・ステートメントを作成する
a) ターゲットとする消費者
b) 関連性枠組み
c) 差別化ポイント
d) サポート・ポジション
2 ブランド・ポジショニングの仮説を検証する
3 自分自身をポジショニングする
4 競争相手をポジショニングする
5 仮想消費を避ける
■仮想消費(消費者が表明しているプリファランスと行動が食い違っていること)
・「消費」定義を知名度から売り上げに変えることで避ける
・消費者が一度買ったら繰り返し戻ってくるようにブランド・ポジショニングをリノベートする
■消費者の心に響くブランドは、節約をさせる製品ではなく、自分の時間をより楽しくしてくれるもの
■小売企業がブランドの再定義を行うための5つのファクター
1 顧客の全体的なバリュー方程式を理解する能力
2 バリュー方程式に対して、提示できるアイデアを考え出す能力
3 ブランド・エクイティを活用して、ショッピング経験に付加価値を与える能力
4 多様なビジネスの構成員にとってのブランド経験を定義する能力
5 既存の資産を使ってプログラムとアイデアを実施する能力
■経験の5つの進行過程
・本質(イントリンシックス):経験に必要な物理的な要素
・意思(インテンション):経験から必要とするもの
・双方向性(インターアクション):アクション、行動
・インパクト:明白な結果
・印象(インプレッション):消費者の中に残るもの
■すばらしい購入後の経験を顧客に提供するための2つのゴール
・製品の利用頻度を促すこと
・再購入を促すこと
「あなたのブランドについて顧客が味わう購入後の経験は、最初の消費と同じぐらい重要だ」
「ビジネスの成功に必要なのはリピート販売を増やすこと」
■ブランドや製品が成功を収めるための3つのA
・流通性(アベイラビリティ)
・受容性(アクセプタビリティ)
・値ごろ感(アフォーダビリティ)
【目次】
第1章 イノベーションの5つの落とし穴
第2章 いますぐ、すべきはリノベーションだ!
第3章 原則1 思考パターンをリノベートせよ
第4章 原則2 ビジネス・デスティネーションをリノベートせよ
第5章 原則3 競争的枠組みをリノベートせよ
第6章 原則4 セグメンテーション手法をリノベートせよ
第7章 原則5 ブランド・ポジショニングをリノベートせよ
第8章 原則6 顧客のブランド経験価値をリノベートせよ
第9章 すべてを連動させろ
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