パーミッション・マーケティング(セス・ゴーディン)は、出版されてから10年以上たった今だからこそ改めて読み返すべき本だと言えそうです。

4903212297 「パーミッション・マーケティング」は、インターネット・マーケティングの第一人者であるセス・ゴーディンの書籍です。
 献本を頂いたので、書評抜き読書メモを公開させて頂きます。
 パーミッション・マーケティングは、もともと日本で最初に出版されたのが1999年。インターネットの特徴を真正面からとらえた原点的な書籍と言える本だと言えます。
 日本のマーケティング業界においては、この次の著作である「バイラルマーケティング」というフレーズの方が一般化している印象もありますが、なんといってもすべての始まりはこの「パーミッションマーケティング」。個人的にもまだNTTにいた頃にこの本を読み、衝撃を受けた記憶があります。
 今回のパーミッション・マーケティングは翻訳書の契約が切れたか何かで、出版社が代わり再出版されたものになるようです。
 今回10年以上ぶりにパーミッション・マーケティングを読んで改めて思うのは、この10年間でいわゆるホームページ時代からソーシャルメディア時代に変わったと言ってもマーケティングの基本的な変化のトレンドは実はこのパーミッション・マーケティングで予見されていた世界とたいして変わっていないんだなということ。
 10年前のパーミッション・マーケティングの手段の代表はメルマガでしたら、現在はそれがFacebookページやTwitterアカウントにも展開しているだけで、基本的な概念や大事なこと、マスマーケティングとの違いなどの議論は、今読んでもほとんど古く感じませんから不思議なものです。
 インターネットがマーケティングの世界に引き起こしている根本的なパラダイムシフトの本質を見直したい方には、是非今だからこそ読むべき本ではないかと思います。
【読書メモ】
■広告は大して役に立っていない。その効果を計量したり検証したりすることは難しいし、予測もできない。しかも高くつく。
■インターネットはすべてを変える。マーケティングも例外ではない。旧式のマーケティングはいずれ死んでゆくだろう。
■インタラプション・マーケティング
 マーケターはこの90年間、ほぼ一種類の宣伝広告だけに頼ってきた。
 消費者がそのときやっていることに割り込んで商品のことを考えさせることを狙った広告ばかり
■広告の定義
「消費者の嗜好の邪魔をして、なんらかの行動をとらせるメディアの創出、および配置の科学」


■マスマーケティングを活かしつづける四つの方法
・あらゆるところに媒体を見つける
・さらに物議をかもし、愉快な宣伝をくりひろげる
・「面白さと新鮮さ」を保つために、頻繁に広告キャンペーンを変える
。広告をやめ、DMとプロモーションに集中する
■パーミッションマーケティング
 消費者が自ら進んでマーケティングに参加するよううながす。
 そして参加した人たちに語りかけ、彼らがさらに関心を深めるようにする。
■顧客とおつきあいをする5つのステップ
・潜在顧客が自らその気を起こすようなインセンティブを提供する
・潜在顧客が向けてくれた関心を利用し、時間をかけてあなたの製品やサービスのことを消費者に説明していく。
・インセンティブを強化し、潜在顧客がパーミッションを与えつづけるようにする。
・追加のインセンティブを提供し、消費者からさらにパーミッションを得る
・時間をかけてパーミッションを活用し、消費者の行動を変化させて利益を生み出す
■1920年代、広告業界の人々は工業化社会の救世主とみなされた。
 彼らは、群衆のもつ底知れない力を利用し、社会を向上させられる存在だった。
■メーカーは、驚くべき事実を知った。広告をすればするほど売上は伸びる。売上高が広告の費用を上回るのだ商業の永久運動の始まりである。その結果もたらされたのが、情報のぎっしり詰まったメディアの発達だった。
■ワン・トゥ・ワン・マーケティングは、なるべく多くの新規顧客を見つけることよりも、顧客一人一人から最大限の価値を引き出すことへ焦点を移そうとする。
 パーミッション・マーケティングは、なるべく多くの潜在顧客を見つけようとすることよりも、潜在顧客をできるだけ多く顧客に変えることへ焦点を移そうとする。
■既存顧客に集中した方が利益が上がるような状況になってもなお、マーケターの多くは新規顧客の獲得に躍起となり、既存顧客へ注力することに戸惑いを覚えてしまう。
■リーチとフリークエンシーのどちらかを選べといわれると、未熟なマーケターの多くはリーチを選ぶという過ちを犯す。すばらしい広告を一度だけ100人に見せる方が、25人の人間に4度見せるよりも効果的だと考えるのだ。
 一見もっともらしい考えだが、調査の結果、誤りであることが分かっている。
■パーミッションの5つのレベル
・点滴(および提案販売モデル)のパーミッション
・ポイント(負債モデルとチャンスモデル)のパーミッション
・パーソナルな関係のパーミッション
・ブランド信用のパーミッション
・現場のパーミッション
■多くの消費者は、なぜ自分で管理するチャンスを手放し、これほど高いレベルの信用を相手に与えるのだろう。
・時間の節約
・お金の節約
・自ら選択するのを避けるため
・在庫切れを避けるため
■ポイントプログラムの二つのカテゴリー
・負債モデル:たくさん集めればなにがしかと交換できることが保証されている
・チャンスモデル:保証された報酬ではなく、報酬があたるチャンス
■現場のパーミッションはたいてい「なんのご用でしょう?」という問いかけから始まる。これはある意味、非常に強力なツールだ。
■マーケティングの大半は、実はスパムだ。
 テレビCMはスパムである。DMもスパム。ラジオCMもスパムだし、ジャンクメールに至ってはスパムの王様だ。
■パーミッションの4つのルール
・パーミッションは流用できない
・パーミッションは自分勝手である
・パーミッションは瞬間ではなく、プロセスである
・パーミッションはいつでも取り消せる
■PCフォーラム
 この会議に招かれるには、ニュースレターを購読するしか方法がなかった。
 次回のPCフォーラムに参加するには、登録フォームに記入し、参加者として選ばれなければならない。
■ウェブを活用するための基本的な質問
・我々の目的は何か
・それは計量可能か
・ひとりひとりの消費者を我々のサイトへ一回引き寄せるのにかかるコストは?
・一度来た消費者をもう一度来させるためのコストは?
・効果があった場合、その効果も計算できるか?
■パーミッションマーケティングの5つのステップ
・潜在顧客に対して、自ら手を挙げさせるようなインセンティブを提供する
・消費者が向けてくる関心を利用しながら、長期的なカリキュラムをもって、製品やサービスについて消費者に教えていく。
・潜在顧客がパーミッションを与えつづけるようなインセンティブを提供する
・インセンティブを追加することで、消費者からさらに多くのパーミッションを得る
・じっくり時間をかけて、パーミッションを活用しながら消費者の行動を変え、利益を引き出していく
■アメリカン・エキスプレスは、パーミッション・マーケティングの初期の王様だった。何しろ同社は、消費者にお金を払わせてパーミッションを得てきたのだ。
■ペンキ塗り職人の戦略
・まず最初は、口コミを通じてお客と会う
・相手と少し顔合わせをした後、信じられないほどの低料金で、ちょっとした仕事をするパーミッションを取り付ける。自分で作業をするので、それでも儲けは出る。もちろん仕事ぶりもすばらしい。
・そこから得たパーミッションを活用して、家中を見てまわり、顧客がつぎに手をつけたいと思いそうな箇所を一緒に確認する。
■普通の業者なら、一つの仕事で取れるだけの額を取ろうとして、結局また新しい仕事を探しまわるはめになる。その間はまったく稼げない。
■パラダイムシフト
・パーミッションは有効な資産であり、また活用することができる
・クラッター化がさらに激しくなるにつれ、パーミッションの価値は上がり、得るのが難しくなっている。
・どの市場でも、パーミッションを獲得できる企業の数は限られる。
■パーミッションマーケティングを始めよう
・新規顧客の生涯価値を割り出す。
・見知らぬ人を友達に変えるためのコミュニケーションツールを作り出す
 ・時間をかけて行う
 ・消費者に反応を起こさせるだけの、お得な理由を提供する
 ・コミュニケーションが進むにつれ、対応を変えていく
 ・結果を計量できるようにする
・広告には、行動をうながす呼びかけを含めるようにする
・それぞれのツールの効果を計算する
・どれだけのパーミッションが入手できたかを計量する
・獲得したパーミッションを守ることを専門とする担当者を置く。
・呼びかけに対するレスポンスを自動化する

4903212297 パーミッション・マーケティング
セス・ゴーディン Seth Godin (序文)ドン・ペパーズ Don Peppers 谷川漣
海と月社 2011-09-26

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