サッカーワールドカップの日本代表をバッシングする前に、8年前のドイツ大会との違いを振り返ってみた

 残念ながら、日本代表のワールドカップが予選本戦1次リーグの三試合で終わってしまいました。

 スポーツ新聞といい、ニュースサイトといい、そこら中で日本代表や本田をバッシングするタイトルや記事が踊っているようです。
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 初戦で短時間での逆転負け、二戦目で攻めあぐねての引き分け、そして最終戦で南米のチーム相手に奇跡を祈りつつも最終的には大差で完敗。
 と、綺麗に8年前のドイツ大会と同じ結果をたどったことで、私自身もこの8年間の間、日本代表のサッカーは何も進化してなかったんじゃなかろうかという悲観的な思いに駆られてしまいましたし。
 4年前の決勝トーナメント進出の印象だけが強い人からすると、当然今大会はもっと良い成績を期待していたでしょうから、今大会の結果に対してバッシングの声を上げたくなる気持ちは分からなくはありません。

 で、実は私は8年前にも「サッカーワールドカップの日本代表をバッシングする前に」という同じタイトルでブラジル戦の後にブログを書いて、サッカー掲示板にピックアップされてしまって「ニワカが分かったようなこと書くんじゃねぇよ」とか怖い人たちがブログのコメント欄に出てきて軽くプチ炎上した経験があるので、今回の記事も書こうかどうか悩んでいたんですが。
 改めて、当時の記事を読み返してみると、今回のワールドカップは、実は8年前とは明らかに違う景色で迎えられたことが分かります。
 


「ヨーロッパのリーグで立派に活躍している選手が、オーストラリアは17人、クロアチアは10人、日本は4人。しかも日本でコンスタントにレギュラーを持ってるのは中村俊介のみ。だから実力的には、日本は勝てなくても仕方がない。」
 これは8年前に引用していたブログのコメントですが、この8年間でようやく日本もヨーロッパリーグで活躍している選手の方が多数を占めるようなチーム構成になりました。

 しかも、本田はあのACミランの10番、香川はマンチェスターユナイテッド、長友はインテルとそうそうたるトップチーム。
 もちろん、本田と香川はスタメンに定着できてないという現実はありますが、岡崎や大迫も活躍してますし、8年前に感じていたヨーロッパリーグとの絶対的な距離感は、今やかなり薄らいでいます。
 そういう意味で1次リーグ突破どころか「優勝」を選手達が目標として掲げていても、運がうまく重なれば必ずしも絶対あり得ないという話ではないのでは、と思わせてくれる雰囲気が現在の日本代表にあったのも事実でしょう。

 実際、1次リーグ三試合の内容を振り返ると8年前に比べると明らかに進化しているのが分かります。
 8年前、私はブログに「オーストラリア戦も残り10分で3失点とはいえ、試合全体を通して内容的には完敗でした。クロアチア戦も柳沢が外したシュートの印象は強いですが、そもそもPKを決められていたら負けてたわけで、それ以外も相当押されていたのを良く守ったと言って良いと思います。ブラジル戦も、いわずもがな。まぁ、これまで無失点だったブラジルからよく先取点を取ってくれたというぐらいでしょうか。」と書いてます。
 それに比べると今回は、初戦のコートジボワール戦は緊張しすぎてひどい内容だったと言えますが、本田のシュートは見事でしたし。ギリシャ戦も大久保が外したシュートの印象は強いですが、10人に相手が減ってくれたこともあり、終始ボールは保持できていて、とにかく決定力不足が残念な試合だったと思います。コロンビア戦についてもスコアこそ8年前のブラジル戦と同じですが、余計なPKを与えず前半に先制できていればまた違う試合展開もあったと思わせる内容だったと思います。もちろん相手はセカンドチームではあるのですが。

 私も初戦の内容があまりにひどかったので「ザッケローニ監督、本田1トップとかの4年前に先祖返りはやめて、是非日本サッカーの未来を感じられる試合を見せて下さい。お願いします。」」なんて記事を書いてしまいましたが、2戦目、3戦目は、1戦目に比べるとマシな試合内容だったと思いますし、8年前のクロアチア戦やブラジル戦に比べると、可能性が感じられる展開でした。
 そういう意味では、ザッケローニ監督も話していたように、今回の日本チームに足りなかったのはメンタル面での準備だったのかもしれません。
 コートジボワール戦から、ちゃんと攻める姿勢で臨んでいれば、もっと良い試合展開になっていたと思わせる面は多々あり、そういう意味で選手達の後悔は計り知れないものがあります。
 
 ただ、そうは言ってもFIFAランクを見れば明らかなように、現在の日本はまだ所詮その程度のポジションでしかないんですよね。
 
 ちょっとサッカーに詳しい人であれば、日本代表がワールドカップで優勝できるか?と真剣に聞かれれば、相当難しい、と答えるのは普通です。
 本田自信、1次リーグ突破できなければ今回のような大バッシングに遭遇することは覚悟の上で「優勝」という言葉を口にしていたはずで、現在のバッシングは当然の結果ともいえるかもしれません。
 まぁ、本田のビッグマウスは、弱い自分を出さないためというようなインタビューをどこかで見て妙に納得した記憶がありますが。
 本田の自分を奮い立たせるための「優勝」というキーワードで、日本のメディアやサポーターが必要以上に1次リーグ突破は当然という催眠術にかかってしまったのもあるんでしょう。

 ただ、実際問題、日本はワールドカップという真剣勝負の舞台で、出場5回で、1次リーグ突破こそ2回していますが、いわゆるAクラスのチームに勝利したことは一度もありません。
 過去の大会で勝ったことがある相手といえば
日韓共催の時に
 ロシア相手に 1-0
 チュニジア相手に 2-0
南アフリカ大会の時に
 カメルーン相手に 1-0
 デンマーク相手に 3-1
 のたった4試合だけ。
 17戦しての4勝で、4カ国ともワールドカップの優勝経験があるわけではないですし、お世辞にもトップクラスのチームではありません。
 それ以外の試合は
フランス大会では
 アルゼンチンに負け
 クロアチアに負け
 ジャマイカに負け
日韓共催の時に
 ベルギーとは引き分け
 トルコに負け
ドイツ大会で
 オーストラリアに負け
 クロアチアに引き分け
 ブラジルに負け
南アフリカでも
 オランダには負け
 パラグアイにPK負け
そして今回ブラジル大会で
 コートジボワールに負け
 ギリシャに引き分け
 コロンビアに負け
 結局、ヨーロッパや南米のトップチームには一度も勝ててない、というか引き分けすらできてないんですよね。
 
 で、私たちはその現実を知っているはずで、知っていつつも、本田を初めとする日本代表の「優勝が目標」という言葉に良い夢見させてもらったわけで。
 
 それなのに、良い夢見させてもらった相手に、手のひら返したようにバッシングばかりするというのもどうなんだろうと思ったりします。

 結果は結果で真剣に受け止めてもらわないといけないですし。
 セルジオさんが書いてたみたいに、今回の無残な結果は本戦への準備不足とみる見方もありますからサッカー協会には真剣に次にいくためのステップを考えてもらいたいですし。
 アジア枠減らされるのも確実な展開で、次のワールドカップの本戦で日本代表の活躍を見れるかどうかも不安な現実はあるわけですが。
 
 今回の大会では少なくとも日本人の体格では勝てないとか、そういうレベルの議論は減ってきたのは大きな進化だと思います。
 今大会で日本代表の選手達に足りなかったのは、初戦から自分たちのベストパフォーマンスを出し切るためのメンタル面での準備だと思いますし、ゴール前で落ち着いてシュートを打つことができるメンタルの強さというのが個人的な印象で、それが明確になったのであれば準備の仕方もきっとあるはず。
 8年前と比べれば、技術的には日本代表は確実に力をつけてきていると思いますし、どの試合も勝てる可能性を全く感じない試合ではありませんでした。

 ただ、ロスタイムでイランの金星に近い引き分けを一瞬にして負けに突き落としてしまったメッシのすばらしいゴールや、後半から出てきてコロンビアを別のチームに変えてしまったロドリゲスとかを見ていると、日本には残念ながら現時点ではあそこまで決定的な違いを生み出せるスター選手が日本にいなかったというのが、世界トップクラスのチームとの違いとして浮き彫りになってしまった印象はあります。
 もちろん、本田や香川がそうなることを期待されていたんですが。
 結局、今回のワールドカップでは本田はネイマールにはなれず、香川はメッシにはなれませんでした。
 でも、今の日本人選手のヨーロッパリーグでの活躍を見て、きっと若い世代は日本はもっとやれると信じて育ってきてくれてるはずで、本田のビッグマウスがかわいく見えてしまうような凄い選手が日本から出てきてくれるのを楽しみに、またこれから4年間を過ごしたいと思います。